受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

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金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

ベンヤミン院長の古文書(帯なし)

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

こんにちは。『ベンヤミン院長の古文書』で優秀作をいただいた金澤マリコと申します。
受賞作および二作目の『薬草とウインク』を原書房から刊行いたしました。
現在は三作目の執筆中です。
大航海時代、アフリカのみならずアジアの各地からヨーロッパや新大陸に強制連行された人々が存在していました。そのなかには多くの日本人も含まれていたことをご存知の方もいらっしゃると思います。 今度の作品では、奴隷になった日本の少年が登場します。日本、エジプト、ポルトガルをつなぐ歴史の大舞台のなかで少年が生き抜く物語です。
執筆に苦戦しておりますが、楽しんでいただける作品になるよう、日々励んでおります。
刊行されましたらどうぞよろしくお願いいたします。(2020年3月28日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)

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叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

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2010年3月 光文社

 介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

 この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

 最近、またガソリン価格が上がってきました。やんちゃなトランプさんのお陰で、中東が騒がしいのが原因でしょうか。
 随分と昔、耳にしたことですが、原油の大半は船で運ばれます。産油国は、政情不安定な中東に多いですから、航路は常に危険で、商社はタンカーに多額の保険を掛けるそうです。実は、これが問題で、その保険料が事あるごとに変動するのです。今回のような状態では、一挙に上がったことでしょう。それがガソリン価格に反映する、と。
 船は、まだインド洋当たりかもしれません。なのに、もう値上げって。ですから、船が実際に沈むかどうかは関係ありません。保険料という経費が上がったから値上げするのです。素早く、損を出さないため、早め早めの行動です。私も、いつも職場で上司や経営者から言われていることです。企業としては実に正しい。
 つまり、原油価格の高騰でガソリンが値上がりするのではなく、聞いた話が正しいなら、保険料の値上がり分を、商社に代わって我々がカバーするだけの話なのです。理不尽ですから、トランプさん、少し穏便にお願いしますよ。(2020年3月28日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社)
回廊の鬼(2014年4月 光文社))
美しすぎる教育評論家の依頼 よろず請負業さくら屋(2019年6月 光文社)

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神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

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2015年5月 講談社

 20XX年の冬,スウェーデンのストックホルムではノーベル賞受賞者を祝う晩餐会が開かれていた。祝宴の最中,ノーベル医学・生理学賞の受賞者である浅井由希子博士は,壇上で紫斑性筋硬化症候群という奇病について語り始める。彼女の息子はその奇病に冒されていたのだ。参列者の誰もが息子の治療の為に研究し続けた母親の言葉に感動した。しかし,彼女は美談の果てにこんな言葉を解き放つ。「私の息子は自殺したのではありません。長峰高校の元一年B組の生徒達に苛め殺されたのです」と。こうして,天才医学者による人類史上,未曾有の復讐劇が幕を開けた。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

 大学生の頃、経済学の講義でアジアの通貨危機について知りました。その時、市場というものは無数の投機家が関わっていることを知り強い興味を持ちました。卒業後も自分で色々と調べていたら市場にはいくつか法則があることを見つけました。そのうちのひとつは私たちの人生が一変するようなとても面白い法則です。
 私はその法則について何らかの形で発表できないかと思いました。しかし、大学院に通っているわけでもないので良い手段がありません。そこで島田荘司先生や松本清張先生のように論文ではなく小説、それも世界の謎を解くミステリーという形式で表現できないかと考えました。試しにヨブ記に関する思索を絡めながら「たとえ、世界に背いても」を執筆したところ幸いばらのまち福山ミステリー文学新人賞をいただきました。
 島田先生のおかげで出版関係者と知り合えました。あとは作品をブラッシュアップさせるだけ。もし発表できれば多くの人を喜ばせることができるはずです。いつかこの作品を世に出したいです。(2020年3月28日)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

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川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

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2014年11月 原書房

 戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

 新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

 ある朝、猫のしっぽに、突然、しま模様があらわれました。
 まだらの紐です。
 どんどん濃くなっています。
 うちに来たときはまっ白だったので「だいふく」という名前も考えていました。あぶないところでした。
 付け根に楕円形の接合模様もあるので、毎回、流行のしっぽにとり替えるつもりかもしれません。
 いずれは二股にわかれるか。
 はたまた、九尾に膨れあがるか。(りり、それ猫やない、狐や)
 
 万物は流転する  ヘラクレイトス
 わたしも、りり氏に負けぬよう、日々、しっぽ的変化を楽しむつもりです(2020年3月28日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち(2019年7月 論創社)

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嶋戸悠祐(しまとゆうすけ)

1977年1月20日生まれ。北海道出身。北海道在住。

第3回優秀作

キョウダイ

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2011年8月 講談社

 主人公「私」は、妻と娘に恵まれ、仕事も順調で幸せな日々を送っていた。が、妻が持ち出した小学校時代のアルバムが人生を狂わせはじめる。それは過去を封印していた人間にとって存在してはならぬものだった。その日から恐ろしい幻影に襲われ精神的に追い詰められていった「私」は過去と対峙することに――。当時「私」には双子の兄弟がおり、北海道M市のボロアパート群、通称餓死町で悲惨な生活を送っていた......。

著者よりひとこと

 このたびは第3回福山ミステリー文学新人賞優秀作に選出いただき誠にありがとうございます。
 私にとって島田先生の作品というのは本当に特別なものでした。十代の頃に島田作品と出合い、貪るように読み耽りました。目くるめくような衝撃を受けました。そして、はじめて自分で小説を書いてみたいと強く思いました。
 私は島田先生の作品に出会っていなければ小説を書くことはなかったと思います。その島田先生に優秀作として選出いただき、これ以上の栄誉はありません。とにかくこれからはその栄誉に恥じぬよう24時間、いつでも頭のどこかでミステリーのことを考え、奇想を膨らませ、研鑽を重ね、この道をどこまでも突き進む覚悟でおります。そしていつかこの賞の価値を高め、本格ミステリーというジャンルを牽引するような作家になること。大それた考えと思われるかもしれませんがデビューできた暁には、これを目標として邁進いたします。(2011年5月)

近 況

 嶋戸悠祐と申します。今年も昨年に引き続き新刊を発表することはできませんでしたが、あきらめずに書いております。
 近いうち皆様に作品をお届けできるよう努力いたします。
 実は去年、私は北海道の札幌市に住んでいたのですが、石狩市に引っ越しました。元々、札幌の田舎の方に住んでいました。さらに田舎に移り住むこととなりました。今年は暖冬と言われておりますが、石狩は雪が多いです。最近は毎日雪かきをしております。必死に雪かきをしている私の姿を、家の中から二匹の猫がじっと見守ってくれています。
 幸せなのですが、もっと幸せになりたいので執筆頑張ります。(2020年3月28日)

著作品一覧

キョウダイ(2011年8月 講談社)
セカンドタウン(2013年8月 講談社)
キキョウダイ(2017年2月 講談社)

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高林さわ(たかばやしさわ)

1945 年5月3日生まれ。千葉県出身。中学教師、塾自営の後引退。1981年「小説現代新人賞」受賞。

第5回受賞作

バイリンガル

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2013年5月 光文社

 アメリカ人の夫と離婚した永島聡子は、日本に帰国し、予備校の講師をしながら一人息子を育てた。ある日、沢田仁奈という女性が聡子のもとを訪ね、自分の両親が亡くなるきっかけとなった、30年前にインディアナ州ラフィエットで起きた誘拐殺人事件の内容を話して欲しいと頼む。仁奈には親切にしなければと思いつつも、乗り気になれずにいた聡子だが、仁奈の日本での生い立ちや生活を聞き、事件の全貌を語り出す。

著者よりひとこと

 「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という大きな賞をいただくことができまして、ほんとうにありがたく、感謝しております。
 島田先生はじめ、選んでくださった皆様に、心より御礼申し上げます。30年前に賞をいただいた後、長いブランクがありましたが、諦めずに書き続けてよかったです。書く場所を再び与えていただいたのですから、頑張らねば、と思っております。どうもありがとうございました。。(2012年10月)

近 況

昨年三月に福山にお邪魔したとき、実は体調があまり良くありませんでした。
知念さんに「売薬じゃ治らない。医者に行け」とアドバイスされ、翌週早速病院へ。診断は、「逆流性食道炎の重いヤツ」とのこと。重いヤツ、というのが泣かせます。その後、内視鏡検査やピロリ菌の退治などをされて、徐々に治るかなと思っていたら、体重が徐々に増加。「何やったんだ? このままじゃ死ぬぞ」と先生に呆れられて検査。立派な糖尿病だと診断され、糖尿病の専門医と食事療法の先生に引き渡されました。十月末でした。
十一月にもう一度検査しようと助け舟を出され、毎日350グラムの野菜を食べ、糖分をチェックする日々。その検査で、なんと「立派な糖尿病」という診断が覆り、ほぼ正常とのこと。「こんな患者は初めてだよ」と専門の先生。でも念のためにもう一回、とのことで一月にまた検査。十一月の結果よりもさらに数値が良くなり、どこも正常値。「こんな患者は初めてだよ」とまた褒められ、私は「ムフフ」と密かに喜んでおります。
小説は、介護の短編をというお話をいただいて、数編書いて編集者さんにお渡ししました。夏頃に新刊を出していただけるかもということですので、今は手直しをしています。
そのうちの一編を、先日発売の「小説宝石」二月号に載せていただきました。お読みいただけたら、うれしいです。「こんな小説、初めてだよ」なんて言われたいなあ。(2020年3月28日)

著作品一覧

バイリンガル(2013年5月 光文社/2018年4月 光文社文庫)

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知念実希人(ちねんみきと)

1978年10月12日沖縄県生まれ。東京都在住。東京慈恵会医科大学卒。2004年から医師として勤務。日本内科学会認定医。

第4回受賞作

誰がための刃 レゾンデートル

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2012年4月 講談社

 自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴は、自暴自棄となり殺人を犯してしまう。そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いに挑む。

著者よりひとこと

 このたびは福山ミステリー文学新人賞という素晴らしい賞を受賞させて頂き、島田先生を初め関係者の皆様には心より感謝しております。
 応募の際は、この作品が「本格」を求めている福ミスに相応しいものなのか何日も迷いましたが、福ミスの選考方法や最終選考まで残れば島田先生に選評を頂けることに惹かれ、思い切って応募しました。受賞を知った時はすぐには信じられなくて一瞬呆然とした後、天にも昇るような気持ちになりました。
 今回の作品は8年間の医療現場での経験を詰め込むことで、末期癌に冒された主人公から見た世界、そしてその生き様をできるだけリアルに描くように努めました。読んでくださった皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
 今後は賞の名に恥じぬよう精進し、読者の方に喜んで頂ける小説を書いてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(2012年5月)

近 況

 2019年も三作の新作を刊行することができ、順調に著作を増やすことができた。ただ、プライベートではとても可愛がっていた愛猫のハリーが急に重い疾患に罹り、一ヶ月の闘病の末に私の腕の中で息を引き取ってしまった。
長年、私をそばで癒してくれていた相棒を亡くした哀しみは大きく、かなり精神的に不安定にはなったが、彼の死を執筆ができない言い訳にできないと歯を食いしばり、拙作の中でも最長で、最も魂を込めた作品である『ムゲンのi』を書き上げることができた。この作品が多くの方の心を震わせてくれればと願っている。
 2020年3月には『仮面病棟』の映画公開も控えている。脚本も担当したこの作品がヒットしてくれたら嬉しいと思っている。
 2020年も最低でも三作の新作を刊行する予定だ。福ミス、そして福山市をアピールするためにも、愛猫との思い出を胸に、今後も一生懸命、執筆に励んで生きたい(2020年3月28日)

著作品一覧

誰がための刃 レゾンデートル(2012年4月 講談社)
ブラッドライン(2013年7月 新潮社)
優しい死神の飼い方(2013年11月 光文社/2016年5月 光文社文庫)
天久鷹央の推理カルテ(2014年10月 新潮社)
仮面病棟(2014年12月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟(2015年3月 新潮社)
改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ(2015年5月 幻冬舎)
天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア(2015年6月 新潮社)
黒猫の小夜曲(セレナーデ)(2015年7月 光文社/2018年1月 光文社文庫)
スフィアの死天使 ―天久鷹央の事件カルテ―(2015年8月 新潮社)
神酒クリニックで乾杯を(2015年10月 KADOKAWA)
天久鷹央の推理カルテⅣ 悲恋のシンドローム(2016年2月 新潮社)
淡雪の記憶 神酒クリニックで乾杯を(2016年4月 角川文庫)
白銀の逃亡者(2016年6月 幻冬舎)
幻影の手術室 ー天久鷹央の事件カルテー(2016年9月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 1巻(コミック)(2016年9月 新潮社)
あなたのための誘拐(2016年9月 祥伝社)
時限病棟(2016年10月 実業之日本社)
天久鷹央の推理カルテⅤ 神秘のセラピスト(2017年3月 新潮社)
天久鷹央の推理カルテ 2巻(コミック)(2017年3月 新潮社)
屋上のテロリスト(2017年4月 光文社)
崩れる脳を抱きしめて(2017年9月 実業之日本社)
螺旋の手術室(2017年10月 新潮社)
甦る殺人者-天久鷹央の事件カルテー(2017年11月 新潮社)
祈りのカルテ(2018年3月 KADOKAWA)
火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (2018年8月 新潮文庫nex)
ひとつむぎの手(2018年9月 新潮社)
神のダイスを見上げて(広島版 2018年11月 光文社/全国版 2018年12月 光文社)

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原進一(はらしんいち)

1948年生まれ。兵庫県神戸市出身。東京外国語大学卒。卒業と同時に全日空(株)に入社し,東京・大阪・福岡・鹿児島・オランダなどで勤務の後,2008年に定年退職。現在は無職で東京都在住。

第8回受賞作

アムステルダムの詭計

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2016年4月 原書房

 戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)

著者よりひとこと

 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)

近 況

 令和二年、まずまずの健康状態で迎えた。体重を減らすよう、掛り付け医と家内から言われる(現在73kg)。『アムステルダムの詭計』から鳴かず飛ばずの状態が続き、家庭内で〝一発屋〟の汚名を甘受している。
 月に一度、昔の仲間と銀座の雀荘に集まり卓を囲む。麻雀の勝ち負けはそっちのけで、懐かしい昔話に終始する。その中で必ず「二作目はまだか?」と上から目線で言われ続けた。
 内外の上から目線を受け、二作目を書き上げ出版社に送った。会社員時代に見聞した派閥抗争、疑獄事件の陰で進行した横領に加え、社内不倫に起因する出向左遷などを素材に『社内相関図』とした。会社員は意外とドラマチックな世界だった。
 自称「覆面作家」の家内は一読して「まぁ、タイムリーなんじゃないの?」と上から目線で言い放つ。自動車会社の元カリスマ経営者が保釈中に海外逃亡する事件が発生し、作品と符合する現実を差しているらしい。恐妻からは、減量だけでなく次回作にかかれと上から目線で言われる。(2020年3月28日)

著作品一覧

アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)

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松本寛大(まつもとかんだい)

1971年生まれ。北海道札幌市出身。札幌市在住。

第1回受賞作

玻璃の家

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2009年3月 講談社

 アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。

著者よりひとこと

 本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
 今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)

近 況

 以前より健康状態が思わしくなく、検査を続けていたのですが、ようやく病名が確定。完治の難しい病気に罹患していたことが判明しました。そのため、昨年は三度も入院してしまいました。
 あたりまえのことですが、病というのはなんの前触れもなくおとずれ、生活を変えてしまうものだと実感しました。
 とはいえ、なってしまったものは仕方がありませんし、人は誰でもリスクを背負って生きていくものです。あまり気に病まず、病気と長くつきあっていこうと思っています。幸い、現在のところ、病状は落ち着いています。
 さて、先日、新聞連載を中心にまとめた批評集『現代北海道文学論』(共著・藤田印刷エクセレントブックス)が刊行されました。ご興味があればお手にとってみてください。
 昨年は映画・小説の批評のほか、怪奇幻想文学専門誌「NIGHT LAND Quarterly」(書苑新社)への小説の寄稿、柄刀一さんが中心となってはじめた短編小説コンテスト「ミステリークロスマッチ」への参加もしています。
 また、二年の任期で本格ミステリ大賞の予選委員をつとめることになりました。多くの作品を読ませていただいたのですが、近年のミステリシーンの豊かさに驚いています。(2020年3月28日)

著作品一覧

玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)

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松本英哉(まつもとひでや)

1974年生まれ。兵庫県出身。兵庫県在住。

第8回優秀作

僕のアバターが斬殺ったのか

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2016年5月 光文社

 神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。

著者よりひとこと

 もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)

近 況

 三作めの長編執筆に向けて、プロットを構想中です。過去二作とは毛色の異なるものを目指しますが、方向性がなかなか定まらず、迷走中です。
 どこか懐かしさの漂う小さな街を舞台に、素敵なパン屋と怪しげな古屋敷に集う気さくな人たちを描きます。星が好きな女子大生が主役の本格ミステリです。
 星と言えば、昨年末に興味深いニュースがありました。
 オリオン座のベテルギウスが、過去に例がないほどの急激さで明るさを落としたというのです。ベテルギウスは赤色超巨星と呼ばれるタイプの星で、数十万年のうちに超新星爆発を起こすとされています。今回の現象が超新星爆発と関係があるのか分かりませんが、それが起こった場合、ベテルギウスはとてつもない光を放ったあと、いずれ夜空から姿を消してしまうともいいます。
 悠久の星空でさえ、不変ではないということでしょうか。のんびりと構えていられませんね。オリオンの雄姿が夜空に輝いているうちに、なんとか三作めを仕上げたいと思います。(2020年3月28日)

著作品一覧

僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)