島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第16回受賞作
(2024年 講談社)
市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、ある日、相談者の妻が密室から墜落死する現場を目撃してしまう。被害者が死の間際に残した「ナツミ」という人物を追って、刑事である夫の具樹は捜査を開始するが、その行方は杳として知れなかった。一方で、あずさの元には不可思議な相談が次々と舞い込む。施錠された納骨堂でひとつ増えた骨壺。高齢男性ばかりをつけ狙う怪しげなストーカー。重なる謎の裏には、驚きの真相があった。
自分が書いたミステリに、尊敬する島田荘司先生から評価をいただきたい。その一心で今回応募した作品が、思いもかけず新人賞をいただくこととなり、驚きと喜びで胸が一杯です。
審査に携わっていただいた島田先生はじめ関係各位、また投稿前に作品を読んで感想をくれた友人たち、そして私の創作活動を励まし支えてくれた妻に、心より感謝を申し上げます。ここを新たなスタートとし、諸先輩方に追いつけるよう、精一杯頑張ります。
第16回優秀作
相模湖畔に建つ碇矢邸で、資産家の当主が忽然と姿を消す。碇矢家所有の自家用ヘリコプターが奥多摩上空五百mを飛んでいる時に黒い影と接触するが、この時機体に残された赤いシミは、DNA鑑定の結果、当主の血液であることが判明した。片足が不自由な当主は幼い頃からの夢を叶え、イカロスのように大空を飛んでいたのか。奇想天外なからくりを屋敷の新人メイドが解き明かす。
この度は優秀作として選考いただき、ありがとうございます。学生時代に島田荘司先生の『斜め屋敷の犯罪』を読んで、いつか機会があれば自分も挑戦してみたいと考えていました。あれから40年。還暦を迎えて、社長業の傍らやっとそれなりに執筆時間を確保できるようになり、島田先生に自分の作品を読んでいただけるところまで来たことを何よりも嬉しく思っています。今後も、大いなる謎をロジカルに解明する作品に挑み続けます。
第15回優秀作
中国の四川省成都市にあるパンダセンターで働く矢部楓は、同センターで唯一の日本人飼育員である。ある日、楓は自分が担当する獣舎内で、女性獣医の死体を発見する。地元警察は、高所からの転落による事故死と発表した。
一ヶ月後。北京の中央警察から捜査官が派遣されてくる。事故を再捜査するといい、楓は否応なしに、捜査官のアシスタントに任命されてしまう。
当初、的外れに見えた再捜査だったが、時間の経過と共に、次々と新事実が発覚する。なんと、女性獣医は事故死ではなく他殺だったのだ。
犯人は誰か。動機は何か。異国の地で夢を叶えた日本人女性が、北京の捜査官と共に、難事件に挑む。
この度は優秀作に選出して頂き、島田先生及び関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
私は、十年以上にわたり仕事をしつつ執筆を続け、これまでにノンフィクション作品を二冊出版しました。ただ、小説では新人賞に応募しては落選を繰り返していました。そんな中、中国で起こる事件を日本人目線で描写しつつストーリーを進めるという、今回の作風を確立できました。
今後も、自身のスタイルに磨きをかけた作品を書き続けていく決意です。
第14回受賞作
2022年 光文社
この度は「島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。島田先生をはじめ、本賞の運営・選考に携わってくださったすべての方に厚く御礼申しあげます。
大学在学中に志した作家の夢は、「卒業後十年は社会で悩み苦しみなさい」という恩師の教えで一度保留となり、実際その言葉通りに悲惨な二十代を過ごす事となりました。本賞の受賞は作品だけでなく、作家となるために悩み苦しんだ人生まで肯定して頂けたように感じ、嬉しいと同時に深く安心も致しました。
2023年は受賞後第一作となる『抜け首伝説の殺人 巽人形堂の事件簿』を上梓させていただきました。本業に時間を取られてしまい、気づけばデビュー作の出版から一年半もあいてしまいました。
地元では友人知人の宣伝もあって多少は動いてくれているようですが、全国的にはまったく知名度がない状態ですので、もっと精進しなければならないと強く思っております。
今年は酒本さんの呼びかけで植田さん、北里さん、稲羽さんという福ミスの先輩方とのお酒の席を設けていただけました。コロナ禍での受賞ということもあり、島田先生以外の作家とお話をする機会がなかったため、とても嬉しかったです (酒本さんありがとうございました!)。
第16回は表彰式と出版記念パーティーが開催されるとのことですので、わたしも参加して麻根さんや野島さんとお会いしてみたいと考えております。
2021年に鞆の浦をひとりで訪れた際は、すでに夜になってしまい閑散としておりましたし、令和の大普請が完了した福山城をまだ見に行けていないため、福山市に行ってリベンジできることを楽しみにしています。(2024年3月)
ヘパイストスの侍女(2022年3月 光文社)
抜け首伝説の殺人 巽人形堂の事件簿(2023年10月 光文社)
第13回受賞作
2021年 講談社
昨年まで勤めていた映画会社を辞めて、自営業に戻りました。
今年からは新しい環境で、文字文化や手書き文化の普及に努めたいと思っています。
空いた時間で小説を書いて、新人賞への応募も続けています。
まずは最終選考へ残ることを目先の目標として頑張ります。
このミス、清張、乱歩賞をとるまでは書き続けます。(2024年3月)
依存(2021年3月 講談社)
葛藤(2021年12月 講談社)
第13回受賞作
2021年 講談社
信州上田に移住して4年目を迎え、こちらの環境にも慣れて来ました。そこで今年度は執筆に専念できるかと思いきや、治験審査委員会や卒後教育講座などからオファーが来て、自分としては結構多忙な一年となりました。そんな中、昨年10月に旭川で開催された第49回日本臓器保存生物医学会という臓器移植関連の学会にて、「薬学とミステリー」というタイトルの特別講演を依頼され、福ミスの紹介も含めて40分の講演ができたことは、自分なりに一つの成果だったと思っています。
さてこの一年間の出版状況ですが、昨年はミステリー長編を二編出版しました。また本年1月には、推理好きの若い女性薬剤師の奮闘を描いた連作短編集一作が出版されます。一方本年2月からは、2年間の予定で東京都薬剤師会が発行する「都薬雑誌」という月刊誌にて、ミステリー小説に関する自作イラスト入りエッセイの連載を始めます。この連載を通じ、都内の薬剤師の方々に、ミステリー小説や福ミスのことを広く知ってほしいと思っています。
最後になりますが、現在新たなミステリー小説のプロットを練っているところです。具体的には、薬局を舞台としたホラーミステリーや、時空遡行と密室殺人を扱った本格ミステリーなどに想いを馳せる毎日です。(2024年3月)
第12回受賞作
2020年3月 原書房
編集長にも複数回読んでもらった上で進めていた2作目を半年以上も後になって突然白紙に戻される。
その件に関して編集者と何度かやり取りをし、その後改めて返事をするといわれたが約2年半以上が経過した現在に至るまで返信なし。
待っている間に仕上げた複数の原稿を送付するもすべて無視される。
約1年待ってから編集長に相談するも、その後よくわからないまま今年3月を最後に返信なし。
以前福山市で島田先生とお会いした際、デビュー当初の知念さんが原稿を放置されたという話を各社編集者さんの前でされており、それを自分は「今の福ミスでは決してそんなことはないから安心して」という前向きなメッセージだと受け取っていたので、なんだかとても残念に思いました。
まあ、人間としてここまで雑に扱われることは、出版業界以外では普通めったにないことだと思いますので、それはそれで貴重な経験をさせていただいた、と無理やりにでも自分を納得させるしかありません。(2024年3月)
約束の小説(2020年3月 原書房)
第11回受賞作
2019年3月 光文社
○昨年は新しいことに挑戦してみようと思い、noteにて小説の連載を始めました。『サマスペ』という青春エンタメ小説です。おかげさまで多くの人に楽しんでいただけました。書いてすぐに感想をもらえることが嬉しくて、つい最近までその続編『アッコの夏』の連載もしていたのですが、小説の舞台になる石川県で正月の震災があり、今は休載しているところです。
○ほかのジャンルの小説も書きたくて、昔から好きだったSFファンタジーを書いてみました(異世界転生のような流行りのではないですが)。どこかで発表したいと思っています。
☆現在は新作ミステリーを書いています。新しいタイプのミステリーを意識しました。おそらくこれまでの本格ミステリーにはなかったのではないでしょうか。
本格ミステリーは読者に読む苦労を強いるところがあります。ほかのエンタメ小説と一線を画するところです。私の書いている新作は、もっと敷居を低くして読者と伴走することを狙いにしています。
この企みが読者に受け入れられるかどうか、楽しみです。(2024年3月)
第10回受賞作
2018年5月 講談社
2024年、辰年です。今年は久しぶりに福ミスの表彰式が行われるということでとても楽しみにしています。
2023年は、わたしにとって、忘れられない記念の年となりました。本を出していただけたこと、更には黒川博行氏にお話しを伺う機会を得たことです。偉大なミステリー作家を前に緊張しましたが、大変有意義な時間を過ごさせていただきました(拙著『流警』所載)。それに加えて昨年は、推し活として貴重なイベントに参加できたことがあります。長年、ファンとして応援し続けておりました方と、バスツアーで仙台を巡りました。対局のときのお姿とは違って、リラックスされて気さくにお話しくださったことは、わたしの一生の宝物です。そして、そのツアーのなかで震災遺構である荒浜小学校を訪れたことが、心に残りました。当時の被災の状況などを教えていただき、自然災害の凄まじさやその後の復興のご苦労などを直に伺うことができたこと、小学校の窓から見た景色が胸に刻まれ、生涯忘れることのないものとなりました。
さまざまな経験をした兎年でしたが、今年もいっそう励み、楽しい時間を過ごしていただけるような作品を作りたいと思います。
今のわたしにできることをとにかく頑張ろうと思えた一年でした。(2024年3月)
第9回受賞作