島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第18回受賞作
腐らない遺体が発端だった。
猛暑日が続く中、住宅街の空家で死後三日の高齢男性の遺体が発見された。熱中症による事故死と目されたが、刑事の竜胆は腐らない遺体に引っかかる。
しかも空家は施錠され密室状態だった。毛髪からヒ素が検出されたが致死量に及ばない。被害者の爪に残っていた「土」、前歯に挟まっていた「繊維片」。捜査を進めるにつれ、謎が増殖する。
同居する嫁の佳代子の愛車と同じナンバーの車、同じブラウスを着た女性が、現場の防犯カメラに。
だが、佳代子には完璧なアリバイが。徘徊老人の熱中症による事故とみえた事件は、意外な方向へと飛び火し――。
初めて書いたミステリー、初めての長編公募への挑戦での受賞に、望外の喜びに震えています。
最終選考に残れば、島田荘司先生から講評をいただける。それを励みにチャレンジしました。
めざしたのは、「ふつう」を描くことです。
どこの署にもいる「ふつう」の刑事。事故と紙一重の事件。犯人も「ふつう」の市民。ありふれた「ふつう」を描くことで社会のひずみや問題、知らず知らずのうちに「心を腐らせる」ものをあぶり出そうと企図しました。
これからも精進を続け、賞の名に恥じぬ作品を世に問い続けたいと思います。(2025年10月)
第16回受賞作

(2024年 講談社)
市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、ある日、相談者の妻が密室から墜落死する現場を目撃してしまう。被害者が死の間際に残した「ナツミ」という人物を追って、刑事である夫の具樹は捜査を開始するが、その行方は杳として知れなかった。
一方で、あずさの元には不可思議な相談が次々と舞い込む。施錠された納骨堂でひとつ増えた骨壺。高齢男性ばかりをつけ狙う怪しげなストーカー。重なる謎の裏には、驚きの真相があった。
自分が書いたミステリに、尊敬する島田荘司先生から評価をいただきたい。その一心で今回応募した作品が、思いもかけず新人賞をいただくこととなり、驚きと喜びで胸が一杯です。
審査に携わっていただいた島田先生はじめ関係各位、また投稿前に作品を読んで感想をくれた友人たち、そして私の創作活動を励まし支えてくれた妻に、心より感謝を申し上げます。ここを新たなスタートとし、諸先輩方に追いつけるよう、精一杯頑張ります。(2023年10月)
2025年1月に刊行した、受賞後、第一作となる『千年のフーダニット』が、思いのほかご好評いただき、年末のMRC大賞で8位ランクインするなど、一歩前に踏み出せた一年となりました。また、その後はいくつかのお仕事をいただき、刊行こそなかったものの、年末までずっと準備をしてきました。これが2026年には、いよいよ世に出る運びとなります。
まずは1月、ちょうど一年ぶりの新刊『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』が出版されます。そして、雑誌「メフィスト」に、『シュレディンガーの密室』が連載されることとなりました。なんと、あろうことか島田先生の御手洗潔と並んでの掲載です。福ミス受賞に勝るとも劣らない驚きと喜びが、こんなに早く訪れるとは思ってもいませんでした。大変光栄です。
現在は連載原稿も書き上げ、さらにその次の作品に向けてプロット作りを進めています。ミステリファンの間に、福ミス作家ここにあり、と刻み込めるような一撃を目指します。
足元を見つめながら、もう一歩前へ。応援よろしくお願いします。(……なんか選挙公報みたいだ)(2026年2月)

第9回準優秀作

2018年6月 原書房
おかげさまで一冊出れば次のご依頼を頂き、自分が良いと思うものを無理のない範囲で書き続けることができています。一昨年の『神様のたまご センナリ劇場の事件簿』(文春文庫)以来、2025年は新作の刊行がありませんでしたが、その間は千枚規模の大長編に約二年がかりで取り組み続け、今年の5月にようやく刊行の予定です。
毎回「これぞ自分の最高傑作」というつもりで新作に取り組んでいますが、今回の長編は今後このレベルを更新するのはちょっと難しいかな……と自分でも思うほどの畢生の大作となりましたので、是非ご高覧賜りましたら幸いです(などと言いながら、これからも毎回最高傑作を書くつもりで努め続けることに違いはないのですが)。
あと、今のところ今年は短編がもう一本、ハヤカワミステリマガジン4月号「名探偵特集」に新作短編が発表されます。こちらは「名探偵」という事自体をテーマにした、ちょっとひねりの利いたものが仕上がりましたので、併せてお楽しみいただけますと幸いです。(2026年2月)
神様のたまご 下北沢センナリ劇場の事件簿(2024年4月 文春文庫) p>
第6回受賞作

2014年5月 原書房
「あんたは、最低だな」 古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。
欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)
今年は前からやってみたかったドライブに挑戦した。東京から実家である熊本へ車での帰省。その距離、約1200キロ。
渋滞のゴールデンウイーク中に出発。停滞と発進が延々と続く中、早い段階で音楽も聞き飽き、同じ景色の繰り返しに辟易する。
ループする景色に、学生時代に青春18切符でも東京から熊本へ帰省したことを思い出す。あの時も電車の窓下台に肘をつき、うとうとしては目を覚まし、見慣れた森だと思って駅名を見ては愕然としていた。
何も変わっていない。が、それはそれで楽しい経験だった。
昨年は講談社さんでMRCショートショートを一つ書かせていただきました。 現在は長編二本を書いており、形にできればと思っています。 (2026年2月)
経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)※アンソロジー収録
99の羊と20000の殺人(2019年8月 実業之日本社)*2017年8月原書房「心臓のように大切な」を改題・改稿
ニケを殺す(2023年5月 講談社)