受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

松本英哉(まつもとひでや)

1974年生まれ。兵庫県出身。兵庫県在住。

第8回優秀作

僕のアバターが斬殺ったのか

2016年5月 光文社

 神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。

著者よりひとこと

 もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)

近 況

 連作短編を仕上げるべく、短編やプロットを編集部にせっせと送っています。
 プライベートでは、小六の娘の反抗期が始まりつつあります。ときどき生意気なことを言ってきます。
 ある日、家族でクルマに乗っていたときのこと。車内ではいつも、私、妻、娘それぞれの好きな曲がランダムで流れるようにしています。私の好みは洋楽。ただ娘は洋楽が苦手らしく、いつも嫌そうな顔をします。その日も私のお気に入りが流れると、娘がうんざりしたように言いました。 「またポール・マッカートニー? 違うのに変えてよ」
 その曲は、妻との結婚式で流した思い入れのあるものでした。この曲をきっかけに、娘が少しでも洋楽に興味を持ってくれれば……そんな願いを込めて私は言いました。
「だけどこれ、ママとの結婚式でも流した思い出の曲なんやで」
 私がそう話すと、娘は驚いたように妻を見て言いました。
「え? ママ、これ結婚式で流されたん? 流されてどう思った?」

 いや、流された、て…(2023年3月31日)

著作品一覧

僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)

深木章子(みきあきこ)

1947年8月2日生まれ。東京都出身。東京都在住。

第3回受賞作

鬼畜の家

2011年4月 原書房

 「おとうさんはおかあさんが殺しました。おねえさんもおかあさんが殺しました。おにいさんはおかあさんと死にました。わたしはおかあさんに殺されるところでした……」 保険金目当てで家族に手をかけてゆく母親。その母親も自動車もろとも夜の海に沈み、末娘だけが生き残ることになった。 母親による巧妙な殺人計画、娘への殺人教唆、資産の収奪…… 信じがたい「鬼畜の家」の実体が、娘の口から明らかにされてゆく。

著者よりひとこと

 人は実現可能性のない夢は見ない……この言葉を知ってはいましたが、こんなにも早く夢が実現するとは思いませんでした。
人生は本当に何が起きるかわからないもので、体が不自由になり、60歳で現役を退くまでは、推理小説とはあくまでも「読む」もので、「書く」などという離れ技は、自分とは別世界の特殊な頭脳の持主がなさることだと思い込んでおりました。
 振り返れば、昨年の10月、福ミス受賞内定の電話をいただいて以来、未知との遭遇の連続です。何とか、無事この日を迎えることができましたが、今後の厳しい道程を考えますと、身が引き締まると同時にそら恐ろしい気がいたします。
 こんな頼りない新人作家ではございますが、あたたかい目で見守っていただけましたら幸いです。どうか、宜しくお願い申し上げます。(2011年5月)

近 況

 コロナ禍による引きこもり生活もこれだけ長引くと、インドア派の私もさすがに心身ともに限界に近づきつつあります。
 予想だにしていなかったこの世界規模の異常事態に、ふつうであることがいかに貴重なことだったか、これまであたりまえだと思っていたものがいかにありがたいものだったかを、つくづくと実感しています。 (2023年3月31日)

著作品一覧

鬼畜の家(2011年5月 原書房/2014年4月 講談社)
衣更月家の一族(2012年3月 原書房/2015年3月 講談社文庫)
螺旋の底(2013年3月 原書房/2016年3月 講談社文庫)
殺意の構図 探偵の依頼人(2013年12月 光文社/2016年9月 光文社文庫)
敗者の告白 弁護士睦月怜の事件簿(2014年10月  KADOKAWA/2017年8月 角川文庫)
交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー(2015年6月 光文社/2018年4月 光文社文庫)
ミネルヴァの報復(2015年8月 原書房/2018年9月  角川文庫)
猫には推理がよく似合う(2016年9月 KADOKAWA/2019年8月 角川文庫)
敗者の告白(2017年8月 角川書店)
消人屋敷の殺人(2017年10月 新潮社/2020年5月  新潮文庫)
消えた断章(2018年3月 光文社/2021年3月 光文社文庫)
極上の罪をあなたに(2019年9月 KADOKAWA)
欺瞞の殺意(2020年2月 原書房)
罠(2021年1月 角川文庫)

水生大海(みずきひろみ)

三重県出身、愛知県在住。2014年「五度目の春のヒヨコ」で第67回日本推理作家協会賞(短編部門)候補。

第1回優秀作

少女たちの羅針盤

2009年7月 原書房

 短編ホラー映画主演女優としてロケ現場にやってきたマリア。そこで監督に意味ありげに言われる。「きみ、羅針盤にいた子だよね」と。マリアに忘れさりたい過去が甦る。伝説の女子高生劇団「羅針盤」。監督はさらに言う。「一人、死んでるんだよね」 羅針盤はメンバーの死と共に活動を停止した。マリアが殺したのだった。監督はいったいどこまで知っているのか。疑心はふくらむ。 そして物語は四年前、羅針盤の誕生と死へと移ってゆく。
 本作は、2010年に映画化が決定され、福山市でロケを行い、2011年5月に全国公開されました。
 また、本作の続編となる『かいぶつのまち』も2010年7月に原書房より出版されています。

著者よりひとこと

 このたびは、第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出していただき、ありがとうございます。島田先生をはじめ、事務局の皆さま、関係者の皆さまには大変お世話になりました。
 最終選考に残れば島田先生に読んでいただくことができる、そう思ってお送りした作品が思いも寄らない栄誉を受け、今もまだ戸惑いの中におります。
 小学校のころ、家が遠かったわたしは友人たちと別れた後、図書室で借りた本の続きを空想しながら通学していました。なかでもミステリーは謎あり冒険ありと魅力に満ちた物語でした。あのころのように、続きが気になるワクワクとした物語を作り出し、誰かに楽しんでいただきたいと考えております。
 今後も精進を続け、読む人の心をとらえて離さない物語を作り続けたい、書き続けることで優秀作受賞にお応えしたい、そう思っております。(2009年3月)

近 況

 愛知県に住んでいると、数年に一度は近隣が大河ドラマの舞台になります。今年は徳川家康が前半生を過ごした岡崎市が序盤でクローズアップ。福山市の親善友好都市でもありますね。
 家康を演じる松本潤氏がロケ地訪問などしたらしく、地元テレビが盛り上がっています。
小説は映像媒体と違って、頭の中で風景を作り上げることもできますが、次に出す作品コード名「M」は、「場所」が重要になることもあり何回かロケハンをしてきました。といっても、地元の名古屋なんですが。ここに死体を捨てられるのでは……なんて悪いことを考えていたら、見事にすっころんでしまいました(苦笑)。
 2022年は『ランチ探偵 彼女は謎に恋をする』実業之日本社文庫、『お客さまのご要望は 設楽不動産営業日誌』朝日文庫、『最後のページをめくるまで』双葉文庫、『女の敵には向かない職業』光文社単行本を、また2023年年明け早々に『希望のカケラ 社労士のヒナコ』文春文庫を出しました。
 今はコード名「M」のゲラを待ちながら、その次の構想を練っているところです。どの本も楽しんでいただけると思います。
 今年もよろしくお願いいたします! (2023年3月31日)

著作品一覧

少女たちの羅針盤(2009年7月 原書房/2011年4月 原書房/2012年9月 光文社)
かいぶつのまち(2010年7月 原書房/2013年10月  光文社)
善人マニア(2011年8月 幻冬舎)
夢玄館へようこそ(2011年11月 双葉社/2015年3月 双葉社)
転校クラブ 人魚のいた夏(2012年3月 原書房)
てのひらの記憶(2012年10月 PHP研究所)
熱望(2013年4月 文藝春秋/2020年9月 文春文庫)
エール!2 収録「五度目の春のヒヨコ」(アンソロジー 2013年4月 実業之日本社)
※同短編は、ザ・ベストミステリーズ2014 (推理小説年鑑 2014年5月 講談社)にも収録
猫とわたしの七日間 収録「まねき猫狂想曲」(アンソロジー 2013年11月 ポプラ社)
転校クラブ シャッター通りの雪女(2014年3月 原書房)
ランチ合コン探偵(2014年9月 実業之日本社)
消えない夏に僕らはいる(2014年10月 新潮社)
招運来福! まねき猫事件ノート(2014年11月 ポプラ社)
冷たい手(2015年4月 光文社/2019年3月 光文社文庫)
君と過ごした嘘つきの秋(2015年7月 新潮社)
運命は、嘘をつく(2015年10月 文藝春秋)
結城屋質店の鑑定簿 あなたの謎、預かります(2016年1月 PHP研究所)
※2012年10月 PHP研究所「てのひらの記憶」を改題
千福万来! まねき猫事件ノート 化け猫の夏、初恋の夏(2016年3月 ポプラ社)
おいしい一時間 収録「オレんちの危機を救え!」(アンソロジー 2016年3月 タイムストーリー・日本児童文学者協会編 偕成社)
教室の灯りは謎の色(2016年8月 KADOKAWA/2019年8月 角川文庫)
ランチ探偵(2016年10月 実業之日本社)
ランチ探偵 容疑者のレシピ(2016年12月 実業之日本社)
だからあなたは殺される(2017年2月 光文社/2020年2月 光文社文庫)
Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選「五度目の春のヒヨコ」(2017年4月 講談社文庫)
ひよっこ社労士のヒナコ(2017年11月 文藝春秋/2019年10月 文春文庫)
新鮮 THEどんでん返し「使い勝手のいい女」(2017年12月 双葉文庫)
※同短編は、ザ・ベストミステリーズ2018 (推理小説年鑑 2018年5月 講談社)、ベスト本格ミステリ2018(2018年6月 講談社ノベルズ)、にも収録
福徳円満!まねき猫事件ノート 猫たちの生まれる街(2018年3月 ポプラ文庫ピュアフル)
17×63 鷹代航は覚えている(2018年6月 祥伝社)
僕はいつも巻きこまれる(2018年11月 講談社タイガ)
最後のページをめくるまで(2019年7月 双葉社)
きみの正義は 社労士のヒナコ(2019年10月 文藝春秋)
宝の山(2020年2月 光文社)
ノゾミくん、こっちにおいで(2020年12月 ポプラ文庫)
伝染る恐怖「二週間後の未来」(2021年2月 宝島社文庫)
オレと俺(17×63 鷹代航は覚えている 改題)(2021年4月 祥伝社文庫)
善人と天秤と殺人と(善人マニア 改題)(2021年10月 幻冬舎文庫)
あなたが選ぶ結末は(2021年10月 双葉社)
ランチ探偵 彼女は謎に恋をする(2022年2月 実業之日本社文庫)
お客様のご要望は設楽不動産営業日誌(2022年5月  朝日文庫)
女の敵には向かない職業(2022年10月 光文社)
希望のカケラ 社労士のヒナコ(2023年1月 文春文庫)

明利英司(めいりえいじ)

1985年6月24日鹿児島県に生まれ、幼少期を過ごし、その後、宮崎県で育つ。東京都在住。飲食店の店長をしていたが、現在は執筆に専念している。

第6回優秀作

旧校舎は茜色の迷宮

2014年8月 講談社

 一年前の秋、白石秋美の通う高校では、人気教師・宇津木が旧校舎内で何者かに殺害される事件が起きた。そして、翌年の同じ日に、こんどは秋美の慕う男性教師・小垣が同じ旧校舎から飛び降りて死亡する。怪奇話が大好きな空手部の渋谷新司と、それらの話を全く信じない生徒会長の木吉吾朗とともに、二人の死の真相に迫ろうとする秋美。 二つの事件を繋ぐ闇を追う刑事も巻き込みながら、迎えた文化祭の夜。隠され続けていた真実が、秋美の前に現れる―。

著者よりひとこと

 権威ある、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、島田荘司先生、教育委員会の皆様、選考に携わっていただいた方々に、心よりお礼を申し上げます。この結果は、まだ未熟だがひとまず腰を据えて小説を書いてみてはいかがだろうか、という言葉を投げかけられたのだと考えております。その意思を裏切らないよう、本賞がますます栄えるようなミステリーの創造に、人生を大いに使っていこうと思います。(2014年8月)

近 況

 明利英司です。
 この欄は、福ミス作家としての個性を打ち出して書けたら良いのですが、酷いときには月に一度は東京都から福山市に旅行していたが福山大好き人間の私も福山には何年も足を運んでいません。福山に行きたいなあ。そして早くまた、福ミス作家のみんなと会いたいなあ……。
 個人的な近状としては、趣味で寿司屋の経営をはじめて数年が経ち、多くの方々がお越しくださりました。都内にお住いのお方だったり、都内にお越しになる際に居酒屋明利が営業しているときには寄ってくださいね。詳しくはTwitterをご覧ください。
 小説家としては2022年10月に『海原鮮魚店のお魚ミステリー日和』を南雲堂から出版しました。魚が大好きな私にしか書けない小説になっていると思います。魚料理アドバイザー、シーフードソムリエ、食品衛生責任者である魚ミステリーを是非よろしくお願いします。 (2023年3月31日)

著作品一覧

旧校舎は茜色の迷宮(2014年8月 講談社)
幽歴探偵アカイバラ(2016年4月 講談社)
憑きもどり(2016年5月 ブログハウス)
瑠璃色の一室(2018年8月 書肆侃侃房)
指令ゲーム(2020年6月 双葉社)
海原鮮魚店のお魚ミステリー日和(2022年10月 南雲堂)

若月香(わかつきかおり)

広島県福山市生まれ。2004年「いま、会いにゆきます」の映画企画本「ずっと、ずっと、あなたのそばに~澪の物語~」でデビュー。2014年島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学賞優秀作「屋上と、犬と、ぼくたちと」で再デビューを果たす。

第6回優秀作

屋上と、犬と、ぼくたちと

2014年9月 光文社

 ガソリンスタンドでバイトをしている野村修司は、アパートの新聞受けに謎のメモがはさまれていることに気付く。はじめは意味のわからない内容だったが、翌週以降も届くメモを見ると、それは小学校時代に起きた不幸な出来事を指しているようだ。仲間と拾った子犬を内緒で飼っていた秋葉ビルの『屋上の屋上』から、台風の日に仲間の一人、オッタが転落して亡くなったのだ。 バイト先のミステリー好きの店長にメモを見せると、オッタの死に不審を抱き、メモの主を突き止めようと言い出すのだが―。

著者よりひとこと

 「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」発足のニュースを耳にしたときから、生まれも育ちも福山市のわたしは、いつか絶対に応募しよう!と心に決めていました。そして初めてのミステリーというチャレンジでしたが、このような賞をいただき、大変嬉しく、幸せです。島田荘司先生、そして関係者の皆様に心より感謝いたします。 今後も創作と創造をライフワークに、書き続けたいと思います。 本当にありがとうございました!(2014年9月)

近 況

 コロナからの三年間、絵を描くことを始めました。
 始まりは水墨画からで、墨の匂いが心地いい、と思ったのもつかの間、水の加減であっという間に滲んで失敗、四苦八苦!
 思い返せば十代のころ、漫画やイラストを描くのが大好きでした。高校生のときに自作漫画を出版社に投稿したことも。 でも絵の才能にはすぐに限界を感じてしまいました。
 ただわたしは物語を空想することも好きだったので、いつしか小説を書くようになりました。
 これから、Amazon Kindleにて電子出版していきます。 (過去に書いたものを試しに自費で校正さんに出してみたら、思いがけず褒めてもらえたことがきっかけの一つになりました)
 その第一作目は、『枯渇』――すこし怖くて、悲しいミステリーです。
 そして水墨画から始まったイラスト描きも復活しました。表紙のイラストとデザインも自分で手掛けてみました。創造することは大変だけど、出来上がるとやっぱり嬉しい。
 商業的に出版することは自身の力不足でなかなか叶いませんが,これから自分のできる範囲で,自分ができることをやっていければと思っています。よろしかったら,ぜひお付き合いくださいませ。 (2023年3月31日)

著作品一覧

屋上と、犬と、ぼくたちと(2014年9月 光文社)
枯渇(2023年1月 Amazon Kindle出版)

吉田恭教(よしだやすのり)

佐賀県出身。島根県在住。

第3回優秀作

変若水

2011年10月 光文社

 厚生労働省に勤務する向井俊介は、幼馴染の女医が突然死した真相を追及するうち、ある病院を告発する文書の存在を掴み、島根と広島の県境にある雪深い村にたどり着く。
 そこは変若水村。ある一族の絶大なる支配のもとに、誰も見てはならないとされる雛祭りが行われる奇妙な村だった。 相次ぐ突然死と、変若水村で過去におこった猟奇事件の謎に向井が迫る――。

著者よりひとこと

 この度は優秀賞を賜り、島田荘司先生・羽田皓市長をはじめ、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の実行に携わって下さった関係者の方々に心から御礼を申し上げます。
小説を書き始めてから数々の文学賞に作品を投稿してきたものの、中々思うような結果が出ずに筆を折ろうと思ったこともありました。しかし、継続は力なりと申します。気を取り直し、今度こそと思って『変若水』を書き上げました。そして今回、優秀賞を頂く結果となり、小説を書き続けていて良かったと心から実感しております。
今後とも未聞のトリック創作に尽力し、更に面白い作品を書き上げてまいりたいと存じます。最後に、福山市と福山市民の方々の、更なるご発展をお祈りいたします。(2011年5月)

近 況

 2018年10月、念願だった『可視える』の文庫化(『凶眼の魔女』に改題)が叶ったのだが、そこに辿り着くまでの経緯は、正に『人間万事塞翁が馬』だった。予期せぬアクシデントに見舞われて怒り心頭、そしてダメ元で行動した結果が吉と出た。奇しくも、5月刊行の作品も同じような経緯を辿り、『一寸先は闇ばかりではない。光であることも有りうる』と痛感している。(2023年3月31日)

著作品一覧

変若水(2011年10月 光文社)
ネメシスの契約(2013年7月 光文社)
惰天使の秤(2014年12月 光文社)
可視える(2015年10月 南雲堂)
背律(2016年3月 原書房)
亡者は囁く(2016年9月 南雲堂)
鬼を纏う魔女(2017年6月 南雲堂)
化身の哭く森(2017年7月 講談社)
亡霊の柩(2018年3月 南雲堂)
忍者大戦 赤ノ巻(2018年9月 光文社)
凶眼の魔女(2018年10月 実業之日本社文庫)
警視庁特殺 使途の刻印(2019年5月 角川文庫)
捜査一課ドラキュラ分室(2019年12月 南雲堂)
凶血 公安調査官 霧坂美紅(2020年5月 角川ホラー文庫)
MEMORY 螺旋の記憶(2020年10月 南雲堂)
四面の阿修羅(2022年3月 南雲堂)