受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

松嶋さん顔写真

松嶋智左

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

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2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社)
顔写真(稲羽白菟)

稲羽白菟(いなばはくと)

1975年6月20日、大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。現在は呉服関連企業に勤める。2015年「北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞」受賞。

第9回準優秀作

合邦の密室

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2018年6月 原書房

 大阪文楽劇場、顔が崩れる毒を母に飲まされる俊徳丸の物語「摂州合邦辻」の上演中、人形の左遣いが持ち場を棄てて姿を消した。跡を追った三味線方・冨澤絃二郎は黒頭巾の下、まるで俊徳丸のように崩れた人形遣いの顔を目撃する。
 同じ頃、淡路の離島の古い芝居小屋を調査する一団、絃二郎知己の文楽劇場職員は「密室」状態の舞台裏から姿を消し、離れた岩場で転落死体となって発見される。
 「すごい人形を発見した」ーー死んだ職員は最後の電話で言い遺した。
 職員の死に疑問を抱きつつ、消えた人形遣いの行方を捜す絃二郎は一冊のノートを発見する。「私は母に毒を飲まされた。私の顔を崩した母を、私は決して許さない」ーーそのノートには、袖頭巾を被った喪服姿の母と父の生首にまつわる不気味な話が綴られていた。

著者よりひとこと

 4年前、私はミステリーの処女作を島田先生にご審査いただく幸運に与りました。入選は叶いませんでしたが、先生は温かなアドバイスをくださいました。その時、私は夢を諦めないことを心に誓いました。今回、規格外の形で手を差し伸べてくださった島田先生。懐深く新参者を迎え入れてくれた福ミス。福山市。……皆様に、心から感謝いたします。今まで私自身がミステリー文学から得てきた喜びや感動を、一日でも早く読者の方々に提供できるように精進することを、私はここに誓います。

近 況

 今、歌舞伎の台本を書いています。上演に至るかどうかはマァまだ未定なのですが、歴史が好きな(ちょっとマニアックな)方なら「へー、この人今まで歌舞伎になってなかったんだ」と思える様な人物が主役の一幕です。お目に掛けられると良いのですが。
 本格ミステリーも歌舞伎も、現実では一寸ありえない様な様式美的な世界を舞台にしていて、島田先生のお言葉をお借りするならどちらも「反自然主義的」な劇文学ですね。
 造り物だという事に自覚的な物語が、僕は本当に好きなのですね、きっと。去年心底惚れ込んだストップモーションアニメ『クボ・二本の弦の秘密』も、虚構を突き詰めて真実に至る様な、そんな素晴らしい映画でした。
 マァそんなお話はともかく……。
 島田先生、皆様のご指導・お力添えのおかげ様をもちまして、宿年叶ってお披露目に至りましたデビュー作、まずはお手に取って頂けましたら幸いです。どうぞご贔屓に。(2018年3月31日)

著作品一覧

合邦の密室(2018年6月 原書房)
石井真由子さん写真

北里紗月(きたざとさつき)

1977年生まれ。千葉県出身。大学院で生物学を修めた後、現在は胚培養士として病院に勤務。家庭では3人の子どもを持つ母親。

第9回優秀作

さようなら、お母さん

さようなら、お母さん書影

2017年4月 講談社

 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。
 美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは?玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が調査に乗り出す。

著者よりひとこと

 この度は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、心から嬉しく思います。第一子出産後から小説を書くはじめ6年が経ち、赤ん坊だった長女も今や持ち上げられないほどです。そして第三子が生まれた2016年、人生最高の瞬間が訪れました。このような機会を与えてくださった島田荘司先生や、選考委員の方々の期待を裏切らぬよう、「福ミス」の名に恥じぬよう、精一杯努力していきたいと思います。

近 況

 早いもので、緊張の極みにあったバラ祭りから1年が経ちました。次のバラ祭りまでには2作目を!と目標を立てていたのですが、詰めの甘さは天下一品なので間に合いませんでした。2作目もグロテスクかつ衝撃的で爽快な内容となっております。お楽しみにお待ちください。
 さて最近、台所にある本棚がまずいです。趣味で集めている毒関連の本に加え、友人知人が怪しげな本を沢山くれるのです。「和食の基本」「お弁当のおかず」「最強毒生物」「アマニタパンセリナ(毒キノコ)」「他殺体」と、冷蔵庫脇の本棚はこんなラインナップです。ちなみに最下段には、らっきょうと梅干が漬かった瓶が置いてありますが、毒は入っていません。自宅の本棚はさておき、勤め先の病院の個人ロッカーにある「毒殺」と赤字で書かれた本は今日ちゃんと持って帰ります。(2018年3月31日)

著作品一覧

さようなら、お母さん(2017年4月 講談社)
須田狗一

須田狗一(すだくいち)

1953年大阪市生まれ。IT会社に30年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら推理小説を執筆。

第9回受賞作

神の手廻しオルガン

神の手廻しオルガン書影(帯なし)

 1942年、ナチスの国家保安部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから72年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。
 その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子中学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが……

著者よりひとこと

 ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために「福山ミステリー文学新人賞」に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います。

近 況

 昨年「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」をいただきました「殺人者は手に弓をもっている」(「神の手廻しオルガン」と改題、光文社より出版)は、ポーランド語の小説を翻訳した経験をもとに、執筆したものです。昨年十月末、六年ぶりに家内とともにワルシャワに行き、その小説の作者であるポーランド人の方と食事をしました。もちろん、受賞作の中の小説家とは違って、その人は強制収容所とは何のかかわりもなく、殺人に関与したこともありません(たぶん)。ビールを飲みながら、互いに次回作の構想を披露し、異国の楽しい夜はあっという間に過ぎました。
 翌日は日本に留学経験のある娘さんの案内で、グダニスクと隣町のソポトを歩いて回りました。受賞作では、ソポトが事件の重要な舞台になるのですが、実は行ったことはなかったのです。有名な大桟橋は強風のために閉鎖されていました。殺人事件など起こりそうもない閑静な町です。
 現在はいったん翻訳を離れ、明治四十三年の徳川慶喜をモチーフにした作品を執筆中です。(2018年3月31日)

著作品一覧

神の手廻しオルガン(2017年5月 光文社)
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一田和樹(いちだかずき)

11 月6 日生まれ。東京都出身。バンクーバー在住。

第3回受賞作

檻の中の少女

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2011年4月 原書房

「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」 サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める ─

著者よりひとこと

 このたびは素晴らしい賞を授けていただき、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。
島田先生、羽田市長をはじめ、関係者の皆様には感謝の言葉もありません。
妻や母、私を支えてくれた人々と喜びをわかちあいたいと思います。
私たちの社会は、インターネットを中心として大きく変わりつつあります。小説の書き方、読み方も変化しています。その中にあってゆるぎない存在感を持った、先駆けとなるような作品を書いてゆきたいと思います。
最後に福山市と、福山市の皆様のさらなるご発展をお祈りいたします。(2011年5月)

近 況

 昨年はサイバーミステリに加えてSF長編など合計六冊を上梓した他、連載もふたつこなした充実の一年でした。
今年もサイバーミステリの長編に加えて、歴史改編物の長編などが進行中です。
書店でみなさまにお目にかかるのを楽しみにしております。(2018年3月31日)

著作品一覧

檻の中の少女(2011年5月 原書房)
サイバーテロ 漂流少女(2012年2月 原書房)
キリストゲーム(2012年4月 講談社)
式霊の杜(2012年6月 講談社)※筆名「いちだかづき」
式霊の杜 愚者の約束(2013年3月 講談社)※筆名「いちだかづき」
サイバークライム 悪意のファネル(2013年2月 原書房)
サイバーセキュリティ読本(2013年7月 原書房)
第1巻こちら、網界辞典準備室!『電網恢々疎にして漏らさず網界辞典』準備室! (2013年10月 技術評論社・電子書籍)
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語(2013年10月 技術評論社)
絶望トレジャー(2014年11月 原書房)
天才ハッカー安部響子と五分間の相棒(2015年1月 集英社)
ネットの危険を正しく知るファミリー・セキュリティ読本」(2015年3月 原書房)
マンガで知るサイバーセキュリティ オーブンレンジは振り向かない(2015年3月 原書房)
サイバーミステリ宣言!(2015年7月 株式会社KADOKAWA:共著)
個人情報ロンダリングツール=パスワードリスト攻撃シミュレータの罠 工藤伸治の事件簿番外編(技術評論社・電子書籍)
アンダーグラウンドセキュリティー1(カドカワ・電子書籍)
ノモフォビア(キリック・電子書籍)
ベスト本格ミステリ2016 収録「サイバー空間はミステリを殺す」(アンソロジー 2016年6月 講談社)
女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険(2016年7月 集英社)
原発サイバートラップ:リアンクール・ランデブー(2016年8月 原書房)
サイバー戦争の犬たち(2016年11月 祥伝社)
サイバーセキュリティ読本【完全版】ネットで破滅しないためのサバイバルガイド(2017年5月 星海社)
御社のデータが流出していますー吹鳴寺籐子のセキュリティチェック(2017年6月 早川書房)
ウルトラハッピーディストピアジャパン 人口知能ハビタのやさしい侵略(2017年7月 星海社)
犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術(2017年8月 角川新書)
公開法廷 一億人の陪審員(2017年10月 原書房)
内通と破滅と僕の恋人―珈琲店ブラックスノウのサイバー事件簿(2017年11月 集英社)

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植田文博(うえだふみひろ)

1975 年、熊本県生まれ。東京都在住。会社員。

第6回受賞作

経眼窩式

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2014年5月 原書房

「あんたは、最低だな」  古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。

著者よりひとこと

 欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)

近 況

 今年はスカイダイビングを体験しました。 当日、眠気を感じるほどの緊張をかかえながら、インストラクターと小型飛行機へ。コクピット助手席に座ります。飛行機のコクピットといえば、大型旅客機のオートマティックなイメージでしたが、目の前のそれは、『紅の豚』ばりのほぼすべてがマニュアルのセスナ。すべてを手作業でこなしながら離陸。高度三八〇〇メートルの世界へ。ちょうど富士山頂くらいの高さです。
 降下開始のアナウンスとともに、機体側面が開放されます。差し込む日差し、強風と轟音。歓声とも悲鳴ともつかない声をあげながら、一人、また一人と落下してきます。最後に自分もインストラクターに抱えられ、機外へ。
 青い世界が一回転して頭が下へ、地面に向かって急激な加速開始。弾丸のように大気を切り裂き、興奮による叫びも、つぎつぎと後方へ置き去りにされていきます。
 パラシュート展開。身体が上空へひっぱりあげられるようなショック。景色を眺めながらの着地。
 強烈な体験でした。人生に一度はお勧めです。Twitterに動画を投稿しています。
 昨年の八月、「原宿コープバビロニア 心臓より大切な」を上梓させていただきました。新しいプロットもできあがりそうです。(2018年3月31日)

著作品一覧

経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)

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金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

ベンヤミン院長の古文書(帯なし)

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

 近況、と申すにはやや遠くなりましたが、2017年4月に二冊目となります『薬草とウインク』(原書房)を刊行致しました。12世紀末のパリを舞台に、魔女や呪術師や黎明期の大学で学ぶ学生や旅芸人や職人が登場します。かれらが聖遺物にまつわる謎を解いてゆくという中世ヨーロッパにどっぷり浸かった歴史ミステリとなっています。ご興味が湧きましたらぜひお手にとってくださいませ。
 変化といえば、遅ればせながら私も昨年末に猫の飼い主(しもべ、ともいう)になりました。長年、自分は犬派であると公言してきましたが、すっかり猫にハマってしまいました。
 猫に邪魔されつつ(?)、次の作品を書き上げました。16世紀の大航海時代のお話です。順調にいけば年内に光文社さんから出版予定です。あわせてよろしくお願いいたします。(2018年3月31日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)

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叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

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2010年3月 光文社

 介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

 この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

 もし、年内にリリースが決まったとして、前作から四年ですから、我ながら長いインターバルだな、と呆れたものですが、ふと、あることに気付きました。前作も、前々作から四年かかっていたんです。
 というわけで、次作は順調にいって二〇二二年の出版になる予定なので、早くもそれに気付いた地元の友達連中からは、オリンピック作家と呼び蔑まれております。なんとも腹立たしいですが、言い得て妙、返す言葉がありません。(2018年3月31日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)

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神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

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2015年5月 講談社

 20XX年の冬,スウェーデンのストックホルムではノーベル賞受賞者を祝う晩餐会が開かれていた。祝宴の最中,ノーベル医学・生理学賞の受賞者である浅井由希子博士は,壇上で紫斑性筋硬化症候群という奇病について語り始める。彼女の息子はその奇病に冒されていたのだ。参列者の誰もが息子の治療の為に研究し続けた母親の言葉に感動した。しかし,彼女は美談の果てにこんな言葉を解き放つ。「私の息子は自殺したのではありません。長峰高校の元一年B組の生徒達に苛め殺されたのです」と。こうして,天才医学者による人類史上,未曾有の復讐劇が幕を開けた。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

 初めまして神谷一心です。第十回の受賞者の皆様、おめでとうございます。福ミスの仲間が増えて嬉しいです。
 なにか近況をということなのですがデビュー作の「たとえ、世界に背いても」を出版して以来、まだ新作が発表できていません。受賞作の電子書籍化や台湾語への翻訳といった話は編集部から伺っております。
 私は子供の頃からたくさんアイデアを練っていて、ファンタジーやミステリー、歴史物からSFまで物語の構想がたくさんあります。
 その中から一つでもいいから発表できないかと思っていました。運に恵まれたのか二冊は形にできましたがそのあとが続かない。
 商業出版は色んな制約があって私が抱えている主題やまだ誰も解いていない世界の謎を形にするには創意工夫が必要なようです。
 いつか発表できるように今後も努力を続けていきますので、もし新刊が出ましたらよろしくお願いいたします。(2018年3月31日)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

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川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

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2014年11月 原書房

 戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

 新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 深木さんに背中を押していただき、また猫と暮らし始めました。前の猫たちが虹の橋に旅立って、もう八年です。
 一見、楚々として上品ですが、淡路島のイオン駐車場で鳴いていた保護猫。洋猫たちとは、まるで勝手が違います。
 これまで都市伝説だと思っていた猫のいたずら――ティッシュペーパー撒き散らし、カーテン登り、網戸破り、ゴミ箱あさり、新聞ちぎり、すべてフルスロットル。悪い声で叫び、いきなり両足跳び蹴りを喰らわしたり、人のごはんに手(足?)を伸ばしたりします。
 ぶれない自己主張。決して惑わぬ鬼の眼力。鍛え抜かれた身体能力。そして何より、頭の切り替えが早いこと。
 彼女こそ、ずっとぬるま湯に浸かっていた私に「世の荒波は、かく乗り越えよ」と指南する、大師範さまやもしれません。
 細身の白百合に似て、その名はリリー、もとい、りり。
庄造さんでも寅さんでもなく、りりです。
 SNS等でお目に留まりましたら、どうぞ、お声掛けくださいませ。(2018年3月31日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)