受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

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一田和樹(いちだかずき)

11 月6 日生まれ。東京都出身。バンクーバー在住。

第3回受賞作

檻の中の少女

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2011年4月 原書房

「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」 サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める ─

著者よりひとこと

このたびは素晴らしい賞を授けていただき、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。
島田先生、羽田市長をはじめ、関係者の皆様には感謝の言葉もありません。
妻や母、私を支えてくれた人々と喜びをわかちあいたいと思います。
私たちの社会は、インターネットを中心として大きく変わりつつあります。小説の書き方、読み方も変化しています。その中にあってゆるぎない存在感を持った、先駆けとなるような作品を書いてゆきたいと思います。
最後に福山市と、福山市の皆様のさらなるご発展をお祈りいたします。(2011年5月)

近 況

昨年もサイバーミステリ漬けの一年でした。サイバーミステリ小説を三タイトル刊行した他、インターネットの三つのサイトでサイバーミステリ小説の連載を行いました。集英社のWEBで連載した短編連作は、今年完結の予定です。その後、本にまとまるかも予定です。
今年もサイバーミステリの長編が数本進行中です。
書店でみなさまにお目にかかるのを楽しみにしております。(2017年3月31日)

著作品一覧

檻の中の少女(2011年5月 原書房)
サイバーテロ 漂流少女(2012年2月 原書房)
キリストゲーム(2012年4月 講談社)
式霊の杜(2012年6月 講談社)※筆名「いちだかづき」
式霊の杜 愚者の約束(2013年3月 講談社)※筆名「いちだかづき」
サイバークライム 悪意のファネル(2013年2月 原書房)
サイバーセキュリティ読本(2013年7月 原書房)
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語(2013年10月 技術評論社)
絶望トレジャー(2014年11月 原書房)
天才ハッカー安部響子と五分間の相棒(2015年1月 集英社)
ネットの危険を正しく知るファミリー・セキュリティ読本」(2015年3月 原書房)
マンガで知るサイバーセキュリティ オーブンレンジは振り向かない(2015年3月 原書房)
サイバーミステリ宣言!(2015年7月 株式会社KADOKAWA:共著)
個人情報ロンダリングツール=パスワードリスト攻撃シミュレータの罠 工藤伸治の事件簿番外編(技術評論社・電子書籍)
アンダーグラウンドセキュリティー1(カドカワ・電子書籍)
ノモフォビア(キリック・電子書籍)
第1巻こちら、網界辞典準備室!『電網恢々疎にして漏らさず網界辞典』準備室! (技術評論社・電子書籍)
ベスト本格ミステリ2016 収録「サイバー空間はミステリを殺す」(アンソロジー 2016年6月 講談社)
女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険(2016年7月 集英社)
原発サイバートラップ:リアンクール・ランデブー(2016年8月 原書房)
サイバー戦争の犬たち(2016年11月 祥伝社)

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植田文博(うえだふみひろ)

1975 年、熊本県生まれ。東京都在住。会社員。

第6回受賞作

経眼窩式

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2014年5月 原書房

「あんたは、最低だな」  古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。

著者よりひとこと

欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)

近 況

偏愛マップというものを御存じですか。
自己紹介ツールの一種で、自分の好きなものを書き連ねた紙を、相手と互いに見せ合うものです。それによって、短い時間で相手をよく知ることができるそうです。好きなものだけ書く、というのがミソになっていて、初対面でプラス方向だけを深めに知ることができます。
 最近、作家さんや友人と試してみたのですが、確かに意外な発見があります。たとえば、その手の映画には興味がなさそうな見た目や雰囲気だと感じていた女性が、ゴッドファーザー大好きだった。甘いものが好きなんて想像つかなかった男性が、女性しかほとんどいないカフェを食べ歩くほどのケーキ好きだった等。
 知っていると思っていても、やっぱり知らないことはあるんだ。人っておもしろいな、と再確認できました。
 小説については、夏までに出版できればと思っています。(2017年3月31日)

著作品一覧

経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)

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金澤マリコ(かなざわまりこ)

1958年千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

ベンヤミン院長の古文書(帯なし)

2015年11月 原書房

著者よりひとこと

優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

今年一月、三十年ぶりに水泳教室に入門しました。長年お世話になっているかかりつけの先生から「金澤さん、これからは健康が大事だよ。何でもいいから毎日運動しなさい」と諭されたのがきっかけです。目標はゆったり平泳ぎで千メートル(♡)。ところが、クロールと背泳ぎはまあまあになったのに、平泳ぎは前に進むどころか息つぎさえできずその場に沈んでゆく始末。どこかが間違っているに違いありません。
 さて、もうすぐ二冊目の本が刊行されることになりました。五月のばら祭でお披露できるよう、ただいま作業のまっ最中です。今回の作品の舞台は十二世紀末のパリなのですが、当時の医学で大きな役割を担っていたものといえば薬草です。そして、上記の先生は漢方医でいらっしゃり、薬草には特にお詳しいのです。というわけで、先生をはじめ、多くの方の助けもいただいて書き上げた作品です。中世ヨーロッパの雰囲気を少しでも味わい、楽しんでいただけたら嬉しいです。(2017年3月31日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)

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叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

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2010年3月 光文社

介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

近況報告、というか最近興味があって悟ったこと。。
股関節の一部、大腿骨側のくびれた部分を大腿骨頸部といいます。ここがよく折れるんです。でも、もっと細い足の小指等が折れてもよさそうなのに、なぜ大腿骨頸部なのか。不思議です。
大腿骨頸部の先には丸い骨頭があり、骨盤にはまり込んでいます。この部分を緩衝材となり守っているのが軟骨です。加齢で骨は弱り、柔らかい筈の緩衝材も固くなり、すり減ります。すると、滑らかに動く筈の骨頭が一瞬固定され、大腿骨から下全部が力点に、固定された骨頭が支点に、問題の大腿骨頚部が作用点になります。つまりは「てこの原理」せん抜きの要領で折れるのです。ポンッと。 あとは金具で骨頭を固定したり、骨頭全てを人工物に置き換えたりしないといけません。レントゲン写真を見ると、サイボーグ手術への第一歩か、なんて思えます。でも、その未来への一歩がたいへん、骨が折れるんです。予後はともかく、おあとがよろしいようで。(2017年3月31日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)

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神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

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2015年5月 講談社

著者よりひとこと

この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

 受賞作を刊行してから二年ほど経ちました。その間、担当編集者と相談しながらいくつかの作品を執筆しました。原稿枚数だけで言えば三千枚くらいは編集部に渡したでしょうか? 学園ミステリーやギャングが出てくるサスペンス、男女の純愛が絡むミステリーなども編集者に読んでもらいました。
 どれか一つくらいはいけるかな、と思っていたのですが出版のハードルというのはなかなか高いようで今のところ、めどは立っていません。現時点で続行中の企画が一つあり、原稿も千枚ほど渡してあります。担当編集者と相談しながら少しでも早く受賞後第一作を刊行できるよう頑張りたいと思っています。
 小説執筆以外ではサウンドノベル形式のゲームを作っています。「かまいたちの夜」のようなミステリー作品にするつもりです。こちらは基本無料でWEBかスマホに配信するつもりです。(2017年3月31日)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

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川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

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2014年11月 原書房

戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 昨年は二作目『時限人形』を上梓しました。ご縁に感謝します。
 文学フリマにも参加。ハーパーコリンズジャパン様に協力いただき、2005年ハーレクインラブストーリーコンテスト優秀作『シーウィンド』を個人誌製本いたしました。甘いロマンス短編(殺人なし)です。「読みたいかも」と思うて下さる方(女性に限る)プレゼントしますので、どうぞ気軽にお声がけください。
 待てば甘露の日和あり。
 同じ阿呆なら踊らにゃ損損。
 以上、座右の銘もハッピー・ゴー・ラッキーになりました。
 文章も優しく、親切に。
 求心的改造です。
 みんな。
 生まれ変わったわしを見てくれ。(2017年3月31日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)

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嶋戸悠祐(しまとゆうすけ)

1977年1月20日生まれ。北海道出身。北海道在住。

第3回優秀作

キョウダイ

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2011年8月 講談社

主人公「私」は、妻と娘に恵まれ、仕事も順調で幸せな日々を送っていた。が、妻が持ち出した小学校時代のアルバムが人生を狂わせはじめる。それは過去を封印していた人間にとって存在してはならぬものだった。その日から恐ろしい幻影に襲われ精神的に追い詰められていった「私」は過去と対峙することに――。当時「私」には双子の兄弟がおり、北海道M市のボロアパート群、通称餓死町で悲惨な生活を送っていた......。

著者よりひとこと

このたびは第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出いただき誠にありがとうございます。
私にとって島田先生の作品というのは本当に特別なものでした。十代の頃に島田作品と出合い、貪るように読み耽りました。目くるめくような衝撃を受けました。そして、はじめて自分で小説を書いてみたいと強く思いました。
私は島田先生の作品に出会っていなければ小説を書くことはなかったと思います。その島田先生に優秀作として選出いただき、これ以上の栄誉はありません。とにかくこれからはその栄誉に恥じぬよう24時間、いつでも頭のどこかでミステリーのことを考え、奇想を膨らませ、研鑽を重ね、この道をどこまでも突き進む覚悟でおります。そしていつかこの賞の価値を高め、本格ミステリーというジャンルを牽引するような作家になること。大それた考えと思われるかもしれませんがデビューできた暁には、これを目標として邁進いたします。(2011年5月)

近 況

 今年の二月に、ひさしぶりに新刊を出すことができました。タイトルは『ギキョウダイ』、講談社より発売されております。
 『ギキョウダイ』はタイトルからもお分かりのとおり、福ミスの受賞作である『キョウダイ』の続編となっております。独立した作品になっていますので『キョウダイ』を読んでいない方でも楽しめるようになっております。
 『キョウダイ』と同様、陰鬱な暗黒系のミステリー作品であるのですが、一方で、サッカーを題材としたスポーツ小説にもなっております。
 そういう意味では、ただただ暗い作品ではないので、色々な方に読んで頂ければ嬉しいなと思っています(2017年3月31日)

著作品一覧

キョウダイ(2011年8月 講談社)
セカンドタウン(2013年8月 講談社)
キキョウダイ(2017年2月 講談社)

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高林さわ(たかばやしさわ)

1945 年5月3日生まれ。千葉県出身。中学教師、塾自営の後引退。1981年「小説現代新人賞」受賞。

第5回受賞作

バイリンガル

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2013年5月 光文社

アメリカ人の夫と離婚した永島聡子は、日本に帰国し、予備校の講師をしながら一人息子を育てた。ある日、沢田仁奈という女性が聡子のもとを訪ね、自分の両親が亡くなるきっかけとなった、30年前にインディアナ州ラフィエットで起きた誘拐殺人事件の内容を話して欲しいと頼む。仁奈には親切にしなければと思いつつも、乗り気になれずにいた聡子だが、仁奈の日本での生い立ちや生活を聞き、事件の全貌を語り出す。

著者よりひとこと

「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という大きな賞をいただくことができまして、ほんとうにありがたく、感謝しております。
島田先生はじめ、選んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。30年前に賞をいただいた後、長いブランクがありましたが、諦めずに書き続けてよかったです。書く場所を再び与えていただいたのですから、頑張らねば、と思っております。どうもありがとうございました。。(2012年10月)

近 況

 七十歳過ぎても厄年はあるのでしょうか。去年はひどかったです。
 怪我のあと、歩けないのは不自由だろうと、知り合いのプーさんから中古車を安く買うように迫られたり、気合を入れて買った品物を置き引きされたり、腕にはめていた時計を紛失したり。あろうことか、ジイサンのストーカーに追いまわされたり。その他、いろいろありました。
 車は、前から考えていたので免許証を返納。新手の詐欺の難を逃れました。置き引きは交番で取り調べを経験し、ストーカーは徹底的に無視。
 そんな毎日でしたが、九十八歳の母はなんとか頑張っています。寝たきりですが、食事は車椅子で食堂へ。わたしが食べさせたほうが食欲が出るというので、介助に行っています。でも、食べてるときに脳虚血もどき、脳梗塞もどきの症状を呈することがあり、そのたびにギョッとなったりオロオロしたり。延命措置はしない、という一札を入れてあるので、万が一のときには受け入れざるを得ないことになります。携帯電話に連絡が入り次第駆けつける、という約束です。夜中にリリーンという音で目が覚め、夢か、とホッとすることも。
 小説は、二作品を別々の出版社さんに読んでいただいています。昨年よりは前進しているでしょうか。闇夜が明けて、現在夜明け前のような状態。と考えてもいいかなあ、なんて思っています。(2017年3月31日)

著作品一覧

バイリンガル(2013年5月 光文社)

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知念実希人(ちねんみきと)

1978年10月12日沖縄県生まれ。東京都在住。東京慈恵会医科大学卒。2004年から医師として勤務。日本内科学会認定医。

第4回受賞作

誰がための刃 レゾンデートル

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2012年4月 講談社

自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴は、自暴自棄となり殺人を犯してしまう。そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いに挑む。

著者よりひとこと

このたびは福山ミステリー文学新人賞という素晴らしい賞を受賞させて頂き、島田先生を初め関係者の皆様には心より感謝しております。
応募の際は、この作品が「本格」を求めている福ミスに相応しいものなのか何日も迷いましたが、福ミスの選考方法や最終選考まで残れば島田先生に選評を頂けることに惹かれ、思い切って応募しました。受賞を知った時はすぐには信じられなくて一瞬呆然とした後、天にも昇るような気持ちになりました。
今回の作品は8年間の医療現場での経験を詰め込むことで、末期癌に冒された主人公から見た世界、そしてその生き様をできるだけリアルに描くように努めました。読んでくださった皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
今後は賞の名に恥じぬよう精進し、読者の方に喜んで頂ける小説を書いてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(2012年5月)

近 況

先日、取材ではじめて鞆の浦に行った。これまで何度も行こうと思いつつ、執筆スケジュールの都合で断念していたが、出版社に我が儘を言い、なんとか実現にこぎつけた。仙酔島で野生の狸に会うなど、鞆の浦の情緒をたっぷりと味わうことができ、大満足だった。というわけで、現在執筆中の作品では鞆の浦、福山駅周辺、そして広島市内を舞台の一部にするつもりだ。思えば五年前に福ミスを受賞させて頂いてから、二十作近くの作品を刊行してきたが、未だに福山を舞台にした作品は発表出来ていなかった。心苦しく思っていたとき、ふと次回作の一場面が鞆の浦のイメージにぴったりだと思い至ったのだ。ぜひ福山そして広島の魅力を少しでも多くの方に伝えることができる作品にしたい。
 この五年間で多くの読者に作品を読んで貰えるようになってきた。それもすべて、福ミスでデビューすることが出来たからだ。その恩を少しでも返せるよう、福山の魅力を発信しつつ、多くの人に楽しんでいただける作品を書いていきたい。(2017年3月31日)

著作品一覧

誰がための刃 レゾンデートル(2012年4月 講談社)
ブラッドライン(2013年7月 新潮社)
優しい死神の飼い方(2013年11月 光文社)
天久鷹央の推理カルテ(2014年10月 新潮社)
仮面病棟(2014年12月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟(2015年3月 新潮社)
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ(2015年5月 幻冬舎)
天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア(2015年6月 新潮社)
黒猫の小夜曲(セレナーデ)(2015年7月 光文社)
スフィアの死天使 ―天久鷹央の事件カルテ―(2015年8月 新潮社)
神酒クリニックで乾杯を(2015年10月 KADOKAWA)
天久鷹央の推理カルテⅣ 悲恋のシンドローム(2016年2月 新潮社)
淡雪の記憶 神酒クリニックで乾杯を(2016年4月 角川文庫)
白銀の逃亡者(2016年6月 幻冬舎)
幻影の手術室 ー天久鷹央の事件カルテー(2016年9月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 1巻(コミック)(2016年9月 新潮社)
あなたのための誘拐(2016年9月 祥伝社)
時限病棟(2016年10月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト(2017年3月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 2巻(コミック)(2017年3月 新潮社)
屋上のテロリスト(2017年4月 光文社)

原進一さん顔写真トリミング

原進一(はらしんいち)

1948年生まれ。兵庫県神戸市出身。東京外国語大学卒。卒業と同時に全日空(株)に入社し,東京・大阪・福岡・鹿児島・オランダなどで勤務の後,2008年に定年退職。現在は無職で東京都在住。

第8回受賞作

アムステルダムの詭計

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2016年4月 原書房

戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)

著者よりひとこと

「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)

近 況

 福ミス新人賞の受賞は、様々な変化をもたらしてくれた。母校や会社のOB会に招かれ、懐かしい面々に受賞報告の機会を得たのは喜びだった。昨年5月の表彰式では、敬愛する島田先生の謦咳に触れ「本の売れ行きなど気にせず、次回作に集中的に取り組むように」と助言を頂いた。 受賞の歓喜は家庭にも波及した。いつも口達者の妻に寄切られていたが、土俵際で咄嗟にうっちゃりの文句が口をつく。
「お前も賞をとってみろ」
 これが黄門様の印籠のように効果てきめんで、即座に家内が意気消沈し形勢逆転する。ただ敵も負けん気の強さから、逆襲に向けて爪を研ぎはじめた。
 文章創作では太刀打ちできないと諦め、別分野に照準を絞り受賞を目指す。少女時代(ンじゅう年前)に憧れた墨習字を再開し「すぐ受賞する。題字を書いてあげるから、早く次のミステリーを創れ」と責め立てる。その自信はどこから来るのか、と思うが口には出さない。家庭内では受賞の威光は長続きしない。(2017年3月31日)

著作品一覧

アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)