受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

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川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

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2014年11月 原書房

 戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

 新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 深木さんに背中を押していただき、また猫と暮らし始めました。前の猫たちが虹の橋に旅立って、もう八年です。
 一見、楚々として上品ですが、淡路島のイオン駐車場で鳴いていた保護猫。洋猫たちとは、まるで勝手が違います。
 これまで都市伝説だと思っていた猫のいたずら――ティッシュペーパー撒き散らし、カーテン登り、網戸破り、ゴミ箱あさり、新聞ちぎり、すべてフルスロットル。悪い声で叫び、いきなり両足跳び蹴りを喰らわしたり、人のごはんに手(足?)を伸ばしたりします。
 ぶれない自己主張。決して惑わぬ鬼の眼力。鍛え抜かれた身体能力。そして何より、頭の切り替えが早いこと。
 彼女こそ、ずっとぬるま湯に浸かっていた私に「世の荒波は、かく乗り越えよ」と指南する、大師範さまやもしれません。
 細身の白百合に似て、その名はリリー、もとい、りり。
庄造さんでも寅さんでもなく、りりです。
 SNS等でお目に留まりましたら、どうぞ、お声掛けくださいませ。(2018年3月31日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)

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嶋戸悠祐(しまとゆうすけ)

1977年1月20日生まれ。北海道出身。北海道在住。

第3回優秀作

キョウダイ

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2011年8月 講談社

 主人公「私」は、妻と娘に恵まれ、仕事も順調で幸せな日々を送っていた。が、妻が持ち出した小学校時代のアルバムが人生を狂わせはじめる。それは過去を封印していた人間にとって存在してはならぬものだった。その日から恐ろしい幻影に襲われ精神的に追い詰められていった「私」は過去と対峙することに――。当時「私」には双子の兄弟がおり、北海道M市のボロアパート群、通称餓死町で悲惨な生活を送っていた......。

著者よりひとこと

 このたびは第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出いただき誠にありがとうございます。
 私にとって島田先生の作品というのは本当に特別なものでした。十代の頃に島田作品と出合い、貪るように読み耽りました。目くるめくような衝撃を受けました。そして、はじめて自分で小説を書いてみたいと強く思いました。
 私は島田先生の作品に出会っていなければ小説を書くことはなかったと思います。その島田先生に優秀作として選出いただき、これ以上の栄誉はありません。とにかくこれからはその栄誉に恥じぬよう24時間、いつでも頭のどこかでミステリーのことを考え、奇想を膨らませ、研鑽を重ね、この道をどこまでも突き進む覚悟でおります。そしていつかこの賞の価値を高め、本格ミステリーというジャンルを牽引するような作家になること。大それた考えと思われるかもしれませんがデビューできた暁には、これを目標として邁進いたします。(2011年5月)

近 況

 昨年は講談社様よりひさしぶりの新刊『ギキョウダイ』を出すことができましたが、今年はまだ作品発表の目途がたっておりません。
 とりあえず現在、考えているのが家電業界を舞台にしたミステリー小説です。私自身、約二十年ほど、この業界で働いており、知識は豊富に持ち合わせているつもりですが、いざ、ミステリーにと考える、となかなか難しいものがあります。
 とにかく今年はこれを形にして、作品の刊行につなげられれば、と考えております。(2018年3月31日)

著作品一覧

キョウダイ(2011年8月 講談社)
セカンドタウン(2013年8月 講談社)
キキョウダイ(2017年2月 講談社)

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高林さわ(たかばやしさわ)

1945 年5月3日生まれ。千葉県出身。中学教師、塾自営の後引退。1981年「小説現代新人賞」受賞。

第5回受賞作

バイリンガル

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2013年5月 光文社

 アメリカ人の夫と離婚した永島聡子は、日本に帰国し、予備校の講師をしながら一人息子を育てた。ある日、沢田仁奈という女性が聡子のもとを訪ね、自分の両親が亡くなるきっかけとなった、30年前にインディアナ州ラフィエットで起きた誘拐殺人事件の内容を話して欲しいと頼む。仁奈には親切にしなければと思いつつも、乗り気になれずにいた聡子だが、仁奈の日本での生い立ちや生活を聞き、事件の全貌を語り出す。

著者よりひとこと

 「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という大きな賞をいただくことができまして、ほんとうにありがたく、感謝しております。
 島田先生はじめ、選んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。30年前に賞をいただいた後、長いブランクがありましたが、諦めずに書き続けてよかったです。書く場所を再び与えていただいたのですから、頑張らねば、と思っております。どうもありがとうございました。。(2012年10月)

近 況

 「バイリンガル」の文庫本を、四月二十日に発売していただけることになりました。また、電子書籍化も進めていただいているので、近々お目にかかれるのではと思います。
 文庫化にあたり、ハードカバーでの内容、文章等をさらに吟味して、後世に残せるものにしたつもりです。作者が申し上げるのもナンですけど、面白いですよ。是非、お読みいただきたいです。
 「百歳まで生きる時代が来る」とテレビでやっていますが、我が家にも九十九歳の母がおります。一昨年の厄年を引きずって、昨年、母も私も危うく(三途の)川を渡るところでしたが、渡り切らずに引き返すことができました。二人で何回も、病気になったり怪我をしたり、というとんでもない一年を過ごしました。
 それでも今年は、なんとか元気です。桜が満開ですが、多勢を頼む花はあまり好きじゃないな、なんて罰当たりなことを考えている私です。凛と、艶やかに華やかに咲く、薔薇のほうが美しいですよね。
ばら祭りに皆様にお会いできれば、と思ってはいるのですが……。(2018年3月31日)

著作品一覧

バイリンガル(2013年5月 光文社/2018年4月 光文社文庫)

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知念実希人(ちねんみきと)

1978年10月12日沖縄県生まれ。東京都在住。東京慈恵会医科大学卒。2004年から医師として勤務。日本内科学会認定医。

第4回受賞作

誰がための刃 レゾンデートル

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2012年4月 講談社

 自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴は、自暴自棄となり殺人を犯してしまう。そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いに挑む。

著者よりひとこと

 このたびは福山ミステリー文学新人賞という素晴らしい賞を受賞させて頂き、島田先生を初め関係者の皆様には心より感謝しております。
 応募の際は、この作品が「本格」を求めている福ミスに相応しいものなのか何日も迷いましたが、福ミスの選考方法や最終選考まで残れば島田先生に選評を頂けることに惹かれ、思い切って応募しました。受賞を知った時はすぐには信じられなくて一瞬呆然とした後、天にも昇るような気持ちになりました。
 今回の作品は8年間の医療現場での経験を詰め込むことで、末期癌に冒された主人公から見た世界、そしてその生き様をできるだけリアルに描くように努めました。読んでくださった皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
 今後は賞の名に恥じぬよう精進し、読者の方に喜んで頂ける小説を書いてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(2012年5月)

近 況

 今回で福ミスがとうとう第十回を迎えることを心から嬉しく思うとともに、自分が第四回の受賞者としてデビューしてからもう六年経つのかと感慨深いです。出版不況が叫ばれるなか、なんとか作品をコンスタントに出し続けることができ、『五年後にも作家であり続ける』という当面の目標はクリアすることが出来ました。ありがたいことに、執筆のスケジュールもかなり先まで埋まっています。しかし、依頼があるということは必然的に締め切りもそれだけあるということです。最近はときどき、締め切りに間に合わせるために執筆する状態になっていることに気づくことがあります。そんなときは、一つ一つの作品に全力で打ち込んでいた頃の気持ちを思い出し、自分を奮い立たせています。初心を忘れることなく、さらに作家として生きてきた六年間の経験を上乗せして、福ミス受賞者として今後も質の高い作品を創り出していければと思っています。(2018年3月31日)

著作品一覧

誰がための刃 レゾンデートル(2012年4月 講談社)
ブラッドライン(2013年7月 新潮社)
優しい死神の飼い方(2013年11月 光文社/2016年5月 光文社文庫)
天久鷹央の推理カルテ(2014年10月 新潮社)
仮面病棟(2014年12月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟(2015年3月 新潮社)
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ(2015年5月 幻冬舎)
天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア(2015年6月 新潮社)
黒猫の小夜曲(セレナーデ)(2015年7月 光文社/2018年1月 光文社文庫)
スフィアの死天使 ―天久鷹央の事件カルテ―(2015年8月 新潮社)
神酒クリニックで乾杯を(2015年10月 KADOKAWA)
天久鷹央の推理カルテⅣ 悲恋のシンドローム(2016年2月 新潮社)
淡雪の記憶 神酒クリニックで乾杯を(2016年4月 角川文庫)
白銀の逃亡者(2016年6月 幻冬舎)
幻影の手術室 ー天久鷹央の事件カルテー(2016年9月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 1巻(コミック)(2016年9月 新潮社)
あなたのための誘拐(2016年9月 祥伝社)
時限病棟(2016年10月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト(2017年3月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 2巻(コミック)(2017年3月 新潮社)
屋上のテロリスト(2017年4月 光文社)
崩れる脳を抱きしめて(2017年9月 実業之日本社)
螺旋の手術室(2017年10月 新潮社)
甦る殺人者-天久鷹央の事件カルテー(2017年11月 新潮社)
祈りのカルテ(2018年3月 KADOKAWA)
火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (2018年8月 新潮文庫nex)
ひとつむぎの手(2018年9月 新潮社)
神のダイスを見上げて(広島版 2018年11月 光文社/全国版 2018年12月 光文社)

原進一さん顔写真トリミング

原進一(はらしんいち)

1948年生まれ。兵庫県神戸市出身。東京外国語大学卒。卒業と同時に全日空(株)に入社し,東京・大阪・福岡・鹿児島・オランダなどで勤務の後,2008年に定年退職。現在は無職で東京都在住。

第8回受賞作

アムステルダムの詭計

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2016年4月 原書房

 戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)

著者よりひとこと

 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)

近 況

 早朝に目覚めてしまうと、もう眠れない。人生の不思議な変化と言えよう。『アムステルダムの詭計』によって新人賞を受賞して早二年。いまだに感想を寄越してくれる読者は有り難い。次回作への期待がP Cに向かう原動力になる。二作目の原稿は、推敲を重ね出版社に渡し進行中。厳しい目に晒され苦戦が続く。
 苦戦を強いられるのは私だけではない。家内は昔取った杵柄と書道を再開したが、なかなか昇段できない。昼食後はウォーキングに出掛ける。ミステリーの構想に夢中になると、ついつい俯く。即座に、背後から家内の警告が響く。鬱憤を晴らすように矢継早に指示が飛ぶ。
 「項垂れないで! 私が威張ってるように見えるでしょ。視線を上げて!」
 浅川に青鷺の姿が目に入る。脚許に餌が寄せるのを待っている。帰途でも、姿勢を変えずひたすら川を覗き込む。人間とは尺度の異なる不思議な〝鳥時間〟があるのだろう。人生だけでなく自然界はミステリーに満ちている。(2018年3月31日)

著作品一覧

アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)

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松本寛大(まつもとかんだい)

1971年生まれ。北海道札幌市出身。札幌市在住。

第1回受賞作

玻璃の家

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2009年3月 講談社

 アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。

著者よりひとこと

 本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
 今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)

近 況

 昨年は新聞や雑誌等に小説やマンガ、映画に関する評論を書かせていただく機会に恵まれました。戦前のものから近年の作品まで、時代やジャンルを問わず幅広く手がけています。石塚桜子さんの絵画を紹介する仕事もできました(「TH No.71」、アトリエサード)。美しい紙面になったと思いますので、よければお手にとってみてください。
 また、この春刊行の『日本探偵小説を知る 五〇年の愉楽』(北海道大学出版会)に収録の座談会に参加させていただきました。ミステリの史的研究をおこなっている北海道大学文学部の押野武志教授がまとめた評論集です。
 いまは文学選の解説原稿を引き受けまして、畑違いの調べ物が増えてちょっと焦っているところです。今後は、引き続き評論執筆をさせていただくほか、ミステリ映画に関する講演を予定しています。
 昨年は評論活動が中心となりましたが、むろん、コツコツと小説も書いています。魂を込めて文字を刻んでおりますので、どうぞ長い目で見守ってください。(2018年3月31日)

著作品一覧

玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)

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松本英哉(まつもとひでや)

1974年生まれ。兵庫県出身。兵庫県在住。

第8回優秀作

僕のアバターが斬殺ったのか

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2016年5月 光文社

 神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。

著者よりひとこと

 もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)

近 況

 今年一月、二作めとなる「幻想リアルな少女が舞う」が発売されました。昨年のこの「近況報告」で、執筆中であることをお伝えした作品です。結果的に、完成までたっぷりと時間を使ってしまいました。内容は、高校生の男女コンビが奮闘する本格ミステリーです。作中にはやや近未来的な雰囲気が漂います。それでも、昨今のITの日進月歩を目の当たりにすると、それほど突飛な舞台設定でもないと思います。「VR(仮想現実)」という言葉も、すっかり世の中に定着しましたからね。気軽に楽しんでいただけると思います。
 現在は三作めに向けて、新たな構想を練っているところです。まだぼんやりとした形しか見えていませんが、次はよりシンプルで、あまり長くないお話にしたいと考えています。二作めではじっくりと時間をかけたので、その反動から来る気分なのかもしれません。創作のペースをもう少し上げたいというのが当面の課題であり、目標です。(2018年3月31日)

著作品一覧

僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)

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深木章子(みきあきこ)

1947年8月2日生まれ。東京都出身。東京都在住。

第3回受賞作

鬼畜の家

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2011年4月 原書房

 「おとうさんはおかあさんが殺しました。おねえさんもおかあさんが殺しました。おにいさんはおかあさんと死にました。わたしはおかあさんに殺されるところでした……」 保険金目当てで家族に手をかけてゆく母親。その母親も自動車もろとも夜の海に沈み、末娘だけが生き残ることになった。 母親による巧妙な殺人計画、娘への殺人教唆、資産の収奪…… 信じがたい「鬼畜の家」の実体が、娘の口から明らかにされてゆく。

著者よりひとこと

 人は実現可能性のない夢は見ない……この言葉を知ってはいましたが、こんなにも早く夢が実現するとは思いませんでした。
人生は本当に何が起きるかわからないもので、体が不自由になり、60歳で現役を退くまでは、推理小説とはあくまでも「読む」もので、「書く」などという離れ技は、自分とは別世界の特殊な頭脳の持主がなさることだと思い込んでおりました。
 振り返れば、昨年の10月、福ミス受賞内定の電話をいただいて以来、未知との遭遇の連続です。何とか、無事この日を迎えることができましたが、今後の厳しい道程を考えますと、身が引き締まると同時にそら恐ろしい気がいたします。
 こんな頼りない新人作家ではございますが、あたたかい目で見守っていただけましたら幸いです。どうか、宜しくお願い申し上げます。(2011年5月)

近 況

 この一年も、なんとか無事に新作を出すことができました。
 このたび光文社さんより上梓しました長編『消えた断章』は、記念すべきデビュー10冊目。デビュー当時のあれこれを思い出すにつけ、よくここまで来たものだと、自分でも信じられない思いです。
 その新作長編は、私としては初めてとなる誘拐ものになりました。私の初の短編集『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』で小学生探偵だった君原樹来が、ミステリ―作家志望の大学4年生となって、元刑事の祖父とともに、過去の2つの誘拐事件の謎に迫る本格ミステリーとなっておりますので、お楽しみいただけましたら幸いです。
 ところでこの樹来君、あちこちの新人賞に応募しては、作家デビューを果たそうと奮闘中らしいのですが、はたして福ミスには挑戦しているのでしょうか???
 できることなら、こういう新人賞があるんだよ、と教えてあげたいくらいです。(2018年3月31日)

著作品一覧

鬼畜の家(2011年5月 原書房/2014年4月 講談社)
衣更月家の一族(2012年3月 原書房/2015年3月 講談社文庫)
螺旋の底(2013年3月 原書房/2016年3月 講談社文庫)
殺意の構図 探偵の依頼人(2013年12月 光文社/2016年9月光文社文庫)
敗者の告白 弁護士睦月怜の事件簿(2014年10月 KADOKAWA/2017年8月 角川文庫)
交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー(2015年6月 光文社/2018年4月 光文社文庫)
ミネルヴァの報復(2015年8月 原書房/2018年9月 角川文庫)
猫には推理がよく似合う(2016年9月 KADOKAWA)
敗者の告白(2017年8月 角川書店)
消人屋敷の殺人(2017年10月 新潮社)
消えた断章(2018年3月 光文社)

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水生大海(みずきひろみ)

三重県出身、愛知県在住。2014年「五度目の春のヒヨコ」で第67回日本推理作家協会賞(短編部門)候補。

第1回優秀作

少女たちの羅針盤

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2009年7月 原書房

 短編ホラー映画主演女優としてロケ現場にやってきたマリア。そこで監督に意味ありげに言われる。「きみ、羅針盤にいた子だよね」と。マリアに忘れさりたい過去が甦る。伝説の女子高生劇団「羅針盤」。監督はさらに言う。「一人、死んでるんだよね」 羅針盤はメンバーの死と共に活動を停止した。マリアが殺したのだった。監督はいったいどこまで知っているのか。疑心はふくらむ。 そして物語は四年前、羅針盤の誕生と死へと移ってゆく。
 本作は、2010年に映画化が決定され、福山市でロケを行い、2011年5月に全国公開されました。
 また、本作の続編となる『かいぶつのまち』も2010年7月に原書房より出版されています。

著者よりひとこと

 このたびは、第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出していただき、ありがとうございます。島田先生をはじめ、事務局の皆さま、関係者の皆さまには大変お世話になりました。
 最終選考に残れば島田先生に読んでいただくことができる、そう思ってお送りした作品が思いも寄らない栄誉を受け、今もまだ戸惑いの中におります。
 小学校のころ、家が遠かったわたしは友人たちと別れた後、図書室で借りた本の続きを空想しながら通学していました。なかでもミステリーは謎あり冒険ありと魅力に満ちた物語でした。あのころのように、続きが気になるワクワクとした物語を作り出し、誰かに楽しんでいただきたいと考えております。
 今後も精進を続け、読む人の心をとらえて離さない物語を作り続けたい、書き続けることで優秀作受賞にお応えしたい、そう思っております。(2009年3月)

近 況

 昨年度は、洗濯機が壊れたのを皮切りに、ビルトイン式の食洗機、ガス給湯器他、いろいろなものが壊れました。壊れたものは仕方がない。問題は「次になにを選ぶか」です。
 洗濯機は好奇心を理由に、初めてドラム式を導入してみました。結果、乾燥モードを使うと掃除機が必要、という不思議な現象が生まれました。長持ちさせるには、埃を可能な限り取る必要があるからです。掃除機が壊れたら乾燥モードを控えるしかないのかな思いましたが、掃除機は洗濯機のさらに前に壊れて買い替えていたので、当分大丈夫でしょう。
 食洗機はビルトイン、ガス給湯器は設置場所の狭さの関係で、選択肢が少なくて済みました。忙しくて悩みたくない時期だったので、助かりました。
 行動心理学の本に、選択肢が多すぎるとかえって選べなくなくなるという話が載っていました。家電はひとつしか選べませんが、本は全部を選んでもなんら問題ありません。
 昨年の『だからあなたは殺される』のあと、『ひよっこ社労士のヒナコ』『福徳円満! まねき猫事件ノート』を上梓し、六月にも新刊が出る予定です。ぜひご自宅にお連れください。(2018年3月31日)

著作品一覧

少女たちの羅針盤(2009年7月 原書房/2011年4月 原書房/2012年9月 光文社)
かいぶつのまち(2010年7月 原書房/2013年10月 光文社)
善人マニア(2011年8月 幻冬舎)
夢玄館へようこそ(2011年11月 双葉社/2015年3月 双葉社)
転校クラブ 人魚のいた夏(2012年3月 原書房)
てのひらの記憶(2012年10月 PHP研究所)
熱望(2013年4月 文藝春秋)
エール!2 収録「五度目の春のヒヨコ」(アンソロジー 2013年4月 実業之日本社)
※同短編は、ザ・ベストミステリーズ2014 (推理小説年鑑)  2014年5月 講談社にも収録
猫とわたしの七日間 収録「まねき猫狂想曲」(アンソロジー 2013年11月 ポプラ社)
転校クラブ シャッター通りの雪女(2014年3月 原書房)
ランチ合コン探偵(2014年9月 実業之日本社)
消えない夏に僕らはいる(2014年10月 新潮社)
招運来福! まねき猫事件ノート(2014年11月 ポプラ社)
冷たい手(2015年4月 光文社)
君と過ごした嘘つきの秋(2015年7月 新潮社)
運命は、嘘をつく(2015年10月 文藝春秋)
結城屋質店の鑑定簿 あなたの謎、預かります(2016年1月 PHP研究所)
※2012年10月 PHP研究所「てのひらの記憶」を改題
千福万来! まねき猫事件ノート 化け猫の夏、初恋の夏(2016年3月 ポプラ社)
おいしい一時間 収録「オレんちの危機を救え!」(アンソロジー 2016年3月 タイムストーリー・日本児童文学者協会編 偕成社)
教室の灯りは謎の色(2016年8月 KADOKAWA)
ランチ探偵(2016年10月 実業之日本社)
ランチ探偵 容疑者のレシピ(2016年12月 実業之日本社)
だからあなたは殺される(2017年2月 光文社)
Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選「五度目の春のヒヨコ」(2017年4月 講談社文庫)
ひよっこ社労士のヒナコ(2017年11月 文藝春秋)
新鮮 THEどんでん返し「使い勝手のいい女」(2017年12月 双葉文庫)
福徳円満!まねき猫事件ノート 猫たちの生まれる街(2018年3月 ポプラ文庫ピュアフル)
ベスト本格ミステリ2018(2018年6月 講談社ノベルス)
17×63 鷹代航は覚えている(2018年6月 祥伝社)
僕はいつも巻きこまれる(2018年11月 講談社タイガ)

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明利英司(めいりえいじ)

1985年6月24日鹿児島県に生まれ、幼少期を過ごし、その後、宮崎県で育つ。東京都在住。飲食店の店長をしていたが、現在は執筆に専念している。

第6回優秀作

旧校舎は茜色の迷宮

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2014年8月 講談社

 一年前の秋、白石秋美の通う高校では、人気教師・宇津木が旧校舎内で何者かに殺害される事件が起きた。そして、翌年の同じ日に、こんどは秋美の慕う男性教師・小垣が同じ旧校舎から飛び降りて死亡する。怪奇話が大好きな空手部の渋谷新司と、それらの話を全く信じない生徒会長の木吉吾朗とともに、二人の死の真相に迫ろうとする秋美。 二つの事件を繋ぐ闇を追う刑事も巻き込みながら、迎えた文化祭の夜。隠され続けていた真実が、秋美の前に現れる―。

著者よりひとこと

 権威ある、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞において優秀作に選出していただき、島田荘司先生、教育委員会の皆様、選考に携わっていただいた方々に、心よりお礼を申し上げます。この結果は、まだ未熟だがひとまず腰を据えて小説を書いてみてはいかがだろうか、という言葉を投げかけられたのだと考えております。その意思を裏切らないよう、本賞がますます栄えるようなミステリーの創造に、人生を大いに使っていこうと思います。(2014年8月)

近 況

 出版記念の集いにお越しいただき、ありがとうございます。明利英司です。
 私が第六回でデビューしてから四年、この福山ミステリー文学賞も十回目を迎えたのですね。いまや文壇界に欠かせない存在になってきていると思います。そしてこの福ミスと共にまた、福山市の知名度も高まっているのではないでしょうか。私もますます福山市のことが好きになってきて、現在は福山アンバサダーをやっております。皆様が知っている福山市の魅力、教えていただきたいものです。
 作家としての近状としましては、四月十四日に私が原作の映画《憑きもどり》の関係者上映会があり、自分が創造した物語の実写版を観ることができて感動しました。上映に至った折には、ぜひご覧くださいね。
 新刊は今月、五月末に予定されています。福山ばら祭までに出版したかったのですが、間に合いませんでした。こちらも出版に至れば、お手に取っていただけたら幸いです。(2018年3月31日)

著作品一覧

旧校舎は茜色の迷宮(2014年8月 講談社)
幽歴探偵アカイバラ(2016年4月 講談社)
憑きもどり(2016年5月 ブログハウス)
瑠璃色の一室(2018年8月 書肆侃侃房)