受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

須田狗一(すだくいち)

1953年大阪市生まれ。IT会社に30年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら推理小説を執筆。

第9回受賞作

神の手廻しオルガン

 1942年、ナチスの国家保安部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから72年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。
 その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子中学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが……

著者よりひとこと

 ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために「福山ミステリー文学新人賞」に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います。

近 況

 とうとう私も七十歳を迎え、三人の子供たちが妻と私の古希を祝ってくれました。この歳になると、これからの先の人生がはっきりと見えてしまいます。家族に囲まれて幸せではあるのですが、曖昧さのない人生。先の人生の曖昧さが実は「希望」と呼ぶものではなかったのかなあ、などと考えてしまいます。かつては一時間でできたことが二時間かかり、二、三日でできたことが二週間かかったりします。出版される予定はなくとも書き溜めているミステリーも以前は一年に三篇は書けたものが、今は一年で一篇をものにするのが精いっぱいです。
 今やミステリーは私にとって日記のようなものかもしれません。ロシアのウクライナ侵攻や地球の温暖化など、人間の愚かさを痛感する日々。その日々を原稿に書き連ねています。
 今年も胸がザワザワする日々を過ごしそうです。(2023年3月31日)

著作品一覧

神の手廻しオルガン(2017年5月 光文社)
徳川慶喜公への斬奸状(2018年8月 光文社)

一田和樹(いちだかずき)

11 月6 日生まれ。東京都出身。バンクーバー在住。

第3回受賞作

檻の中の少女

2011年4月 原書房

「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺されたんです」 サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島のもとへ老夫婦が依頼にやってきた。自殺したとされる息子の死の真実を知りたいのだという。息子はミトラスに多額の金を振り込んでもいたらしい。ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。さまざまな情報を集め、やがて君島が「真相」を解き明かし、老夫婦の依頼に応えたとき、これまで隠されてきたほんとうの真実【エピローグ】が見え始める ─

著者よりひとこと

 このたびは素晴らしい賞を授けていただき、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。
島田先生、羽田市長をはじめ、関係者の皆様には感謝の言葉もありません。
妻や母、私を支えてくれた人々と喜びをわかちあいたいと思います。
私たちの社会は、インターネットを中心として大きく変わりつつあります。小説の書き方、読み方も変化しています。その中にあってゆるぎない存在感を持った、先駆けとなるような作品を書いてゆきたいと思います。
最後に福山市と、福山市の皆様のさらなるご発展をお祈りいたします。(2011年5月)

近 況

 2022年は小説を書かず、サイバー空間で起こっていることについて書いていました。一部はニューズウィーク日本版の連載にし、一部は書籍『ウクライナ侵攻と情報戦』にまとめ、一部はウェビナーでお話しし、多くは個別に調査や分析の依頼を受けた組織に提出しました。
 世界最高の知能が集結して空前絶後、前代未聞のトリックをサイバー空間で仕掛け合っているのを見ると、猛然とその謎に挑戦したくなってしまいます。昔に書いた短編小説『サイバー空間はミステリを殺す』そのまんまの展開になっています。この短編小説は講談社の『ベスト本格ミステリ2016』に収録されているので興味ある方はご覧になってください。デビュー作で主人公を演じた君島の最後の出演作となっています。
 2023年は国際政治学、サイバーセキュリティ、計算社会学、メディア論など7人の専門家のみなさんと共同で本を刊行する予定です。まだ、しばらくは小説に戻れそうにありません。 (2023年3月31日)

著作品一覧

檻の中の少女(2011年5月 原書房)
サイバーテロ 漂流少女(2012年2月 原書房)
キリストゲーム(2012年4月 講談社)
式霊の杜(2012年6月 講談社)※筆名「いちだかづき」
式霊の杜 愚者の約束(2013年3月 講談社)※筆名「いちだかづき」
サイバークライム 悪意のファネル(2013年2月 原書房)
サイバーセキュリティ読本(2013年7月 原書房)
第1巻こちら、網界辞典準備室!『電網恢々疎にして漏らさず網界辞典』準備室! (2013年10月 技術評論社・電子書籍)
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語(2013年10月 技術評論社)
絶望トレジャー(2014年11月 原書房)
天才ハッカー安部響子と五分間の相棒(2015年1月  集英社文庫)
ネットの危険を正しく知るファミリー・セキュリティ読本」(2015年3月 原書房)
マンガで知るサイバーセキュリティ オーブンレンジは振り向かない(2015年3月 原書房)
サイバーミステリ宣言!(2015年7月 株式会社KADOKAWA:共著)
個人情報ロンダリングツール=パスワードリスト攻撃シミュレータの罠 工藤伸治の事件簿番外編(技術評論社・電子書籍)
アンダーグラウンドセキュリティー1(カドカワ・電子書籍)
ノモフォビア(キリック・電子書籍)
ベスト本格ミステリ2016 収録「サイバー空間はミステリを殺す」(アンソロジー 2016年6月  講談社)
女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険(2016年7月 集英社)
原発サイバートラップ:リアンクール・ランデブー(2016年8月 原書房)
サイバー戦争の犬たち(2016年11月 祥伝社)
サイバーセキュリティ読本【完全版】ネットで破滅しないためのサバイバルガイド(2017年5月 星海社)
御社のデータが流出していますー吹鳴寺籐子のセキュリティチェック(2017年6月 早川書房)
ウルトラハッピーディストピアジャパン 人口知能ハビタのやさしい侵略(2017年7月 星海社)
犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術(2017年8月 角川新書)
公開法廷 一億人の陪審員(2017年10月 原書房)
内通と破滅と僕の恋人―珈琲店ブラックスノウのサイバー事件簿(2017年11月 集英社)
大正地獄浪漫1(2018年8月 星海社)
原発サイバートラップ(2018年8月 集英社文庫)
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器(2018年11月 角川新書)
大正地獄浪漫2(2018年12月 星海社)
天才ハッカー安部響子と2048人の犯罪者(2019年1月 集英社)
大正地獄浪漫3(2019年8月 星海社)
義眼堂 あなたの世界の半分をいただきます(2020年2月 角川書店)
新しい世界を生きるためのサイバー社会用語辞典(2020年3月 原書房)
大正地獄浪漫4(2020年3月 星海社)
ゆびさき怪談(アンソロジー2021年7月 PHP研究所)
最新!世界の常識検定(2021年11月 集英社)
ウクライナ侵攻と情報戦(2022年7月 扶桑社)

植田文博(うえだふみひろ)

3月5日生まれ。熊本県生まれ。東京都在住。

第6回受賞作

経眼窩式

2014年5月 原書房

「あんたは、最低だな」  古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。

著者よりひとこと

 欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)

近 況

 今年も正月から雪を求めて、東京から万座温泉へ。
 雪の怖さを知らない九州出身だからだろう。雪はいつ見てもわくわくする。そのため、ここ数年、冬になると草津や万座などの雪深い場所を目指す。
 落ちてくる雪を見上げながらつかる露天風呂。冷たくなった頬に、手ですくった湯をかける気持ちよさは格別だ。また来年もと思う。

 昨年はいくつか仕事をいただき、今年3月からローンチするプロジェクトで、動画共有サイトのアニメーション用のプロット作成に参加させていただきました。
 小説の方は、時間がかかりましたが、今年の5月に刊行予定となっています。
 それぞれに楽しさの違いがあって新鮮です。また書けるよう全力で取り組んでいきます。 (2023年3月31日)

著作品一覧

経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)
99の羊と20000の殺人(2019年8月 実業之日本社)*2017年8月原書房「心臓のように大切な」を改題・改稿

金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

 こんにちは。
 第7回優秀作をいただいた金澤マリコと申します。
 これまでに『ベンヤミン院長の古文書』(原書房)・『薬草とウインク』(原書房)・『木乃伊の都』(光文社)の三冊を上梓させていただきました。
 いずれも好きな歴史のジャンルにかかわる作品で、このような形で出版できたことは幸せなことだったと感慨深く振り返っています。
 2022年は日本にとっても世界にとっても激動の一年だったように思います。変わりつつある時代を生きている実感が私にもありました。
 今年は新しい作品の構想を練ること、たくさんの出会いをもたらしてくれたレイキの次の段階に進むこと、もっと心をオープンにして自分の可能性を信じること……を目標にしていきたいと思います。
あ、それから北海道に海鮮丼を食べに行きたいです!(2023年3月31日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)
木乃伊の都(2021年6月 光文社)

叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

2010年3月 光文社

 介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

 この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

 最近、発達障害や適応障害という言葉をよく耳にします。
 そして気付きます。職場には、明らかにこれら症状を持つ人が多くいるのだと。本人は生き辛さを、周囲は苛立ちを感じ色々と上手くいきません。でも管理者たちは、苦労して現場を統率し、なんとか一日を凌ぐのです。でも特別なことではないとも感じます。自分だって他人と距離を測れず衝突し、上手く仕事が組み立てられず、周囲に助けられてばかりいるのですから。つまり、皆がグレーの領域にいるように思えるのです。
 発達障害と適応障害は別ものですが、どちらも精神的・物理的ストレスが原因らしい、と考えるうち、子供の頃に見た映画を思い出しました。“大気にも海にも毒が混じり、子供たちは人工ジュースを飲んでいる”
 そんな未来は困ります。でもPM2.5にマイクロプラスチック、そんな未来は実現しました。しかも戦争に伝染病、高齢化社会に人口減少、貧困に物価高騰、毎日ニュースで流されるのは恐ろしいことばかり。
 こうしたストレスそのもののような内容に日々曝されて、しかもコロナ禍、今の子供たちは他人との接触を制限もされ、着実に発達障害・適応障害予備軍として育てられ、永遠に社会の歪みは直せないのでは、などと、社会に適応出来ない小男が勝手に憂いております。(2023年3月31日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社文庫)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)
美しすぎる教育評論家の依頼 よろず請負業さくら屋(2019年6月 光文社)

神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

2015年5月 講談社

 20XX年の冬,スウェーデンのストックホルムではノーベル賞受賞者を祝う晩餐会が開かれていた。祝宴の最中,ノーベル医学・生理学賞の受賞者である浅井由希子博士は,壇上で紫斑性筋硬化症候群という奇病について語り始める。彼女の息子はその奇病に冒されていたのだ。参列者の誰もが息子の治療の為に研究し続けた母親の言葉に感動した。しかし,彼女は美談の果てにこんな言葉を解き放つ。「私の息子は自殺したのではありません。長峰高校の元一年B組の生徒達に苛め殺されたのです」と。こうして,天才医学者による人類史上,未曾有の復讐劇が幕を開けた。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

 今年度の受賞者様、おめでとうございます。
 島田先生ならびに福ミス関係者の皆様、貴重な機会を設けていただき本当にありがとうございます。
 今年は受賞作はなく、優秀賞のみと伺いました。授賞式が催されないのは残念です。
 近況報告とのことですが、特にこれといってありません。
 変化といえば母の知人から雌の黒猫を預かっているくらいでしょうか。
 ミステリーのトリックを考えながら穏やかに暮らしております。
 書き終えた推理小説が増えてきたので、いつかまた出版したいです。
 これからもばらのまち福山ミステリー文学新人賞が末永く続くことを祈っております。 (2023年3月31日)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

2014年11月 原書房

 戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

 新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 また、本気で金魚を飼い始めました。幼い頃から必ず水槽があって、亀、フナ、金魚、ディスカスからふぐ、海水やっこまで、ありとあらゆる水生生物とともに、水神に守られ(雨女ということ)、暮らしてきたのです。
 現在、大水槽三個、メダカ鉢二個、ドジョウ水槽一個。ドジョウはとってもフレンドリーで優しい……おっと、こちらは語り始めると止まりませんので、またいずれ。
 結局、私のアクアライフは金魚に始まり、金魚に終わる感じです。朱、白、モザイクなど、らんちう型の獅子頭たちが、ひらひら華やかに舞う姿はまさに眼福。
 金魚というのは、自然界にまったく存在しない生き物なのです。儚く美しいくせに貪欲で、そのすべてがわたし好み。本格ミステリと同じ「何か」がある気がいたします。
 食べ過ぎるとすぐ病気になりますが、本来、丈夫な子たち。ちゃんとお世話すれば、軽く十年は生きますよ。 (2023年3月31日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)
ミズチと天狗とおぼろ月の夢(2021年8月 南雲堂)
十津川警部と七枚の切符(2022年11月 論創社) 

嶋戸悠祐(しまとゆうすけ)

1977年1月20日生まれ。北海道出身。北海道在住。

第3回優秀作

キョウダイ

2011年8月 講談社

 主人公「私」は、妻と娘に恵まれ、仕事も順調で幸せな日々を送っていた。が、妻が持ち出した小学校時代のアルバムが人生を狂わせはじめる。それは過去を封印していた人間にとって存在してはならぬものだった。その日から恐ろしい幻影に襲われ精神的に追い詰められていった「私」は過去と対峙することに――。当時「私」には双子の兄弟がおり、北海道M市のボロアパート群、通称餓死町で悲惨な生活を送っていた......。

著者よりひとこと

 このたびは第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出いただき誠にありがとうございます。
 私にとって島田先生の作品というのは本当に特別なものでした。十代の頃に島田作品と出合い、貪るように読み耽りました。目くるめくような衝撃を受けました。そして、はじめて自分で小説を書いてみたいと強く思いました。
 私は島田先生の作品に出会っていなければ小説を書くことはなかったと思います。その島田先生に優秀作として選出いただき、これ以上の栄誉はありません。とにかくこれからはその栄誉に恥じぬよう24時間、いつでも頭のどこかでミステリーのことを考え、奇想を膨らませ、研鑽を重ね、この道をどこまでも突き進む覚悟でおります。そしていつかこの賞の価値を高め、本格ミステリーというジャンルを牽引するような作家になること。大それた考えと思われるかもしれませんがデビューできた暁には、これを目標として邁進いたします。(2011年5月)

近 況

 嶋戸悠祐です。昨年は4月にひさしぶりの作品となる『裏家電』を講談社から出版することができました。
 そして今年の2月には同じ家電量販店シリーズといえる『漂流都市』を同じく講談社から出版することができました。
 次はまた家電量販店シリーズになるかかはわかりませんが、読者がドキドキワクワクするような面白い作品を書けるよう頑張ります。応援よろしくお願い致します。 (2023年3月31日)

著作品一覧

キョウダイ(2011年8月 講談社)
セカンドタウン(2013年8月 講談社)
ギキョウダイ(2017年2月 講談社)
裏家電(2022年3月 講談社)
漂流都市(2023年2月 講談社)

高林さわ(たかばやしさわ)

1945 年5月3日生まれ。千葉県出身。中学教師、塾自営の後引退。1981年「小説現代新人賞」受賞。

第5回受賞作

バイリンガル

2013年5月 光文社

 アメリカ人の夫と離婚した永島聡子は、日本に帰国し、予備校の講師をしながら一人息子を育てた。ある日、沢田仁奈という女性が聡子のもとを訪ね、自分の両親が亡くなるきっかけとなった、30年前にインディアナ州ラフィエットで起きた誘拐殺人事件の内容を話して欲しいと頼む。仁奈には親切にしなければと思いつつも、乗り気になれずにいた聡子だが、仁奈の日本での生い立ちや生活を聞き、事件の全貌を語り出す。

著者よりひとこと

 「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という大きな賞をいただくことができまして、ほんとうにありがたく、感謝しております。
 島田先生はじめ、選んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。30年前に賞をいただいた後、長いブランクがありましたが、諦めずに書き続けてよかったです。書く場所を再び与えていただいたのですから、頑張らねば、と思っております。どうもありがとうございました。。(2012年10月)

近 況

 2022年、前半は小説宝石五月号に、短編「猫とフライパン」を載せていただきました。読んだ知り合いから連絡が来ました。実は病気なのか死んじゃったのかとあちこちで思われていたようで、おかげさまで生きててよかった、と思う日々になりました。
 後半、6月に土地関係で司法書士さんに依頼したのですが、この人、裁判好きで、四年前に成年後見人を頼んだ際に裁判に臨み、なんと大負けをしたのです。私たちは膨大な(!)損害を被りました。なので、裁判なんかしないと断ったところ、腹を立てたらしく、暴力的な動きをされて、とても怖い目に遭いました。12月にやっと辞めてもらいましたが、この間、仕事をしてくれず、私は丸々半年間、棒に振りました。腹、立ててます。
 今年は良い年にしたいものです。11月には、フロリダに住む友人が孫を連れて観光に来るとのこと。この友人とは、高二のときに文通から始まりました。彼女は二度来日して私と一緒に住み、私もアメリカで彼女の家庭や親戚にずいぶん世話になりました。今度は孫にバトンタッチ。孫はアニメ大好きで、日本語を独習しているとのことです。 (2023年3月31日)

著作品一覧

バイリンガル(2013年5月 光文社/2018年4月  光文社文庫)

知念実希人(ちねんみきと)

1978年10月12日沖縄県生まれ。東京都在住。東京慈恵会医科大学卒。2004年から医師として勤務。日本内科学会認定医。

第4回受賞作

誰がための刃 レゾンデートル

2012年4月 講談社

 自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴は、自暴自棄となり殺人を犯してしまう。そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いに挑む。

著者よりひとこと

 このたびは福山ミステリー文学新人賞という素晴らしい賞を受賞させて頂き、島田先生を初め関係者の皆様には心より感謝しております。
 応募の際は、この作品が「本格」を求めている福ミスに相応しいものなのか何日も迷いましたが、福ミスの選考方法や最終選考まで残れば島田先生に選評を頂けることに惹かれ、思い切って応募しました。受賞を知った時はすぐには信じられなくて一瞬呆然とした後、天にも昇るような気持ちになりました。
 今回の作品は8年間の医療現場での経験を詰め込むことで、末期癌に冒された主人公から見た世界、そしてその生き様をできるだけリアルに描くように努めました。読んでくださった皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
 今後は賞の名に恥じぬよう精進し、読者の方に喜んで頂ける小説を書いてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(2012年5月)

近 況

 コロナ禍が始まって三年経ち、だいぶ致死率も下がり、また診療体制も確率してきたので、発熱外来を担っている医師としての仕事はだいぶ落ち着いてきた。
 去年は地上波で初めて原作を連続ドラマ化した『祈りのカルテ』が放映され、好評を頂いたので嬉しく思っている。映像化は脚本のチェックやプロットの執筆など、かなり大変なのだが、自分が創り出したストーリーを俳優や監督、撮影スタッフ、テレビ局員など多くの方々がかかわって新しい形にしてくれるのはとてもやりがいがある。
 今後も映像化の予定は続いているので、これを機に作家として、そしてストーリーテラーとしてさらに飛躍していきたいと思う。
 コロナ禍も落ち着いてきたので、来年こそは受賞者が出て、また福山で受賞パーティーができることを祈っています。(2023年3月31日)

著作品一覧

誰がための刃 レゾンデートル(2012年4月 講談社)
ブラッドライン(2013年7月 新潮社)
優しい死神の飼い方(2013年11月 光文社/2016年5月 光文社文庫)
天久鷹央の推理カルテ(2014年10月 新潮社)
仮面病棟(2014年12月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟(2015年3月 新潮社)
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ(2015年5月 幻冬舎)
天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア(2015年6月 新潮社)
黒猫の小夜曲(セレナーデ)(2015年7月 光文社/2018年1月 光文社文庫)
スフィアの死天使 ―天久鷹央の事件カルテ―(2015年8月 新潮社)
神酒クリニックで乾杯を(2015年10月  KADOKAWA)
天久鷹央の推理カルテⅣ 悲恋のシンドローム(2016年2月 新潮社)
淡雪の記憶 神酒クリニックで乾杯を(2016年4月  角川文庫)
白銀の逃亡者(2016年6月 幻冬舎)
幻影の手術室 ー天久鷹央の事件カルテー(2016年9月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 1巻(コミック)(2016年9月 新潮社)
あなたのための誘拐(2016年9月 祥伝社)
時限病棟(2016年10月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト(2017年3月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 2巻(コミック)(2017年3月 新潮社)
屋上のテロリスト(2017年4月 光文社)
崩れる脳を抱きしめて(2017年9月 実業之日本社)
螺旋の手術室(2017年10月 新潮社)
甦る殺人者-天久鷹央の事件カルテー(2017年11月 新潮社)
祈りのカルテ(2018年3月 KADOKAWA)
火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (2018年8月 新潮文庫nex)
ひとつむぎの手(2018年9月 新潮社)
神のダイスを見上げて(広島版 2018年11月 光文社/全国版 2018年12月 光文社)
 レフトハンドブラザーフッド(2019年3月 文藝春秋)
 魔弾の射手:天久鷹央の事件カルテ(2019年8月 新潮社)
ムゲンのi(上・下)(2019年9月 双葉社)
誘拐遊戯(2019年10月 実業之日本社)
十字架のカルテ(2020年3月 小学館)
傷痕のメッセージ(2021年3月 KADOKAWA)
硝子の塔の殺人(2021年7月 実業之日本社)
久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ(2021年8月 新潮社)
真夜中のマリオネット(2021年12月 集英社)
死神と天使の円舞曲(ワルツ)(2022年5月 光文社)
生命の略奪者ー天久鷹央の事件カルテー(2022年9月 新潮社)
機械仕掛けの太陽(2022年10月 文藝春秋)