島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第6回受賞作
2014年5月 原書房
「あんたは、最低だな」 古ぼけたアパートの一室で再会した父親は、日常生活もままならない変わり果てた姿となっていた――。遠田香菜子は、そこで偶然出会った青年とともにアパートの調査を開始する。そんな彼らに、ある男が近づいていた。そしてそれを、ある女が監視していた。やがてふたりは、凶悪事件の壮大な陰謀と、初めて芽生えた感情の渦に呑み込まれてゆく。
欲するままに書き続け、自身の中にあるものは、裏打ちのない自信としつこさだけでした。そんな中で自分という存在を見つけていただいた皆様に、心から感謝しています。
今後は島田先生や編集者の方々の助言を得て、読んでよかったと感じていただけるものを作っていけたらと思っています。(2014年5月)
経眼窩式(2014年5月 原書房)
エイトハンドレッド(2015年5月 原書房)
心臓のように大切な(2017年8月 原書房)
99の羊と20000の殺人(2019年8月 実業之日本社)*2017年8月原書房「心臓のように大切な」を改題・改稿
第7回優秀作
2015年11月 原書房
ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房) 薬草とウインク(2017年4月 原書房) 木乃伊の都(2021年6月 光文社)
第2回受賞作
2010年3月 光文社
この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)
伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社文庫)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)
美しすぎる教育評論家の依頼 よろず請負業さくら屋(2019年6月 光文社)
第7回受賞作
2015年5月 講談社
この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)
たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)
第6回優秀作
2014年11月 原書房
焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)
ミズチと天狗とおぼろ月の夢(2021年8月 南雲堂)
十津川警部と七枚の切符(2022年11月 論創社)
第3回優秀作
2011年8月 講談社
主人公「私」は、妻と娘に恵まれ、仕事も順調で幸せな日々を送っていた。が、妻が持ち出した小学校時代のアルバムが人生を狂わせはじめる。それは過去を封印していた人間にとって存在してはならぬものだった。その日から恐ろしい幻影に襲われ精神的に追い詰められていった「私」は過去と対峙することに――。当時「私」には双子の兄弟がおり、北海道M市のボロアパート群、通称餓死町で悲惨な生活を送っていた......。
このたびは第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出いただき誠にありがとうございます。
私にとって島田先生の作品というのは本当に特別なものでした。十代の頃に島田作品と出合い、貪るように読み耽りました。目くるめくような衝撃を受けました。そして、はじめて自分で小説を書いてみたいと強く思いました。
私は島田先生の作品に出会っていなければ小説を書くことはなかったと思います。その島田先生に優秀作として選出いただき、これ以上の栄誉はありません。とにかくこれからはその栄誉に恥じぬよう24時間、いつでも頭のどこかでミステリーのことを考え、奇想を膨らませ、研鑽を重ね、この道をどこまでも突き進む覚悟でおります。そしていつかこの賞の価値を高め、本格ミステリーというジャンルを牽引するような作家になること。大それた考えと思われるかもしれませんがデビューできた暁には、これを目標として邁進いたします。(2011年5月)
キョウダイ(2011年8月 講談社)
セカンドタウン(2013年8月 講談社)
ギキョウダイ(2017年2月 講談社)
裏家電(2022年3月 講談社)
漂流都市(2023年2月 講談社)
第5回受賞作
2013年5月 光文社
アメリカ人の夫と離婚した永島聡子は、日本に帰国し、予備校の講師をしながら一人息子を育てた。ある日、沢田仁奈という女性が聡子のもとを訪ね、自分の両親が亡くなるきっかけとなった、30年前にインディアナ州ラフィエットで起きた誘拐殺人事件の内容を話して欲しいと頼む。仁奈には親切にしなければと思いつつも、乗り気になれずにいた聡子だが、仁奈の日本での生い立ちや生活を聞き、事件の全貌を語り出す。
「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という大きな賞をいただくことができまして、ほんとうにありがたく、感謝しております。 島田先生はじめ、選んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。30年前に賞をいただいた後、長いブランクがありましたが、諦めずに書き続けてよかったです。書く場所を再び与えていただいたのですから、頑張らねば、と思っております。どうもありがとうございました。。(2012年10月)
バイリンガル(2013年5月 光文社/2018年4月 光文社文庫)
1978年10月12日沖縄県生まれ。東京都在住。東京慈恵会医科大学卒。2004年から医師として勤務。日本内科学会認定医。
第4回受賞作
2012年4月 講談社
自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴は、自暴自棄となり殺人を犯してしまう。そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いに挑む。
このたびは福山ミステリー文学新人賞という素晴らしい賞を受賞させて頂き、島田先生を初め関係者の皆様には心より感謝しております。
応募の際は、この作品が「本格」を求めている福ミスに相応しいものなのか何日も迷いましたが、福ミスの選考方法や最終選考まで残れば島田先生に選評を頂けることに惹かれ、思い切って応募しました。受賞を知った時はすぐには信じられなくて一瞬呆然とした後、天にも昇るような気持ちになりました。
今回の作品は8年間の医療現場での経験を詰め込むことで、末期癌に冒された主人公から見た世界、そしてその生き様をできるだけリアルに描くように努めました。読んでくださった皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
今後は賞の名に恥じぬよう精進し、読者の方に喜んで頂ける小説を書いてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(2012年5月)
コロナ禍が始まって三年経ち、だいぶ致死率も下がり、また診療体制も確率してきたので、発熱外来を担っている医師としての仕事はだいぶ落ち着いてきた。
去年は地上波で初めて原作を連続ドラマ化した『祈りのカルテ』が放映され、好評を頂いたので嬉しく思っている。映像化は脚本のチェックやプロットの執筆など、かなり大変なのだが、自分が創り出したストーリーを俳優や監督、撮影スタッフ、テレビ局員など多くの方々がかかわって新しい形にしてくれるのはとてもやりがいがある。
今後も映像化の予定は続いているので、これを機に作家として、そしてストーリーテラーとしてさらに飛躍していきたいと思う。
コロナ禍も落ち着いてきたので、来年こそは受賞者が出て、また福山で受賞パーティーができることを祈っています。(2023年3月31日)
誰がための刃 レゾンデートル(2012年4月 講談社)
ブラッドライン(2013年7月 新潮社)
優しい死神の飼い方(2013年11月 光文社/2016年5月 光文社文庫)
天久鷹央の推理カルテ(2014年10月 新潮社)
仮面病棟(2014年12月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟(2015年3月 新潮社)
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ(2015年5月 幻冬舎)
天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア(2015年6月 新潮社)
黒猫の小夜曲(セレナーデ)(2015年7月 光文社/2018年1月 光文社文庫)
スフィアの死天使 ―天久鷹央の事件カルテ―(2015年8月 新潮社)
神酒クリニックで乾杯を(2015年10月 KADOKAWA)
天久鷹央の推理カルテⅣ 悲恋のシンドローム(2016年2月 新潮社)
淡雪の記憶 神酒クリニックで乾杯を(2016年4月 角川文庫)
白銀の逃亡者(2016年6月 幻冬舎)
幻影の手術室 ー天久鷹央の事件カルテー(2016年9月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 1巻(コミック)(2016年9月 新潮社)
あなたのための誘拐(2016年9月 祥伝社)
時限病棟(2016年10月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト(2017年3月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 2巻(コミック)(2017年3月 新潮社)
屋上のテロリスト(2017年4月 光文社)
崩れる脳を抱きしめて(2017年9月 実業之日本社)
螺旋の手術室(2017年10月 新潮社)
甦る殺人者-天久鷹央の事件カルテー(2017年11月 新潮社)
祈りのカルテ(2018年3月 KADOKAWA)
火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (2018年8月 新潮文庫nex)
ひとつむぎの手(2018年9月 新潮社)
神のダイスを見上げて(広島版 2018年11月 光文社/全国版 2018年12月 光文社)
レフトハンドブラザーフッド(2019年3月 文藝春秋)
魔弾の射手:天久鷹央の事件カルテ(2019年8月 新潮社)
ムゲンのi(上・下)(2019年9月 双葉社)
誘拐遊戯(2019年10月 実業之日本社)
十字架のカルテ(2020年3月 小学館)
傷痕のメッセージ(2021年3月 KADOKAWA)
硝子の塔の殺人(2021年7月 実業之日本社)
久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ(2021年8月 新潮社)
真夜中のマリオネット(2021年12月 集英社)
死神と天使の円舞曲(ワルツ)(2022年5月 光文社)
生命の略奪者ー天久鷹央の事件カルテー(2022年9月 新潮社)
機械仕掛けの太陽(2022年10月 文藝春秋)
第8回受賞作
2016年4月 原書房
戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)
アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)
第1回受賞作
2009年3月 講談社
アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。
本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)
玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)