受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

顔写真

森谷祐二(もりやゆうじ)

福島県出身、在住。

第12回受賞作

約束の小説

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2020年3月 原書房

 医師の瀬野上辰史は、日本有数の名家である天城家の後継者として、かつて暮らしていた天城邸へと呼び戻された。雪深い、極寒の地にそびえ立つ、規格外の規模を誇る天城邸で辰史を待っていたのは、その帰りを快く思っていない者からの血腥い警告であった。
 やがて警告は現実となる。陸の孤島と化した天城邸で起きる連続殺人。その謎に、辰史と探偵の新谷が挑む。

著者よりひとこと

 この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞をいただきまして、まことにありがとうございます。敬愛する島田先生を初め、賞の運営に携わったすべての関係者さまに心よりの感謝を申しあげます。
 長年に渡る投稿生活を経て、念願の受賞ではありますが、ここがゴールなのではなく、ここからが本当のスタートなのだと自らによくいいきかせて、さらなる努力を重ねていきたいと思います。 

著作品一覧

約束の小説(2020年3月 原書房)
第10回受賞・松嶋智左2

松嶋智左(まつしまちさ)

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

福ミス第10回受賞作『虚の聖域』

2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。

近 況

 平成最後の年に2作目を上梓でき、令和二年を迎えました。
 最近、警察を舞台にした小説を書いているせいか、遥か昔の、警察官であった頃のことをよく思い出します。その中でも一番大変だったのは、やはり交通機動隊(白バイ)時代でしょうか。訓練がしんどかった。様々な訓練がありましたが、その中に有名な大怪獣の名を取って「モ〇ラ」と名付けられたものがありました。それは、数台のバイクが縦一列で、間を開けずに走ること。特にS字、クランク走行となると車間はほぼゼロに。見つめるのはひたすら前のバイクのブレーキランプだけ。自分のブレーキをかけるタイミングが遅れるとぶつかってしまう。この訓練がどうして「モ〇ラ」と呼ばれるのか。それは、件の怪獣の幼虫に、走行している車列が似ているからだそうです。こんな風に時折、妙な事を思い出すという副作用はありますが、前を走る作家の方々の後ろを、大きく車間をあけられながらもついて行きたいと、そう思っています。
 今年5月、新刊の新潮文庫から新作が出ることになっています。沢山の方に読んでもらえれば嬉しいです。(2020年3月28日)

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社)
貌のない貌 梓凪子の捜査報告書(2019年 3月講談社)
女副署長(2020年 5月新潮文庫)

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松本寛大(まつもとかんだい)

1971年生まれ。北海道札幌市出身。札幌市在住。

第1回受賞作

玻璃の家

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2009年3月 講談社

 アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。

著者よりひとこと

 本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
 今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)

近 況

 以前より健康状態が思わしくなく、検査を続けていたのですが、ようやく病名が確定。完治の難しい病気に罹患していたことが判明しました。そのため、昨年は三度も入院してしまいました。
 あたりまえのことですが、病というのはなんの前触れもなくおとずれ、生活を変えてしまうものだと実感しました。
 とはいえ、なってしまったものは仕方がありませんし、人は誰でもリスクを背負って生きていくものです。あまり気に病まず、病気と長くつきあっていこうと思っています。幸い、現在のところ、病状は落ち着いています。
 さて、先日、新聞連載を中心にまとめた批評集『現代北海道文学論』(共著・藤田印刷エクセレントブックス)が刊行されました。ご興味があればお手にとってみてください。
 昨年は映画・小説の批評のほか、怪奇幻想文学専門誌「NIGHT LAND Quarterly」(書苑新社)への小説の寄稿、柄刀一さんが中心となってはじめた短編小説コンテスト「ミステリークロスマッチ」への参加もしています。
 また、二年の任期で本格ミステリ大賞の予選委員をつとめることになりました。多くの作品を読ませていただいたのですが、近年のミステリシーンの豊かさに驚いています。(2020年3月28日)

著作品一覧

玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)

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松本英哉(まつもとひでや)

1974年生まれ。兵庫県出身。兵庫県在住。

第8回優秀作

僕のアバターが斬殺ったのか

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2016年5月 光文社

 神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。

著者よりひとこと

 もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)

近 況

 三作めの長編執筆に向けて、プロットを構想中です。過去二作とは毛色の異なるものを目指しますが、方向性がなかなか定まらず、迷走中です。
 どこか懐かしさの漂う小さな街を舞台に、素敵なパン屋と怪しげな古屋敷に集う気さくな人たちを描きます。星が好きな女子大生が主役の本格ミステリです。
 星と言えば、昨年末に興味深いニュースがありました。
 オリオン座のベテルギウスが、過去に例がないほどの急激さで明るさを落としたというのです。ベテルギウスは赤色超巨星と呼ばれるタイプの星で、数十万年のうちに超新星爆発を起こすとされています。今回の現象が超新星爆発と関係があるのか分かりませんが、それが起こった場合、ベテルギウスはとてつもない光を放ったあと、いずれ夜空から姿を消してしまうともいいます。
 悠久の星空でさえ、不変ではないということでしょうか。のんびりと構えていられませんね。オリオンの雄姿が夜空に輝いているうちに、なんとか三作めを仕上げたいと思います。(2020年3月28日)

著作品一覧

僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)