受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

野島夕照(のじませきしょう)

 1962年1月26日生。倉敷市出身。横浜市在住。少額短期保険会社の社長を務める傍ら、週末は非常勤講師として大学の教壇に立つ。

第16回優秀作

片翼のイカロスは飛べない

相模湖畔に建つ碇矢邸で、資産家の当主が忽然と姿を消す。碇矢家所有の自家用ヘリコプターが奥多摩上空五百mを飛んでいる時に黒い影と接触するが、この時機体に残された赤いシミは、DNA鑑定の結果、当主の血液であることが判明した。片足が不自由な当主は幼い頃からの夢を叶え、イカロスのように大空を飛んでいたのか。奇想天外なからくりを屋敷の新人メイドが解き明かす。

著者よりひとこと

 この度は優秀作として選考いただき、ありがとうございます。学生時代に島田荘司先生の『斜め屋敷の犯罪』を読んで、いつか機会があれば自分も挑戦してみたいと考えていました。あれから40年。還暦を迎えて、社長業の傍らやっとそれなりに執筆時間を確保できるようになり、島田先生に自分の作品を読んでいただけるところまで来たことを何よりも嬉しく思っています。今後も、大いなる謎をロジカルに解明する作品に挑み続けます。

著作品一覧

麻根重次(あさねじゅうじ)

 1986年生まれ。長野県安曇野市在住。信州大学大学院で進化生物学を専攻し、その後現在まで公務員として勤務。

第16回受賞作

赤の女王の殺人

(2024年春出版予定 講談社)

 市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、ある日、相談者の妻が密室から墜落死する現場を目撃してしまう。被害者が死の間際に残した「ナツミ」という人物を追って、刑事である夫の具樹は捜査を開始するが、その行方は杳として知れなかった。一方で、あずさの元には不可思議な相談が次々と舞い込む。施錠された納骨堂でひとつ増えた骨壺。高齢男性ばかりをつけ狙う怪しげなストーカー。重なる謎の裏には、驚きの真相があった。

著者よりひとこと

 自分が書いたミステリに、尊敬する島田荘司先生から評価をいただきたい。その一心で今回応募した作品が、思いもかけず新人賞をいただくこととなり、驚きと喜びで胸が一杯です。
 審査に携わっていただいた島田先生はじめ関係各位、また投稿前に作品を読んで感想をくれた友人たち、そして私の創作活動を励まし支えてくれた妻に、心より感謝を申し上げます。ここを新たなスタートとし、諸先輩方に追いつけるよう、精一杯頑張ります。

著作品一覧

赤の女王の殺人(2024年春出版予定 講談社)

白木健嗣(しらきけんじ)

1989年9月4日生。三重県四日市市出身。東京都墨田区在住。愛知淑徳大学にて諏訪哲史に師事し、近代文学を学ぶ。日本マイクロソフト株式会社勤務。

第14回受賞作

ヘパイストスの侍女

2022年 光文社

 あかつき自動車の自動運転車「WAVE」が試験中に事故を起こし,ドライバーの男が死亡した。そして,あかつき自動車にはサイバー攻撃で自動運転車を事故させたという脅迫文が届く。                   
 サイバー犯罪対策課の斎藤は,一課の女刑事である前之園とともに,人工知能マリス(Managed Automatic Research & Inference System)を使った世界初の捜査に乗り出した。一方あかつき自動車では社員が自殺し……。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という栄えある賞を賜り,誠に光栄に存じます。島田先生をはじめ,本賞の運営・選考に携わってくださったすべての方に厚く御礼申しあげます。          
 大学在学中に志した作家の夢は,「卒業後十年は社会で悩み苦しみなさい」という恩師の教えで一度保留となり,実際その言葉通りに悲惨な二十代を過ごす事となりました。本賞の受賞は作品だけでなく,作家となるために悩み苦しんだ人生まで肯定して頂けたように感じ,嬉しいと同時に深く安心も致しました。

近 況

2022年はデビュー作を無事に刊行することができました。福山市にて受賞記念のセレモニーを開催していただいたり,地元の四日市市でも市長への表敬訪問や書店回りをさせていただきました。
 改修工事が完了した福山城をぜひとも見に行きたいです。コロナが落ち着いた頃にまた遊びに行かせていただき,美味しいものをたくさん食べたいと思います。
小説の方は現在第二作の執筆を行っており,2023年の早いうちに出版できればと考えています。デビュー作では自身の得意なジャンルであるITを扱った作品を書かせていただきましたが,第二作はITとは少し離れた作品になる予定です。様々な題材に挑戦して,多様な作風を武器にできるようになりたいと考えております。
 仕事が忙しいことを言い訳に読書量が減ってきているため,今年はもう少し本に触れる時間を増やそうと思います。SNSやゲームをしていると無限に時間が吸い取られていくので,このあたりは自戒しなければと思っております……。(2023年3月28日)

著作品一覧

ヘパイストスの侍女(2022年3月 光文社)

平野俊彦(ひらのとしひこ)

1956年、栃木県足利市生まれ。八王子市在住。薬学部教授として教育研究に従事しながらミステリーを執筆。

第13回受賞作

報復の密室

2021年 講談社

多摩薬科大学大日方教授の娘千佳が、施錠された教室で首を吊った。警察は、自殺を装った殺人事件として捜査を始める。
千佳は生前、ミステリー賞に応募中の人物と付き合っていたという。大日方は、旧友の出版社長の協力を得て新ミステリー賞を立ち上げ、やがてその応募者の中に思わぬ人物を見出す。大日方が、学内の遺伝子組み換え実験室にその人物を呼び出そうとした時、完全な密室と化した実験室内で奇怪な第二の殺人が起こる。

著者よりひとこと

この度は、素晴らしい本格ミステリーの賞である本賞を受賞させて頂きましたこと、誠に身に余る光栄に存じます。島田先生を始め選考委員の皆様、福ミス関係者の方々、出版社の方々、そして福山市の皆様に、心よりお礼申し上げます。自分が著した本格ミステリー小説によって、多くの読者を驚かせることが私の夢でした。これから島田先生や出版社の方々のご指導を頂きながら、より良い作品を書き続けることに期待を膨らませています。

近 況

 令和4年は、卒後教育講座の講師や治験審査委員会副委員長などを務めながら、長編二作、連作短編集一作の執筆に勤しみました。令和5年はこれらの出版成就を願いながら、次作の執筆に励みたいと思います。
 卒後教育講座では、「薬学とミステリー」という内容の公演を依頼されることが多いので、自身の専門領域に加えて福ミスとその作家さん達のお話をさせていただいております。また、アガサクリスティーと横溝正史が薬剤師であったことから、ミステリーファンの薬剤師も多く、福ミスのことをより多くの薬剤師に知っていただければという思いで登壇しております。
 その他、趣味の領域ですが、庭の畑仕事、水彩絵画教室、ピアノの練習などにちょこちょこ手を出しています。コロナ禍でめったに飲み会には参加しませんが、昨年末には第14回福ミス受賞者である白木さんの受賞のお祝いも兼ねた、合計八名の福ミス作家さん達による「オンライン祝賀会」に参加させていただきました。(2023年3月28日)

著作品一覧

報復の密室(2021年2月 講談社)
幸福の密室(2021年9月 講談社)
ユダの密室(2023年3月 日本橋出版)

文縞絵斗(ふみしまかいと)

東京都在住 ドリームファクトリー勤務(映画宣伝、映画コンサルティング、映像・クリエイティブ制作)

第13回受賞作

依存

2021年 講談社

未婚の母として十八で真斗を産んだ香奈枝は、真斗の高校進学を機に結婚する。 
しかし、幸せな日々は続かない。次第に真斗が心を閉ざし、ある日、旦那が通り魔に襲われ死亡する。
悲しみに打ちひしがれる香奈枝は、真斗の部屋で犯行に使われた包丁を見つけ、さらに失意のどん底へと突き落とされる。
真斗を守るため、香奈枝は罪を被り自首するのだが、警察は香奈枝の行動に疑念を抱く。やがて、事件を記事にした週刊誌が真相に迫る。

著者よりひとこと

三年前から小説を書き始めました。 毎年、新人賞に応募を続けてきましたが全く手応えなし。挫けそうになった時、支えになったのは作品を読んで励ましてくれた身内や友人たちでした。
受賞の連絡を受けた時、真っ先に彼らの顔が浮かびました。
今回の受賞に満足せず、目標に向かってこれからも突き進んでいきたいと思います。
僕の挑戦は始まったばかり。

近 況

 社会活動が再開して、本業のほうが忙しくなってきたので、SNSはしばらく休止することにしました。
 空いた時間で執筆しながら、新人賞への応募も再開しました。
 最終目標である、このミス,清張、乱歩賞をとるまでは書き続けたいと思います。(2023年3月28日)

著作品一覧

依存(2021年3月 講談社)
葛藤(2021年12月 講談社)

森谷祐二(もりやゆうじ)

福島県出身、在住。

第12回受賞作

約束の小説

2020年3月 原書房

 医師の瀬野上辰史は、日本有数の名家である天城家の後継者として、かつて暮らしていた天城邸へと呼び戻された。雪深い、極寒の地にそびえ立つ、規格外の規模を誇る天城邸で辰史を待っていたのは、その帰りを快く思っていない者からの血腥い警告であった。
 やがて警告は現実となる。陸の孤島と化した天城邸で起きる連続殺人。その謎に、辰史と探偵の新谷が挑む。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞をいただきまして、まことにありがとうございます。敬愛する島田先生を初め、賞の運営に携わったすべての関係者さまに心よりの感謝を申しあげます。
 長年に渡る投稿生活を経て、念願の受賞ではありますが、ここがゴールなのではなく、ここからが本当のスタートなのだと自らによくいいきかせて、さらなる努力を重ねていきたいと思います。 

近 況

 昨年は腰を痛めて通院したり、急激に視力が衰えたり、思考力が鈍ったり、気力が尽きて塞ぎこんだりと、色々と年齢的な老いを実感させられた一年でした。
 もう若い頃のような無理はできないな、とは感じつつも、創作に関してはまだ意欲が衰え切っておらず、それなりに色々な挑戦をして、成長も実感できたので、決して悪いだけの年ではなかったのかなと思います。

 そんな感じで、今年も引き続き自分なりに納得できるよう、なんとか頑張っていけたらいいなと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。(2023年3月28日)

著作品一覧

約束の小説(2020年3月 原書房)

酒本歩(さかもとあゆむ)

1961年、長野県生まれ。東京都在住。早稲田大学政経学部卒。
2016年、かつしか文学賞優秀賞受賞。

第11回受賞作

さよならをもう一度

2019年3月 光文社

 ドッグシッターの風太に一通の喪中はがきが届く。以前交際していた美咲の訃報だった。まだ32歳なのにと驚く。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも思い出し連絡を取ろうとするが、消息がつかめない。
 別れたとは言え、三人は風太にとって大切な女性だった。彼女たちに何が起きているのか。いてもたってもいられない風太は三人のことを調べ始める。彼女たちの友人、住んでいた家、通っていた学校。しかし、彼女たちはまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた。
 あり得ないことに激しく動揺し、混乱する風太。消耗しつつも、彼女たちの生きた証を捜し続けるが・・・・・・。

著者よりひとこと

冒頭で主人公が出くわした謎は、作者の私も答えを見つけるまでに、書き始めてから数ヶ月かかりました。
『あり得ない謎をロジカルに解決する』。私が今作で挑戦し たことが、島田先生が唱える「本格ミステリ」の定義に通ずることに気づき、応募した次第です。
読んでくださる方が、主人公、私と同じように「あり得ない」と戸惑 い、そして解答にたどり着いたとき、「まさか」という興奮を味わっていただけたら望外の喜びです。

近 況

○令和四年は、三作目『ロスト・ドッグ』を光文社さんから出版しました。もう二年ほど犬と暮らしています。自分の経験したことに引きつけて、前作までとはタイプの異なるミステリを書けたと思っています。
○デビューしてから三年が経つわけですが、小説と自分の関わりについて、どこかに書いておきたくなり、noteにまとめました。
 小説家になるまでの試行錯誤、そして自分なりの執筆ノウハウについて約60本の記事にしました。良い振り返りが出来ました。ご興味がありましたら【酒本歩 note】で検索ください。
○現在は新作に向けて日々、構想を練っています。3作書いてみて、小説は難しい、とあらためて感じています。読者として読む方がどれだけ簡単で楽しいだろうと思うこともしばしば。
 それでも「これは」と思うテーマを見つけて、没頭してキーボードに向かうあの時間。夢幻の世を彷徨う境地は他では味わうことはできません。
 この一年も、ゆめまぼろしの世界を歩くことになりそうです。(2023年3月28日)

著作品一覧

幻の彼女(2019年3月 光文社)
幻のオリンピアン(2020年3月 光文社)
ロスト・ドッグ (2022年8月 光文社)

松嶋智左(まつしまちさ)

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。

近 況

 2023年卯年です。もうずい分、福山を訪れていません。行動制限のなくなった今年こそはと思っていますので、良い季節にぜひ伺いたいと思います。
 さて、わたしの2022年ですが、一番のイベントはやはり、自宅リフォームでしょうか。二か月に渡る耐震補強を含めた工事で、仮住まいとして引っ越しを行いました。そうして気づいたことは、とんでもなくものがあるということと、その大半が使っていないもの、つまりなくても困らないものだったということでした。こうして人生において最初で最後と思われる断捨離を敢行しました。結論をいえばとても良かったです。すっきりしました。そして、物欲というものがなくなった気がします。その分、食欲に上乗せされた感はありますが。
 創作活動については、昨年は大変ありがたいことにいくつか作品を刊行していただけました。2023年も集中して励み、警察小説を上梓したいと思っております。気力体力の続く限り、加えてリフォームしたせいで老後の資金がない!という切羽詰まった状況を書く上での大きな推進力として頑張ります。
 一人でも多くの方に読んでいただけることを心より願っております。(2023年3月28日)

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社)
貌のない貌 梓凪子の捜査報告書(2019年3月 講談社)
女副署長(2020年5月 新潮文庫)
匣の人(2021年4月 光文社)
女副署長 緊急配備(2021年6月 新潮文庫)
開署準備室 巡査長・野路明良(2021年9月 祥伝社文庫)
三星京香、警察辞めました(2022年6月 ハルキ文庫)
黒バイ操作隊 巡査部長・野路明良(2022年度9月 祥伝社文庫)
 女副署長 祭礼(2022年10月 新潮文庫)
 バタフライ・エフェクト・T県警警務部事件課(2022年11月 小学館)

稲羽白菟(いなばはくと)

1975年6月20日大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。第十三回北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞受賞。イナバハクトノサイト

第9回準優秀作

合邦の密室

2018年6月 原書房

 大阪文楽劇場、顔が崩れる毒を母に飲まされる俊徳丸の物語「摂州合邦辻」の上演中、人形の左遣いが持ち場を棄てて姿を消した。跡を追った三味線方・冨澤絃二郎は黒頭巾の下、まるで俊徳丸のように崩れた人形遣いの顔を目撃する。
 同じ頃、淡路の離島の古い芝居小屋を調査する一団、絃二郎知己の文楽劇場職員は「密室」状態の舞台裏から姿を消し、離れた岩場で転落死体となって発見される。
 「すごい人形を発見した」ーー死んだ職員は最後の電話で言い遺した。
 職員の死に疑問を抱きつつ、消えた人形遣いの行方を捜す絃二郎は一冊のノートを発見する。「私は母に毒を飲まされた。私の顔を崩した母を、私は決して許さない」ーーそのノートには、袖頭巾を被った喪服姿の母と父の生首にまつわる不気味な話が綴られていた。

著者よりひとこと

 4年前、私はミステリーの処女作を島田先生にご審査いただく幸運に与りました。入選は叶いませんでしたが、先生は温かなアドバイスをくださいました。その時、私は夢を諦めないことを心に誓いました。今回、規格外の形で手を差し伸べてくださった島田先生。懐深く新参者を迎え入れてくれた福ミス。福山市。……皆様に、心から感謝いたします。今まで私自身がミステリー文学から得てきた喜びや感動を、一日でも早く読者の方々に提供できるように精進することを、私はここに誓います。

近 況

 またまた制約の多い一年でした。状況に社会が慣れてしまったような気もしますが、兼好法師の言う通り「過ちは安き所に成りて必ず仕る事に候。」引き続いての皆様の油断ない対策とご健康を願うとともに、医療、対策に従事する方々に改めて深く感謝を申し上げたいと思います。
 さて僕の方はと申しますと、以前からイベントや企画にお声を掛けさせて頂いていたご縁で日本推理作家協会に入会し、その後、また別のイベントでご一緒していた先輩にご推薦頂き、現在、推協公式アカウントの中の人(い)として、三週に一週、SNS上で読者の皆さんと楽しく交流させて頂いたりしています。小説を書く、ということは「読者との言語的コミュニケーションへの希求」そのものであると個人的には思っていますので、こんな楽しい御役が幸運にも回ってきたことは大変うれしく光栄です。
 そして小説に関しては、これまた別のパーティー(島田先生のオペラ演奏会)でご縁を得た編集さんからお声を掛けて頂き、現在、連作短編の新作、初の書下ろし作品の準備を進めています。
 いずれも楽しいイベントやパーティーのご縁があって生まれたこと。一日も早く安心できる状況となり、また、福ミスの授賞式が賑々しく開催される日が来ることを心より願っています。(2023年3月31日)

著作品一覧

合邦の密室(2018年6月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)
仮名手本殺人事件 (2020年2月 原書房)
オルレアンの魔女(2021年8月 二見書房)

北里紗月(きたざとさつき)

1977年生まれ。千葉県出身。大学院で生物学を修めた後、現在は胚培養士として病院に勤務。家庭では3人の子どもを持つ母親。

第9回優秀作

さようなら、お母さん

2017年4月 講談社

 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。
 美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは?玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が調査に乗り出す。

著者よりひとこと

 この度は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、心から嬉しく思います。第一子出産後から小説を書くはじめ6年が経ち、赤ん坊だった長女も今や持ち上げられないほどです。そして第三子が生まれた2016年、人生最高の瞬間が訪れました。このような機会を与えてくださった島田荘司先生や、選考委員の方々の期待を裏切らぬよう、「福ミス」の名に恥じぬよう、精一杯努力していきたいと思います。

近 況

 ご無沙汰しております。北里紗月です。近況報告ですが、昨年より進めていた五冊目になる作品が、ようやく書き終わりました。
 内容はミステリーではなく、ホラーになります。初めての領域なのでどうなるか心配だったのですが、考えてみれば幼少期より、ホラー映画は大好きでした。実際に書き始めたところ、予想以上に楽しく書き上げられました。内容はこれまでの作品と同じように生物学の話題が豊富に入っています。お楽しみにお待ちください。
 家の中では、相変わらず三人の子供と大型犬に翻弄されております。どうやらペットのゴールデンレトリバーは、私の順位を自分より下位に決めたらしく、いいように使われている気がします。今年は頑張って、犬より上位を目指したいです。
 今年こそは福山市に向かい、授賞式で皆様と会うことを一つの目標にしていました。それが叶わず残念ではありますが、楽しみが少し先に延びたと思って頑張っていきたいです。(2023年3月31日)

著作品一覧

さようなら、お母さん(2017年4月 講談社)
清らかな、世界の果てで(2018年7月 講談社)
連鎖感染 chain infection(2020年12月 講談社)
アスクレピオスの断罪 Condemnation of Asclepius(2021年10月 講談社)