島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第15回優秀作
中国の四川省成都市にあるパンダセンターで働く矢部楓は、同センターで唯一の日本人飼育員である。ある日、楓は自分が担当する獣舎内で、女性獣医の死体を発見する。地元警察は、高所からの転落による事故死と発表した。
一ヶ月後。北京の中央警察から捜査官が派遣されてくる。事故を再捜査するといい、楓は否応なしに、捜査官のアシスタントに任命されてしまう。
当初、的外れに見えた再捜査だったが、時間の経過と共に、次々と新事実が発覚する。なんと、女性獣医は事故死ではなく他殺だったのだ。
犯人は誰か。動機は何か。異国の地で夢を叶えた日本人女性が、北京の捜査官と共に、難事件に挑む。
この度は優秀作に選出して頂き、島田先生及び関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
私は、十年以上にわたり仕事をしつつ執筆を続け、これまでにノンフィクション作品を二冊出版しました。ただ、小説では新人賞に応募しては落選を繰り返していました。そんな中、中国で起こる事件を日本人目線で描写しつつストーリーを進めるという、今回の作風を確立できました。
今後も、自身のスタイルに磨きをかけた作品を書き続けていく決意です。
第12回受賞作
2020年3月 原書房
編集長にも複数回読んでもらった上で進めていた2作目を半年以上も後になって突然白紙に戻される。
その件に関して編集者と何度かやり取りをし、その後改めて返事をするといわれたが約2年半以上が経過した現在に至るまで返信なし。
待っている間に仕上げた複数の原稿を送付するもすべて無視される。
約1年待ってから編集長に相談するも、その後よくわからないまま今年3月を最後に返信なし。
以前福山市で島田先生とお会いした際、デビュー当初の知念さんが原稿を放置されたという話を各社編集者さんの前でされており、それを自分は「今の福ミスでは決してそんなことはないから安心して」という前向きなメッセージだと受け取っていたので、なんだかとても残念に思いました。
まあ、人間としてここまで雑に扱われることは、出版業界以外では普通めったにないことだと思いますので、それはそれで貴重な経験をさせていただいた、と無理やりにでも自分を納得させるしかありません。(2024年3月)
約束の小説(2020年3月 原書房)
第10回受賞作
2018年5月 講談社
2024年、辰年です。今年は久しぶりに福ミスの表彰式が行われるということでとても楽しみにしています。
2023年は、わたしにとって、忘れられない記念の年となりました。本を出していただけたこと、更には黒川博行氏にお話しを伺う機会を得たことです。偉大なミステリー作家を前に緊張しましたが、大変有意義な時間を過ごさせていただきました(拙著『流警』所載)。それに加えて昨年は、推し活として貴重なイベントに参加できたことがあります。長年、ファンとして応援し続けておりました方と、バスツアーで仙台を巡りました。対局のときのお姿とは違って、リラックスされて気さくにお話しくださったことは、わたしの一生の宝物です。そして、そのツアーのなかで震災遺構である荒浜小学校を訪れたことが、心に残りました。当時の被災の状況などを教えていただき、自然災害の凄まじさやその後の復興のご苦労などを直に伺うことができたこと、小学校の窓から見た景色が胸に刻まれ、生涯忘れることのないものとなりました。
さまざまな経験をした兎年でしたが、今年もいっそう励み、楽しい時間を過ごしていただけるような作品を作りたいと思います。
今のわたしにできることをとにかく頑張ろうと思えた一年でした。(2024年3月)
第8回優秀作
2016年5月 光文社
神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。
もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)
僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)