島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第17回受賞作
2025年3月 原書房出版
執筆、応募歴は約十五年前から。大学入試や医師国家試験の準備のため、離れていた時期もあったため、トータルでは十年間ほど。
過去に福ミス、警察小説大賞、警察小説新人賞の最終選考に残った経験と、講談社BOX新人賞の佳作受賞歴あり。
暇つぶしで始めた小説の執筆は、徐々に楽しくなり、いつの間にか生活の一部になっていました。
昔から読書は好きだったものの、十代の頃は作家やジャンルに拘りはなく、色んな作品を読んでいました。二十歳くらいのときに島田先生の作品と出合って、以降は本格ミステリに夢中になりました。
そんな私の『片腕の刑事』を受賞作に選んでいただき、ありがとうございます。良い作品に仕上げて世に出せるよう頑張ります!(2024年10月)
片腕の刑事(2025年3月原書房出版)
第16回受賞作
(2024年 講談社)
市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、ある日、相談者の妻が密室から墜落死する現場を目撃してしまう。被害者が死の間際に残した「ナツミ」という人物を追って、刑事である夫の具樹は捜査を開始するが、その行方は杳として知れなかった。一方で、あずさの元には不可思議な相談が次々と舞い込む。施錠された納骨堂でひとつ増えた骨壺。高齢男性ばかりをつけ狙う怪しげなストーカー。重なる謎の裏には、驚きの真相があった。
自分が書いたミステリに、尊敬する島田荘司先生から評価をいただきたい。その一心で今回応募した作品が、思いもかけず新人賞をいただくこととなり、驚きと喜びで胸が一杯です。
審査に携わっていただいた島田先生はじめ関係各位、また投稿前に作品を読んで感想をくれた友人たち、そして私の創作活動を励まし支えてくれた妻に、心より感謝を申し上げます。ここを新たなスタートとし、諸先輩方に追いつけるよう、精一杯頑張ります。(2023年10月)
竹中さん、この度は福ミスの受賞、誠におめでとうございます。
早いもので、昨年の授賞式からもう一年が経ちます。この一年は、初めて経験することだらけで、忙しくもとても楽しい一年となりました。デビュー作の刊行、トークイベントの開催、新聞の取材や島田先生の地元へのご来訪、さらに年末には「本格ミステリー・ベスト10」において、『赤の女王の殺人』が“装幀”で大賞!……もっともこれには、私は微塵も貢献していませんが。全て編集さんとデザイナーさんのお陰です。
そして、本年1月には受賞第1作となる『千年のフーダニット』を上梓いたしました。デビュー作よりも更に大事とも言われる2作目で、私がチャレンジしたのはSF仕掛けの特殊設定ミステリです。より多くのミステリファンに楽しんでもらえるような、フックの効いた作品になったと思います。よろしければ是非お手に取ってみてください。(2025年10月)
第16回優秀作
2025年3月 光文社
相模湖畔に建つ碇矢邸で、資産家の当主が忽然と姿を消す。碇矢家所有の自家用ヘリコプターが奥多摩上空五百mを飛んでいる時に黒い影と接触するが、この時機体に残された赤いシミは、DNA鑑定の結果、当主の血液であることが判明した。片足が不自由な当主は幼い頃からの夢を叶え、イカロスのように大空を飛んでいたのか。奇想天外なからくりを屋敷の新人メイドが解き明かす。
この度は優秀作として選考いただき、ありがとうございます。学生時代に島田荘司先生の『斜め屋敷の犯罪』を読んで、いつか機会があれば自分も挑戦してみたいと考えていました。あれから40年。還暦を迎えて、社長業の傍らやっとそれなりに執筆時間を確保できるようになり、島田先生に自分の作品を読んでいただけるところまで来たことを何よりも嬉しく思っています。今後も、大いなる謎をロジカルに解明する作品に挑み続けます。(2023年10月)
弥生の空が美しく晴れ渡り、少しずつ暖かさを感じるようになりました。
竹中さん、福ミス受賞おめでとうございます。今回、仕事の関係で表彰式には出席できませんが、ひと言お祝いを申しあげます。
私自身も、昨年優秀作に選考いただきました『片翼のイカロス』を三月十日に上梓する運びとなりました。特に会社内では公開していなかったのですが、どこから情報を得たのか、「なんか社長が官能小説書いてるらしいぞ」とか「もうすぐ芳賀書店から出版されるんだって」などの不確かな情報が流れたため、この機会にきちんと伝えることにしました。(笑)
光文社編集部の方との打ち合わせでは、普段ビジネスの世界では味わえないような高揚感を得ました。迷惑がられながらも改稿のたびに護国寺まで出向き、お話を伺っては「なるほど」「確かに」と何度も得心したことを憶えています。あらためて御礼を申しあげます。
それでは皆さま。季節の変わり目ですので、風邪など召されぬようご自愛くださいませ。(2025年3月)
第15回優秀作
中国の四川省成都市にあるパンダセンターで働く矢部楓は、同センターで唯一の日本人飼育員である。ある日、楓は自分が担当する獣舎内で、女性獣医の死体を発見する。地元警察は、高所からの転落による事故死と発表した。
一ヶ月後。北京の中央警察から捜査官が派遣されてくる。事故を再捜査するといい、楓は否応なしに、捜査官のアシスタントに任命されてしまう。
当初、的外れに見えた再捜査だったが、時間の経過と共に、次々と新事実が発覚する。なんと、女性獣医は事故死ではなく他殺だったのだ。
犯人は誰か。動機は何か。異国の地で夢を叶えた日本人女性が、北京の捜査官と共に、難事件に挑む。
この度は優秀作に選出して頂き、島田先生及び関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
私は、十年以上にわたり仕事をしつつ執筆を続け、これまでにノンフィクション作品を二冊出版しました。ただ、小説では新人賞に応募しては落選を繰り返していました。そんな中、中国で起こる事件を日本人目線で描写しつつストーリーを進めるという、今回の作風を確立できました。
今後も、自身のスタイルに磨きをかけた作品を書き続けていく決意です。(2022年10月)
第14回受賞作
2022年 光文社
この度は「島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。島田先生をはじめ、本賞の運営・選考に携わってくださったすべての方に厚く御礼申しあげます。
大学在学中に志した作家の夢は、「卒業後十年は社会で悩み苦しみなさい」という恩師の教えで一度保留となり、実際その言葉通りに悲惨な二十代を過ごす事となりました。本賞の受賞は作品だけでなく、作家となるために悩み苦しんだ人生まで肯定して頂けたように感じ、嬉しいと同時に深く安心も致しました。(2021年10月)
竹中さん、第十七回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の受賞おめでとうございます。同じ三重県、それも私の地元・四日市市と隣接する桑名市のご出身ということで、非常に親近感を持っております。受賞式でお会いできること、楽しみにしています。
さて、二〇二四年は二月に結婚、八月に昇進と公私ともに充実した一年でした。一方、ロールが変わったことにより仕事で英語を使う頻度が増え、休日は英語学習や英会話に時間を割いてばかりでした。その結果、次作の執筆はさっぱり進まない一年となってしまいました。ここ数年、週末は平日にやり残した仕事の片付けと勉強ばかりという味気ない日々になってしまった気がします。奨学金を借りてまで通った大学の講義をサボり、社会人になって慌てて勉強し直すというのは、つくつぐ無駄の多い人生だなーと我ながら情けなく思います。
不器用ながら二〇二五年は少しでも執筆活動を再開し、実りの多い年にしたいです。(2025年3月)
ヘパイストスの侍女(2022年3月 光文社)
抜け首伝説の殺人 巽人形堂の事件簿(2023年10月 光文社)
第13回受賞作
2021年 講談社
文字文化や手書き文化を広める仕事に携わるようになり、昨年から始めた書道にどっぷりはまってしまいました。「百人一首」や「奥の細道」などの古典作品を臨書していると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
2026年に書道がユネスコの無形文化遺産として審査されるのに合わせて、筆や手書きの文化に再びスポットが当たるような企画をすることが、、当面の目標です。
そんななかで、小説と両立ができるように、時間配分を心がけなければと思っています。
まずは最終選考へ残ることを目先の目標として、このミス、清張、乱歩賞をとるまでは書き続けます。(2025年3月)
依存(2021年3月 講談社)
葛藤(2021年12月 講談社)
第13回受賞作
2021年 講談社
信州上田にて、年に長編一、二作のペースで執筆を続けています。今年は春に一作を出版する予定です。
また昨年二月から、東京都薬剤師会が発行する「都薬雑誌」という月刊誌に、隔月で連載を開始しました。この連載企画は「薬学はミステリー」という主題で、自作イラスト入り短編ミステリー小説的な読み切りエッセイを掲載するコーナーです。毒物はミステリー小説に良く出てきますが、薬物を使ったトリックを登場させるミステリー小説は意外に少ないように思います。本企画では、薬物相互作用、薬物の禁忌症、オーバードースなどを背景とした、薬物がトリックの主役となるようなショートショートを書いています。ちなみに本年二月号には、その第8回目で医薬品のボツリヌストキシン(ボトックス)を扱った「群衆にまぎれて」が掲載されています。
もう一つ私の好きな小説ジャンルが歴史ミステリーです。二〇二三年には、戦中の満州を舞台に三人のユダヤ人が連続密室殺人事件に巻き込まれる本格歴史ミステリー「ユダの密室」を出版しました。今年は、太平洋戦争末期の疎開村で起こった連続殺人事件を主題とする本格歴史ミステリー小説を出版する予定です。(2025年3月)
第12回受賞作
2020年3月 原書房
現在はまったく別のジャンルで活動しております。
元々のミステリ系に関しても、並行してもうしばらく続ける予定です。
とはいえ、よくある流行りもののような書店でいくらでも見つけられる作品を書く予定は今後いっさいありません。
古典ノワールやケッチャムのような過激なエログロバイオレンス、アンチモダンミステリや古典的推理小説等々、現代市場から完全に切り捨てられてもう読むものがなくなったと嘆く自分含めたマイナー嗜好の読者へ向けての作品を中心に書いています。
「一度くらいなら見てやってもいいよ」という編集者さんがもしいらっしゃいましたら、こちらまでメールをいただけると嬉しいです。
latyjp@yahoo.co.jp
迅速に対応いたします。(2025年3月)
約束の小説(2020年3月 原書房)
第11回受賞作
2019年3月 光文社
『ひとつ屋根の下の殺人』が原書房さんより三月に刊行されました。本格ミステリーは、慣れていない読者には少しとっつきにくいところがありますが、この小説は読者に手掛かりを明示して最後の真相にたどり着けるように書きました。そのために用意した伏線は全部で73個。これまでにないミステリーになったと思います。さらに仕掛けがあります。感想が楽しみです。
同じ頃デビューした作家と『わんにゃん堂』というサークルを結成しました。その繋がりから今年は今のところ、二つの書店さんでフェアの展開が予定されています。
昨年は初めて文学フリマに参加して、一万人を超える読みたい人、書きたい人の熱気に圧倒されました。noteに連載した『小説の書き方』やエッセイをまとめた小冊子と『こうしてぼくらはデビューした』(わんにゃん堂メンバー共著)を出品し、好評でした。
今年もSNS、リアルともに書店・読者・作家との接点を積極的につくっていきたいと思っています。(2025年3月)
第10回受賞作
2018年5月 講談社
2025年、巳年です。
2024年は、改めて健康について考えた年でした。激しい気温差によるものか、風邪のようなダルい症状が長引きました。そして怪我をしました。ジョギングの真似事をしていて、アスファルトの出っ張りに足を引っかけ、勢いよく前へ転んだのです。痛みと共に自分でも驚くほど両手両膝から出血し、帰途、あまり人に会わなかったことがせめてもの救いでした。怪我が治るのにひと月近くかかりました。 その後、年末にも地下鉄の階段で転びました。幸いにも打撲だけですみましたが。また家族にも、健康診断で要検査が出たり(これも幸いにも良性でした)、飼い猫にできものができて動物病院に通ったりと、色々、続きました。
そんなある日です。カフェの隣の席で、年配の(わたしより十か二十歳ほど年長と思われる)女性らがお喋りをされていました。なかのお一人がいわれたのです。「体力があったらなんでもするわ」と。当たり前のことながら、その通りだと思わず膝を打ちました。
根性ややる気を持つにも、創造を広げ、小説を書くにも体力が必要かと思います。そして、人を思いやり、慈しむ心を持ち続けることもまた、体力はいるでしょう。その年配の女性からは、まだまだやりたいことがたくさんあるのに、という声にならない呟きが聞こえた気がしました。そんなことで健康についてシミジミ考えた一年でもありました。
2025年は健康に留意し、体力を維持しつつ、読者の方に喜んでいただけるような作品を創りたい。そう願った年の始めでした。(2025年3月)
巡査たちに敬礼を(2024年3月 新潮文庫)
匣の人 巡査部長・浦貴衣子の交番事件ファイル(2024年4月 光文社)
使嗾犯 捜査一課女管理官(2024年7月 角川春樹事務所)
降格刑事(2024年8月 幻冬舎文庫)
流警 新生美術館ジャック(2024年9月 集英社文庫)
ブラックキャット(2024年10月 光文社)
虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2024年11月 祥伝社文庫)
大阪府警 遠楓ハルカの捜査日報(2025年1月 PHP文芸文庫)