受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

顔写真

森谷 祐二

福島県出身、在住。

第12回受賞作

約束の小説

書影(comingsoon)

2020年3月出版予定

 医師の瀬野上辰史は、日本有数の名家である天城家の後継者として、かつて暮らしていた天城邸へと呼び戻された。雪深い、極寒の地にそびえ立つ、規格外の規模を誇る天城邸で辰史を待っていたのは、その帰りを快く思っていない者からの血腥い警告であった。
 やがて警告は現実となる。陸の孤島と化した天城邸で起きる連続殺人。その謎に、辰史と探偵の新谷が挑む。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞をいただきまして、まことにありがとうございます。敬愛する島田先生を初め、賞の運営に携わったすべての関係者さまに心よりの感謝を申しあげます。
 長年に渡る投稿生活を経て、念願の受賞ではありますが、ここがゴールなのではなく、ここからが本当のスタートなのだと自らによくいいきかせて、さらなる努力を重ねていきたいと思います。 

著作品一覧

2020年3月 原書房から出版予定
酒本歩

酒本歩(さかもとあゆむ)

1961年、長野県生まれ。東京都在住。早稲田大学政経学部卒。経営コンサルタント。
2016年、かつしか文学賞優秀賞受賞。

第11回受賞作

さよならをもう一度

幻の彼女(帯つき)

2019年3月 光文社

 ドッグシッターの風太に一通の喪中はがきが届く。以前交際していた美咲の訃報だった。まだ32歳なのにと驚く。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも思い出し連絡を取ろうとするが、消息がつかめない。
 別れたとは言え、三人は風太にとって大切な女性だった。彼女たちに何が起きているのか。いてもたってもいられない風太は三人のことを調べ始める。彼女たちの友人、住んでいた家、通っていた学校。しかし、彼女たちはまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた。
 あり得ないことに激しく動揺し、混乱する風太。消耗しつつも、彼女たちの生きた証を捜し続けるが・・・・・・。

著者よりひとこと

冒頭で主人公が出くわした謎は、作者の私も答えを見つけるまでに、書き始めてから数ヶ月かかりました。
『あり得ない謎をロジカルに解決する』。私が今作で挑戦し たことが、島田先生が唱える「本格ミステリ」の定義に通ずることに気づき、応募した次第です。
読んでくださる方が、主人公、私と同じように「あり得ない」と戸惑 い、そして解答にたどり着いたとき、「まさか」という興奮を味わっていただけたら望外の喜びです。

著作品一覧

幻の彼女(2019年3月 光文社)
第10回受賞・松嶋智左2

松嶋智左

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

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2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。

近 況

 最近特に、バランスにこだわるようになりました。食の栄養バランス、服装のバランス、暮らしのなかの緩急から人間関係におけるバランスまで。小説を書くことにおいては、午前中パソコンに向かい、午後からジムやジョギングを(なるべく)するようにしています。一応、静と動のバランスのつもりです。今のところ心身共にいいようです。
 昨年、賞をいただいて以来、楽しいばかりだった書く行為に、これまでにない感覚が生まれた気がします。苦楽というよりは、柔と剛というような感じです。うまくバランスを取りながら続けていければと思っています。
 まずは、今年の三月に第二作目を刊行すべく頑張っています。受賞作のシリーズになりますが、ヒロインがまだ新米刑事であったころの話で、バランスもなにもあったものでなく、ひたすら走っている、そんな感じになりました。今回は犬も出てきます。多くの方に読んでいただければ幸いです。(2019年3月31日)

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社)
顔写真(稲羽白菟)

稲羽白菟(いなばはくと)

1975年6月20日、大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。現在は呉服関連企業に勤める。2015年「北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞」受賞。

第9回準優秀作

合邦の密室

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2018年6月 原書房

 大阪文楽劇場、顔が崩れる毒を母に飲まされる俊徳丸の物語「摂州合邦辻」の上演中、人形の左遣いが持ち場を棄てて姿を消した。跡を追った三味線方・冨澤絃二郎は黒頭巾の下、まるで俊徳丸のように崩れた人形遣いの顔を目撃する。
 同じ頃、淡路の離島の古い芝居小屋を調査する一団、絃二郎知己の文楽劇場職員は「密室」状態の舞台裏から姿を消し、離れた岩場で転落死体となって発見される。
 「すごい人形を発見した」ーー死んだ職員は最後の電話で言い遺した。
 職員の死に疑問を抱きつつ、消えた人形遣いの行方を捜す絃二郎は一冊のノートを発見する。「私は母に毒を飲まされた。私の顔を崩した母を、私は決して許さない」ーーそのノートには、袖頭巾を被った喪服姿の母と父の生首にまつわる不気味な話が綴られていた。

著者よりひとこと

 4年前、私はミステリーの処女作を島田先生にご審査いただく幸運に与りました。入選は叶いませんでしたが、先生は温かなアドバイスをくださいました。その時、私は夢を諦めないことを心に誓いました。今回、規格外の形で手を差し伸べてくださった島田先生。懐深く新参者を迎え入れてくれた福ミス。福山市。……皆様に、心から感謝いたします。今まで私自身がミステリー文学から得てきた喜びや感動を、一日でも早く読者の方々に提供できるように精進することを、私はここに誓います。

近 況

 今春刊行予定『三毛猫ホームズと七匹の動物たち』(著・赤川次郎ほか 論創社)というアンソロジーに参加させて頂きました。福ミスの『合邦の密室』(原書房)シリーズの新作短編となりますので、是非こちらもあわせてお読み頂けましたら光栄です。
 このアンソロジー、題名からも判る通り『三毛猫ホームズ』の一編を筆頭に、若手作家がそれぞれ動物をテーマにミステリーを書くという「縛り」が設定された短編集になっています。学生時代、フランス文学の授業で「作家は制約制限(縛り)があるほど燃える『ラシーヌ型』(韻文劇)と、好きな事をルール無用で書く方が得意な『コルネイユ型』(散文劇)の二種類に大別できる」と教わったのですが、今回、自分はつくづくラシーヌ型だなぁ……と改めて実感した次第です。その作品の出来の程は……書籍にてご確認下さいましたら幸いです。
 長編第二作も現在鋭意執筆中です。引き続きどうぞご贔屓に。(2019年3月31日)

著作品一覧

合邦の密室(2018年6月 原書房)
石井真由子さん写真

北里紗月(きたざとさつき)

1977年生まれ。千葉県出身。大学院で生物学を修めた後、現在は胚培養士として病院に勤務。家庭では3人の子どもを持つ母親。

第9回優秀作

さようなら、お母さん

さようなら、お母さん書影

2017年4月 講談社

 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。
 美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは?玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が調査に乗り出す。

著者よりひとこと

 この度は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、心から嬉しく思います。第一子出産後から小説を書くはじめ6年が経ち、赤ん坊だった長女も今や持ち上げられないほどです。そして第三子が生まれた2016年、人生最高の瞬間が訪れました。このような機会を与えてくださった島田荘司先生や、選考委員の方々の期待を裏切らぬよう、「福ミス」の名に恥じぬよう、精一杯努力していきたいと思います。

近 況

 昨年7月に2作目の著書となる「清らかな、世界の果てで」を出版致しました。1作目に続き、毒マニア利根川由紀が活躍するミステリー小説です。相変わらず綺麗なのは題名と表紙だけで、寄生虫が山ほど出て来るグロテスクな小説です。読むと食欲がなくなると好評を頂いておりますので、ダイエット中の方などもいかがでしょうか。
 現在は利根川由紀3作目のアイデアを練りつつ、新しい作品に挑戦しております。執筆予定の作品は、禁グロテスク。私の小説から気味の悪さを抜いたら、何が残るのかやや不安ですが、楽しく、そして感動出来るミステリーを目指して頑張っております。
 さて話は変わりますが、皆様ハルキゲニアという生物をご存知でしょうか。私はゴキブリ以外の生き物をこよなく愛していますが、中でも一番好きな動物がハルキゲニアです。
 彼はサツマイモのような胴体を持ち、体の片側に長い針が二列、反対側に短い針が二列並ぶ不思議な構造をしています。名前の意味は幻惑。どちらが頭でどちらがお尻か、どちらが背中でどちらがお腹か分からないのです。私は子供の頃から、かの生物の生態が判明するのを心待ちにしていたのですが、最近になりようやく目と口が発見され頭の位置が判明したとニュースになりました。これは素晴らしいと喜んだのも束の間、私にとって更なる衝撃が。私は彼の体長を手のひら程度と考えていたのですが、実際はたったの3センチだったのです。
 生きているハルキゲニアを一目見たいと思うのですが、残念ながらそれは無理。彼が生きていたのは今から4億5000万年前、カンブリア紀の地球だからです。 (2019年3月31日)

著作品一覧

さようなら、お母さん(2017年4月 講談社)
清らかな、世界の果てで(2018年7月 講談社)

須田狗一

須田狗一(すだくいち)

1953年大阪市生まれ。IT会社に30年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら推理小説を執筆。

第9回受賞作

神の手廻しオルガン

神の手廻しオルガン書影(帯なし)

 1942年、ナチスの国家保安部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから72年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。
 その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子中学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが……

著者よりひとこと

 ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために「福山ミステリー文学新人賞」に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います。

近 況

 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」をいただきました「殺人者は手に弓をもっている」(「神の手廻しオルガン」と改題、光文社より出版)は、ポーランドを舞台にしたミステリーでしたが、昨年は一転して、明治四十三年の徳川慶喜をモチーフにした作品を執筆させていただきました。もともと、幕末や明治時代に詳しかったわけでもなかった私にとっては、チャレンジだったわけですが、関連書籍をあさっているうちに、想像が膨らみ、結構、明治時代にはまってしまいました。そんな私の我がままを聞いて、「徳川慶喜公への斬奸状」を出版してくださった光文社の方には、感謝のひと言しかありません。
 昨年は、私が住む大阪は、大阪北部地震、台風二十一号の直撃と、災害に見舞われた年でした。自宅のすぐそばの公園の太い桜の木が倒れ、物干し場の波板が紙くずのように舞い上がり、久しぶりに小学生の頃に経験した第二室戸台風の恐ろしさを思い出した次第です。この経験を生かして、次作は台風で瓦礫が散乱した大阪の街並みを背景にした現代ものは書けないかと構想を練っています。(2019年3月31日)

著作品一覧

神の手廻しオルガン(2017年5月 光文社)
徳川慶喜公への斬奸状(2018年8月 光文社)

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一田和樹(いちだかずき)

11 月6 日生まれ。東京都出身。バンクーバー在住。

第3回受賞作

檻の中の少女

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2011年4月 原書房

「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」 サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める ─

著者よりひとこと

 このたびは素晴らしい賞を授けていただき、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。
島田先生、羽田市長をはじめ、関係者の皆様には感謝の言葉もありません。
妻や母、私を支えてくれた人々と喜びをわかちあいたいと思います。
私たちの社会は、インターネットを中心として大きく変わりつつあります。小説の書き方、読み方も変化しています。その中にあってゆるぎない存在感を持った、先駆けとなるような作品を書いてゆきたいと思います。
最後に福山市と、福山市の皆様のさらなるご発展をお祈りいたします。(2011年5月)

近 況

 2018年は「言葉」と「世論操作」にこだわった4作品を上梓した他、書評や「世論操作」に関する記事をさまざまな媒体に寄稿しました。引き続き2019年も同じテーマを追いかけることになりそうです。(2019年3月31日)

著作品一覧

檻の中の少女(2011年5月 原書房)
サイバーテロ 漂流少女(2012年2月 原書房)
キリストゲーム(2012年4月 講談社)
式霊の杜(2012年6月 講談社)※筆名「いちだかづき」
式霊の杜 愚者の約束(2013年3月 講談社)※筆名「いちだかづき」
サイバークライム 悪意のファネル(2013年2月 原書房)
サイバーセキュリティ読本(2013年7月 原書房)
第1巻こちら、網界辞典準備室!『電網恢々疎にして漏らさず網界辞典』準備室! (2013年10月 技術評論社・電子書籍)
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語(2013年10月 技術評論社)
絶望トレジャー(2014年11月 原書房)
天才ハッカー安部響子と五分間の相棒(2015年1月 集英社文庫)
ネットの危険を正しく知るファミリー・セキュリティ読本」(2015年3月 原書房)
マンガで知るサイバーセキュリティ オーブンレンジは振り向かない(2015年3月 原書房)
サイバーミステリ宣言!(2015年7月 株式会社KADOKAWA:共著)
個人情報ロンダリングツール=パスワードリスト攻撃シミュレータの罠 工藤伸治の事件簿番外編(技術評論社・電子書籍)
アンダーグラウンドセキュリティー1(カドカワ・電子書籍)
ノモフォビア(キリック・電子書籍)
ベスト本格ミステリ2016 収録「サイバー空間はミステリを殺す」(アンソロジー 2016年6月 講談社)
女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険(2016年7月 集英社)
原発サイバートラップ:リアンクール・ランデブー(2016年8月 原書房)
サイバー戦争の犬たち(2016年11月 祥伝社)
サイバーセキュリティ読本【完全版】ネットで破滅しないためのサバイバルガイド(2017年5月 星海社)
御社のデータが流出していますー吹鳴寺籐子のセキュリティチェック(2017年6月 早川書房)
ウルトラハッピーディストピアジャパン 人口知能ハビタのやさしい侵略(2017年7月 星海社)
犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術(2017年8月 角川新書)
公開法廷 一億人の陪審員(2017年10月 原書房)
内通と破滅と僕の恋人―珈琲店ブラックスノウのサイバー事件簿(2017年11月 集英社)
大正地獄浪漫1(2018年8月 星海社)
原発サイバートラップ(2018年8月 集英社文庫)
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器(2018年11月 角川新書)
大正地獄浪漫2(2018年12月 星海社)
天才ハッカー安部響子と2048人の犯罪者(2019年1月 集英社)

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植田文博(うえだふみひろ)

3月5日生まれ。熊本県生まれ。東京都在住。

第6回受賞作

経眼窩式

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2014年5月 原書房

「あんたは、最低だな」  古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。

著者よりひとこと

 欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)

近 況

 少し変わったジーンズを購入しました。一般的なジーンズは、生地に糊をつけて裁断して縫製し、最後に洗いにかけて商品となります。洗うのは、生地についた固い糊を落とすため。そして生地が縮まないようにするためです。
 今回購入したのは、生デニムと呼ばれるジーンズで、最後の洗いの行程を省いたものです。結果、糊がついたままの生地は異様に固く、はき心地が悪くなります。しかも、洗濯すると丈が数センチも縮みます。
 にも関わらず一定の人気があるのは、生デニムを履き続けてから洗うと、深い色落ちによって美しいブルーの陰影が浮かび上がるからです。さらに言えば、購入して半年間は、一度も洗わない方がいいそうです。現代にそんな要求をするジーンズがあるのが不思議で、興味を引かれました。そろそろ目標の半年です。
 そんなところで、今年は三作目の「原宿コープバビロニア 心臓のように大切な」の文庫化を予定しています。主人公が男性から女性へと変わり、心の動きも大きく変化しました。夏に刊行予定です。また、動物が登場するお題で綴られたアンソロジーに参加させていただきました。こちらは、春に刊行予定です。(2019年3月31日)

著作品一覧

経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)

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金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

ベンヤミン院長の古文書(帯なし)

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

 猫三昧です。
 10歳で柴犬を飼い始めて以来、犬派を自称してきましたが、50年後の今日、猫派かもしれない、いやきっとそうだ、と。夜中、ごそごそすると気配を察してさっと近づいてきて「わおーん」(猫なのに)。一年前にこの子を貰えて本当にラッキーでした。
 あとは一畳菜園を始めました。あまり日当たりが良くないにもかかわらず、小松菜・春菊、スナップエンドウ、そして甘~い苺(の収穫予定)。夏になったら友人から日本蜜蜂を分けてもらうことになっています。これで一年分のハチミツが取れるぞと取らぬ狸しています。
 作品の方も進行中です。遅れてしまっていますが今年こそ出版にこぎつけたいです。歴史ミステリジャンルの作品になる予定です。(2019年3月31日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)

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叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

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2010年3月 光文社

 介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

 この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

 三月二十六日現在、ようやっと新作を脱稿しました“と、前回ここで書きました。では出版なったかというと……、鋭意修正中です。
 この年末年始は、カレンダーの都合で六連休ですから、この好機に一気に!と意気込んだら一二月二七日から咳が止まらない……。二八日の朝、病院に行きました。鼻粘膜採取されて、あっさりインフルエンザA型と判明、図らずも六連休が七連休に昇格した瞬間です。
 そこからは、風邪様の諸症状全開でした。何も食べられず、薬ばかり飲んでいたら胃が痛み、咳の連発と相まって夜も寝付けぬ始末。
 といっても三十日一八時現在、吸入薬のリレンザが効いて、症状は少し落ち着きました。
 さぁ、頑張ります。二〇一九年のうちには、なんとか出版出来るよう地道に、地道に……。(2019年3月31日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)