島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第13回受賞作
2021年 講談社
昨年まで勤めていた映画会社を辞めて、自営業に戻りました。
今年からは新しい環境で、文字文化や手書き文化の普及に努めたいと思っています。
空いた時間で小説を書いて、新人賞への応募も続けています。
まずは最終選考へ残ることを目先の目標として頑張ります。
このミス、清張、乱歩賞をとるまでは書き続けます。(2024年3月)
依存(2021年3月 講談社)
葛藤(2021年12月 講談社)
第13回受賞作
2021年 講談社
信州上田に移住して4年目を迎え、こちらの環境にも慣れて来ました。そこで今年度は執筆に専念できるかと思いきや、治験審査委員会や卒後教育講座などからオファーが来て、自分としては結構多忙な一年となりました。そんな中、昨年10月に旭川で開催された第49回日本臓器保存生物医学会という臓器移植関連の学会にて、「薬学とミステリー」というタイトルの特別講演を依頼され、福ミスの紹介も含めて40分の講演ができたことは、自分なりに一つの成果だったと思っています。
さてこの一年間の出版状況ですが、昨年はミステリー長編を二編出版しました。また本年1月には、推理好きの若い女性薬剤師の奮闘を描いた連作短編集一作が出版されます。一方本年2月からは、2年間の予定で東京都薬剤師会が発行する「都薬雑誌」という月刊誌にて、ミステリー小説に関する自作イラスト入りエッセイの連載を始めます。この連載を通じ、都内の薬剤師の方々に、ミステリー小説や福ミスのことを広く知ってほしいと思っています。
最後になりますが、現在新たなミステリー小説のプロットを練っているところです。具体的には、薬局を舞台としたホラーミステリーや、時空遡行と密室殺人を扱った本格ミステリーなどに想いを馳せる毎日です。(2024年3月)
第8回受賞作
2016年4月 原書房
戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)
アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)