島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第9回受賞作
第9回優秀作
2017年4月 講談社
早いもので久しぶりに福山を訪れてから一年になります。昨年語っていたプロットが、この近況報告を書いている数日前にようやく完成しました。今回もバイオホラーとサイエンスミステリーの中間のような作品で、非常に気持ちの悪い仕上がりとなっております。
男を食らう呪われた島と蟲を祀った神社、美しき巫女の末裔、生贄として捧げられた胎児たち、手足が溶けて死んだ男たちと蟲母神信仰。島のルーツを探った先に見つかる答えとは―
今回は今までの作品の中で最も犠牲者の数が多く、楽しんでい頂けると思います。今は次作に向けて良いアイデアがあり、早く形にしたいと考え中です。自然科学の世界は沢山の謎と魅力ある生物で溢れています。これからも、私にしか書けない作品を目指して精進していきたいです。
日々の生活では大型犬と子供たちに振り回されていますが、子供たちが私の作品を読めるようになりました。まあまあだね、次は? など感想を頂いております。はい、頑張ります。(2025年3月)
第9回準優秀作
2018年6月 原書房
2024年、長年の憧れだった初の「文庫本」が出版されました。文春文庫『神様のたまご 下北沢センナリ劇場の事件簿』連作短編集です。
急遽書くことになったあとがきは『合邦の密室』『仮名手本殺人事件』シリーズの劇評家名探偵・海神惣右介の「解説」という体裁で書くなど、とことん好きなことをやらせて頂いた、作者としては大満足、充実の一冊となりました。まだまだ続きの構想はありますので、シリーズ化が叶いますよう皆さま応援のほど、何卒よろしくお願いいたします。
また、昨年は「本」以外にも色々なことがありました。十一月には佐賀ミステリー作家トークイベント&サイン会にお手伝いに伺う予定だったのが、コロナ予後で欠席となった綾辻行人さんの代役で急遽登壇することになりました。竹本建治さん、京極夏彦さん、新井素子さん、稲羽……。今から考えると、よく引き受けたものだなと、我ながら恐ろしくなる安請け合いでした。また、文学フリマ東京で頒布の「阪大ビブリオ」誌第3号に『延命十句観音経』という掌編をお納めしました。同人イベントへの参加は初めてだったので、ゲスト売り子もさせて頂き、とても楽しい経験をさせて頂くことできました。是非また呼んで欲しいものです。
今は新たな「館もの」を書き始めています。引き続きご贔屓のほど。(2025年3月)
神様のたまご 下北沢センナリ劇場の事件簿(2024年4月 文春文庫) p>
第8回優秀作
2016年5月 光文社
神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。
もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)
ある晩、中一の娘に数学を教えてほしいと頼まれました。
「いいよ」
気軽に応じ、見ると方程式の問題でした。
「こんなの簡単やん」
そう豪語しつつ取り組むも、これがけっこう難しい。お酒を飲んでいたこともあり、適切な解法がなかなか見つかりません。隣には娘の顔。いぶかるでも期待するでもなく、無表情でじっとこちらを窺っています。
無言の圧力に耐えながらも格闘すること数分、ようやく答えにたどり着きました。
ああ、良かった! すっきりした!
父親の威厳をなんとか保てたことに安堵し、部屋を出ようとしたら、
「はあ⁉ なに自分で解いて勝手に満足してんのよ! 教えてよ! ていうか、なんで式とか自由に書き込んでんの?」
娘に怒られました。
本当だ。問題を解くことに夢中になるあまり、本来の目的をすっかり忘れていた……こんな調子では、娘に勉強を教えられるのも、せいぜいあと数年かもしれません。(2025年3月)
僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)
第8回受賞作
2016年4月 原書房
戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)
アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)
第7回受賞作
2015年5月 講談社
この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)
今年度の受賞者様、おめでとうございます。
島田先生ならびに福ミス関係者の皆様、貴重な機会を設けていただき本当にありがとうございます。
私が「たとえ、世界に背いても」で受賞させていただいてからもう十年以上経ちました。
一年、また一年と回数が増えるたびに新たな福ミス作家が増えてうれしいです。
近況報告ですが、特にこれといって以前と変わったことはありません。
最近、気になっていることがあるとすれば通貨のことでしょうか。
放っておいたら円の価値がどんどん下がってしまうのに、日本人はその弊害を認識していない方が多いようです。
国民全てが輸出関連の産業で働いているなら円安でいいのかもしれませんが現実は違いますから。
止まることのない円安のせいで物価がずいぶん高くなってしまいました。
以前より暮らしにくくなったなぁ、と思いつつ穏やかに暮らしています。
またいつか推理小説を出版したいです。
これからもばらのまち福山ミステリー文学新人賞が末永く続くことを祈っております。(2025年3月)
たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)
第7回優秀作
2015年11月 原書房
2024年の私個人のいちばん大きな出来事は、2016年夏以来続けてきたささやかな輸入雑貨の店を年末に閉じたことでした。
当初の店のオーナーは亡くなった夫。あれほど夢一杯でオープンしたのも束の間、わずか一年余りで病に倒れ扉の向こうの世界に行ってしまいました。迷った末に店を引き継ぐことを決めたものの「これは人生のどんな罰ゲームなんだろう?」と自問する日々でした。
ところが閉業を決め、いよいよその日を迎えたとき、ここ数年の私の「問い」に答えが降ってきたのです。言葉にするのは難しいのですが、「この気持ちを味わうためにこれまでの全ての日々があったのだ」と腑に落ちました。
年が明け、数年ぶりに風邪をひいて珍しく寝込みました。カウンセラーをしている知人に話したら興味深いことを教えてくれました。
依存症の人はその最中は風邪をひかないが、回復すると風邪をひくことがよくあるというのです。「だから風邪をひくのは悪いことじゃないよ」と。吹けば飛ぶような店でも、私にとっては大いなるプレッシャー、そしてアディクションでもあったのかもしれません。ともあれ、三足のわらじが二足になった今年、一足目(二足目?)の成果を出したいものです。(2025年3月)
ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房) 薬草とウインク(2017年4月 原書房) 木乃伊の都(2021年6月 光文社)
第6回受賞作
2014年5月 原書房
「あんたは、最低だな」 古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。
欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)
今年は旅行先で思いがけず景色に驚くことになりました。
ベタですがビーチです。
沖縄やハワイでここまで驚きを感じることはありませんでした。
想像で描いたような青と白。
天候の巡り合わせもあったのかもしれません。
こんなビーチが実在するのかと衝撃でした。
場所は宮古島です。
特に17END(ワンセブンエンド)と呼ばれるビーチが素晴らしかったです。
機会があればおすすめです。
今年はYouTubeアニメのプロットを二本担当させていただきました。
左記で検索すると出てきます。よろしければご視聴お願いします。
【ミステリー】招かれざる客のボール【スワロウテイル#14】
【ミステリー】推定不在【スワロウテイル#15】
(2025年3月)
経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)
99の羊と20000の殺人(2019年8月 実業之日本社)*2017年8月原書房「心臓のように大切な」を改題・改稿
ニケを殺す(2023年5月 講談社)
第6回優秀作
2014年11月 原書房
焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)
ミズチと天狗とおぼろ月の夢(2021年8月 南雲堂)
十津川警部と七枚の切符(2022年11月 論創社)
アインスタインと春待月の殺人(2024年12月 南雲堂)
第6回優秀作
2014年9月 光文社
ガソリンスタンドでバイトをしている野村修司は、アパートの新聞受けに謎のメモがはさまれていることに気付く。はじめは意味のわからない内容だったが、翌週以降も届くメモを見ると、それは小学校時代に起きた不幸な出来事を指しているようだ。仲間と拾った子犬を内緒で飼っていた秋葉ビルの『屋上の屋上』から、台風の日に仲間の一人、オッタが転落して亡くなったのだ。 バイト先のミステリー好きの店長にメモを見せると、オッタの死に不審を抱き、メモの主を突き止めようと言い出すのだが―。
「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」発足のニュースを耳にしたときから、生まれも育ちも福山市のわたしは、いつか絶対に応募しよう!と心に決めていました。そして初めてのミステリーというチャレンジでしたが、このような賞をいただき、大変嬉しく、幸せです。島田荘司先生、そして関係者の皆様に心より感謝いたします。 今後も創作と創造をライフワークに、書き続けたいと思います。 本当にありがとうございました!(2014年9月)
屋上と、犬と、ぼくたちと(2014年9月 光文社)
枯渇(2023年1月 Amazon Kindle出版)