受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

松嶋智左(まつしまちさ)

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。(2018年5月)

近 況

 2026年、馬年です。毎年、1月の誕生日前後に健康診断を受けます。年々、結果を聞くのが怖くなり、新年早々、暗い気持ちになるのも嫌なので12月にしようかと考えています。だからどうなるという話でもないのですが。

 2025年は久々に友人と旅行に行きました。電車に乗って富山県富山市へ。まだ雪は早いと思っていたのですが、着いた日の翌日、カレンダーの写真のような冠雪した立山連峰を目にすることができました。帰るまでずっと、その美しさを堪能でき、気持ちのいい旅になりました。もちろん、おいしいお寿司に舌鼓も。クエのお寿司や生の白エビのお寿司は大阪では食べられないもので感動的な味わいでした。

 また、別の日には琵琶湖に浮かぶ小島を訪れました。多景島と書いてタケシマです。湖上から見る眺めが様々であるというところから島の名がついたという説があります。夕陽に煌めく湖面と緑の島影は、普段目にしない光景で日常を離れることの面白さや心地良さ、大切さを改めて感じました。

 3月に福山市に行くのが今からとても楽しみです。(2026年2月)

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社/2024年11月 祥伝社文庫)
貌のない貌 梓凪子の捜査報告書(2019年3月 講談社/2025年6月 祥伝社文庫)
女副署長(2020年5月 新潮文庫)
匣の人(2021年4月 光文社)
女副署長 緊急配備(2021年6月 新潮文庫)
開署準備室 巡査長・野路明良(2021年9月 祥伝社文庫)
三星京香、警察辞めました(2022年6月 ハルキ文庫)
黒バイ捜査隊 巡査部長・野路明良(2022年度9月  祥伝社文庫)
女副署長 祭礼(2022年10月 新潮文庫)
バタフライ・エフェクト・T県警警務部事件課(2022年11月 小学館文庫)
流警 傘見警部交番事件ファイル(2023年7月 集英社文庫)
三星京香の殺人捜査(2023年8月 ハルキ文庫)
出署拒否 巡査部長・野路明良(2023年9月 祥伝社文庫)

巡査たちに敬礼を(2024年2月 新潮文庫)

匣の人 巡査部長・浦貴衣子の交番事件ファイル(2024年4月 光文社)

戸惑いの捜査線 警察アンソロジー(2024年6月 文春文庫)※アンソロジー収録

使嗾犯 捜査一課女管理官(2024年7月 角川春樹事務所)

降格刑事(2024年8月 幻冬舎文庫)

流警 新生美術館ジャック(2024年9月 集英社文庫)

ブラックキャット(2024年10月 光文社)

大阪府警 遠楓ハルカの捜査日報(2025年1月 PHP文芸文庫)

警察の標 警察アンソロジー(2025年2月 朝日新聞)※アンソロジー収録

県警本部捜査一課R(2025年2月 徳間文庫)

流警 水地川温泉事件ファイル(2025年8月 集英社文庫)

刑事ヤギノメ 奇妙な相棒(2025年11月  文春文庫)

県警捜査一課R メイリンの闇(2025年12月 徳間文庫)

大阪府警 遠楓ハルカの捜査日報2(2026年1月 PHP文芸文庫)

疑心殺人 捜査一課女管理官(2)(2026年2月  角川春樹事務所)

須田狗一(すだくいち)

1953年大阪市生まれ。IT会社に30年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら推理小説を執筆。

第9回受賞作

神の手廻しオルガン

 1942年、ナチスの国家保安部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから72年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。
 その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子中学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが……

著者よりひとこと

 ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために「福山ミステリー文学新人賞」に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います。(2017年5月)

近 況

 ことしで七十二歳になりますが、相変わらず健康に何の支障もなく五人の孫に囲まれ充実した人生を送っています。内なる創造のエネルギーを原稿用紙に注ぐ作業も続けています。ただ干支を六周した今、何の肩書きも持たないひとりの市井の人として生きていきたいという思いが年々強くなってきております。つきましては、当福ミスの小冊子へのご報告もこれを最後とさせていただく我がままをお許しください。(2025年3月)

著作品一覧

神の手廻しオルガン(2017年5月 光文社)
徳川慶喜公への斬奸状(2018年8月 光文社)

北里紗月(きたざとさつき)

1977年生まれ。千葉県出身。大学院で生物学を修めた後、現在は胚培養士として病院に勤務。家庭では3人の子どもを持つ母親。

第9回優秀作

さようなら、お母さん

2017年4月 講談社

 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。
 美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは?玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が調査に乗り出す。

著者よりひとこと

 この度は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、心から嬉しく思います。第一子出産後から小説を書くはじめ6年が経ち、赤ん坊だった長女も今や持ち上げられないほどです。そして第三子が生まれた2016年、人生最高の瞬間が訪れました。このような機会を与えてくださった島田荘司先生や、選考委員の方々の期待を裏切らぬよう、「福ミス」の名に恥じぬよう、精一杯努力していきたいと思います。(2017年5月)

近 況

 福ミスの近況報告を書くと、一年の早さを感じます。今年は5月に「赫き女王」の文庫を、6月に新刊のバイオホラーを出版する予定です。文庫にして頂くのは初めてですので、可能な限りブラッシュアップして良い作品をお届けしたいです。

 新刊は、呪われた巫女の末裔が住む離島、溶ける死体、謎に包まれた乳児の死などなど私の好みを詰め込んだ仕上がりとなっております。こちらも最後の仕上げに気合を入れて、頑張ります。

 無関係ですが、今期のミカンの注文が現時点で150キロになりました。我ながら怖いです。 (2026年2月)

著作品一覧

さようなら、お母さん(2017年4月 講談社)
清らかな、世界の果てで(2018年7月 講談社)
連鎖感染 chain infection(2020年12月 講談社)
アスクレピオスの断罪 Condemnation of Asclepius(2021年10月 講談社)
赫き女王 Red Alveolata Queen(2023年12月 光文社)

稲羽白菟(いなばはくと)

1975年6月20日大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。第十三回北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞受賞。

第9回準優秀作

合邦の密室

2018年6月 原書房

 大阪文楽劇場、顔が崩れる毒を母に飲まされる俊徳丸の物語「摂州合邦辻」の上演中、人形の左遣いが持ち場を棄てて姿を消した。跡を追った三味線方・冨澤絃二郎は黒頭巾の下、まるで俊徳丸のように崩れた人形遣いの顔を目撃する。
 同じ頃、淡路の離島の古い芝居小屋を調査する一団、絃二郎知己の文楽劇場職員は「密室」状態の舞台裏から姿を消し、離れた岩場で転落死体となって発見される。
 「すごい人形を発見した」ーー死んだ職員は最後の電話で言い遺した。
 職員の死に疑問を抱きつつ、消えた人形遣いの行方を捜す絃二郎は一冊のノートを発見する。「私は母に毒を飲まされた。私の顔を崩した母を、私は決して許さない」ーーそのノートには、袖頭巾を被った喪服姿の母と父の生首にまつわる不気味な話が綴られていた。

著者よりひとこと

 4年前、私はミステリーの処女作を島田先生にご審査いただく幸運に与りました。入選は叶いませんでしたが、先生は温かなアドバイスをくださいました。その時、私は夢を諦めないことを心に誓いました。今回、規格外の形で手を差し伸べてくださった島田先生。懐深く新参者を迎え入れてくれた福ミス。福山市。……皆様に、心から感謝いたします。今まで私自身がミステリー文学から得てきた喜びや感動を、一日でも早く読者の方々に提供できるように精進することを、私はここに誓います。(2017年5月)

近 況

 おかげさまで一冊出れば次のご依頼を頂き、自分が良いと思うものを無理のない範囲で書き続けることができています。一昨年の『神様のたまご センナリ劇場の事件簿』(文春文庫)以来、2025年は新作の刊行がありませんでしたが、その間は千枚規模の大長編に約二年がかりで取り組み続け、今年の5月にようやく刊行の予定です。

 毎回「これぞ自分の最高傑作」というつもりで新作に取り組んでいますが、今回の長編は今後このレベルを更新するのはちょっと難しいかな……と自分でも思うほどの畢生の大作となりましたので、是非ご高覧賜りましたら幸いです(などと言いながら、これからも毎回最高傑作を書くつもりで努め続けることに違いはないのですが)。

 あと、今のところ今年は短編がもう一本、ハヤカワミステリマガジン4月号「名探偵特集」に新作短編が発表されます。こちらは「名探偵」という事自体をテーマにした、ちょっとひねりの利いたものが仕上がりましたので、併せてお楽しみいただけますと幸いです。(2026年2月)

著作品一覧

合邦の密室(2018年6月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)※アンソロジー収録
仮名手本殺人事件 (2020年2月 原書房)
オルレアンの魔女(2021年8月 二見書房)

神様のたまご 下北沢センナリ劇場の事件簿(2024年4月 文春文庫)

松本英哉(まつもとひでや)

1974年生まれ。兵庫県出身。兵庫県在住。

第8回優秀作

僕のアバターが斬殺ったのか

2016年5月 光文社

 神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。

著者よりひとこと

 もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)

近 況

 先日、待望のビートルズのニューアルバム『アンソロジー4』がリリースされました。個人的には『フリー・アズ・ア・バード』の新ミックスがお気に入りです。

 その一方で、家族で洋楽を聴くのは私だけなので、肩身の狭い思いをしています。

 いつだったか、カーオーディオからボン・ジョヴィの曲が流れたとき、中学生の娘にはっきり言われてしまいました。

「ボリューム小さくして!」

 

 ドライブ中に洋楽が流れると、娘は決まって嫌がります。

 その日の夜、リビングで寛いでいた娘が鼻歌を歌っていました。おそらく無意識だったのでしょう。なんとそれは昼間聴いたボン・ジョヴィの曲のメロディでした。

 「うわ、気に入ってもうてるやん! 気に入って無意識に口ずさんでもうてるやん!」

 ついうれしくなって私がまくし立てると、娘はとても嫌そうな顔をしました。

 父親とはこうやって嫌われていくのかもしれません……(2026年2月)

著作品一覧

僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)

原進一(はらしんいち)

1948年生まれ。兵庫県神戸市出身。東京外国語大学卒。卒業と同時に全日空(株)に入社し,東京・大阪・福岡・鹿児島・オランダなどで勤務の後,2008年に定年退職。現在は無職で東京都在住。

第8回受賞作

アムステルダムの詭計

2016年4月 原書房

 戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)

著者よりひとこと

 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)

近 況

 近く入院するので、蒲団の上で安静にして気に入りの読書に耽っている。サリンジャーの「ライ麦畑で捕まえて」を読み返している。
 昨年は初孫が生まれ、六カ月になった。子供はよく動く。 私は抱っこできない。座ってミルクを飲ませることだけ許されている。孫は無条件に可愛い。おしっこをしてもあくびをしても、私の眼尻は下がりっぱなしだろう。長生きしてたら、ひょんなことから幸運に恵まれた。
 私は1月下旬に一週間程度入院する。前立腺肥大のため手術を受る。全身麻酔になる。術後目が覚めなかったら、どうしようと時々不安になる。家内は気楽に語りかける。
 「頻尿がおさまるんだから、いいんじゃない」
 「手術を受けるのは、オレだぞ。心配じゃないのか」とむっとしたら
 「今の医学はすすんでいるから、元気に退院できるわよ!」
 背中をポンポンと軽く叩かれる。(仕方ない。頑張るしかないか)(今年も一発屋作家と云われないよう頑張ろうか)
 ライ麦畑で遊ぶ子供たちが落っこちそうになると、サッと出て行って抱きしめる私の仕事。サリンジャーの本に遊びに出かけるとしよう。(2024年3月)

著作品一覧

アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)

社内スキャンダル 文芸社セレクション(2025年1月 文芸社)

義父の空砲 文芸社セレクション(2025年11月 文芸社)

神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

2015年5月 講談社

 20XX年の冬,スウェーデンのストックホルムではノーベル賞受賞者を祝う晩餐会が開かれていた。祝宴の最中,ノーベル医学・生理学賞の受賞者である浅井由希子博士は,壇上で紫斑性筋硬化症候群という奇病について語り始める。彼女の息子はその奇病に冒されていたのだ。参列者の誰もが息子の治療の為に研究し続けた母親の言葉に感動した。しかし,彼女は美談の果てにこんな言葉を解き放つ。「私の息子は自殺したのではありません。長峰高校の元一年B組の生徒達に苛め殺されたのです」と。こうして,天才医学者による人類史上,未曾有の復讐劇が幕を開けた。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

 今年度の受賞者様、おめでとうございます。 島田先生ならびに福ミス関係者の皆様、いつも素晴らしい授賞式を催していただき本当にありがとうございます。今年の受賞作がどんな作品なのか、とても楽しみです。

 近況報告ですが、特にこれといって以前と変わったことはありません。しいていえばインフレの進行とトランプ関税で日本の景気がどうなるか、気になるくらいでしょうか。去年も似たようなことを書いたと思うのですが、インフレは国民それぞれが対策をしないと生活に与える影響が大きいです。

 政府は通貨安を通じて債務残高の対GDP比率を減少させたいようです。通貨安政策は資産価格が上がるという利点もありますが、エリート以外は賃金の上昇率が追い付くことはほぼないので平均的な日本人の実質賃金は改善しないでしょう。それぞれのご家庭でインフレ対策をしておかないと今後はさらに厳しくなりそうです。

 またいつか皆様とお会いできたらうれしいです。 これからもばらのまち福山ミステリー文学新人賞が末永く続くことを祈っております。(2026年2月)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

 戦後80年、昭和100年、そして7月に何かが起こると騒がれた2025年が終わりました。私にとっては『ベンヤミン院長の古文書』を出させていただいてから、10年が経ちました。最近知り合った友人が私のことを調べ本を買ってくれたことを知りました。メモを取りながら読んでくれたとのこと、ありがたいかぎりです。

 さて私は昨年末から家系図作りにハマりました。市役所で取った戸籍謄本だけからでも、六代前の祖先が1810年生まれであったことが判明しました。文化七年、十一代将軍家斉の時代です。祖父母の名前さえよく知らなかった私が、今では100人以上のご先祖に囲まれているのを知り、戸籍のデータを眺めながら想像を膨らませています。(2026年2月)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)
木乃伊の都(2021年6月 光文社)

植田文博(うえだふみひろ)

3月5日生まれ。熊本県生まれ。東京都在住。

第6回受賞作

経眼窩式

2014年5月 原書房

「あんたは、最低だな」  古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。

著者よりひとこと

 欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)

近 況

 今年は前からやってみたかったドライブに挑戦した。東京から実家である熊本へ車での帰省。その距離、約1200キロ。

 渋滞のゴールデンウイーク中に出発。停滞と発進が延々と続く中、早い段階で音楽も聞き飽き、同じ景色の繰り返しに辟易する。

 ループする景色に、学生時代に青春18切符でも東京から熊本へ帰省したことを思い出す。あの時も電車の窓下台に肘をつき、うとうとしては目を覚まし、見慣れた森だと思って駅名を見ては愕然としていた。
 

 何も変わっていない。が、それはそれで楽しい経験だった。

 昨年は講談社さんでMRCショートショートを一つ書かせていただきました。 現在は長編二本を書いており、形にできればと思っています。 (2026年2月)

著作品一覧

経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)※アンソロジー収録
99の羊と20000の殺人(2019年8月 実業之日本社)*2017年8月原書房「心臓のように大切な」を改題・改稿
ニケを殺す(2023年5月 講談社)

川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。2005年第1回ハーレクインラブストーリーコンテスト優秀賞受賞。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

2014年11月 原書房

 戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

 新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 猫のヒゲ 今日も今日とて 春こたつ
     

 殻付きピーナツを食べながら、ふと、なぜにスヌーピーの漫画は『ピーナッツ』なのかな、と思いました。長いつきあいですが、初めての疑問です。作者が亡くなってからこちら(キティさん並みにコラボ商品が増え)頻繁に見かけるようになったせいでしょうか。

 調べてみると『ピーナッツ』というのは私の好きな千葉産南京豆ではなく、「つまらないもの、取るに足らないもの」という少々自虐的な意味合いなのでした。

 地味にショック……思えば、子どものころ『ピーナッツ』という題名すら知らず『チャーリー・ブラウンとゆかいな仲間たち』だと信じきっていました。ミッフィーを「うさこちゃん」と呼んでいた時代です。世の中すべてがエネルギッシュ、なのに、どこもかしこも緩かったなァ。

 はからずも「退化と衰退」を露呈してしまったはりぼて万博。喜々として行列する若者たちに本物の「進歩と調和」を見せてあげたい……ギスギスどろどろ、数ミリの油断も許さないネット社会にも、依然、なじめぬ私であります。

 が、じゃあ、かの時代に戻りますか? と問われると、うーん……。だって、存在しないんですよ、ネトフリも、駅の自動改札も、シャインマスカットも、家庭用食洗機も。

 そんな生活、とてもじゃないが無理。てんやわんやでごじゃりまするがな。 (2026年2月)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)※アンソロジー収録
ミズチと天狗とおぼろ月の夢(2021年8月 南雲堂)
十津川警部と七枚の切符(2022年11月 論創社)※アンソロジー収録
アインスタインと春待月の殺人(2024年12月 南雲堂)