受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

原進一さん顔写真トリミング

原進一(はらしんいち)

1948年生まれ。兵庫県神戸市出身。東京外国語大学卒。卒業と同時に全日空(株)に入社し,東京・大阪・福岡・鹿児島・オランダなどで勤務の後,2008年に定年退職。現在は無職で東京都在住。

第8回受賞作

アムステルダムの詭計

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2016年4月 原書房

 戦後の日本犯罪史上、最も鮮烈な印象を残したのは1968年に起きた「三億円事件」であろう。しかし、日本人だけでなく広く世界中の人々の注目を集めた点では、1965年に起きた「アムステルダム運河殺人事件」が勝っている。1965年夏、アムステルダムの運河に浮かんだ日本人死体は頭部・両脚・手首が切断され、胴体だけがトランクに詰められて発見された。当時、新進推理作家として文壇に登場した松本清張氏は本事件を小説化するに当たって綿密に取材し、被害者が替え玉であるとの説を唱えた。しかし、しばらくして自説を撤回するに至る。ヨーロッパの警察機構に加えインターポールも捜査に参画したが、事件は迷宮入りの様相を呈する。(実際に発生した事件を基にしたフィクション)

著者よりひとこと

 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」には、その独特な選考手法に注目していた。それは「敗者復活」のルートが用意されていたからである。選考過程が単にふるいに掛けようとするものではなく、作者の懸命さを見逃すまいとする姿勢に島田荘司先生をはじめ選者の人々の心意気が垣間見え、憧れを抱いていた。「もの書き」はスポーツ選手と同様で、試合に出場することで成長できると確信している。ピッチに立たせてもらえたことを大変光栄に思う。(2016年5月)

近 況

 早朝に目覚めてしまうと、もう眠れない。人生の不思議な変化と言えよう。『アムステルダムの詭計』によって新人賞を受賞して早二年。いまだに感想を寄越してくれる読者は有り難い。次回作への期待がP Cに向かう原動力になる。二作目の原稿は、推敲を重ね出版社に渡し進行中。厳しい目に晒され苦戦が続く。
 苦戦を強いられるのは私だけではない。家内は昔取った杵柄と書道を再開したが、なかなか昇段できない。昼食後はウォーキングに出掛ける。ミステリーの構想に夢中になると、ついつい俯く。即座に、背後から家内の警告が響く。鬱憤を晴らすように矢継早に指示が飛ぶ。
 「項垂れないで! 私が威張ってるように見えるでしょ。視線を上げて!」
 浅川に青鷺の姿が目に入る。脚許に餌が寄せるのを待っている。帰途でも、姿勢を変えずひたすら川を覗き込む。人間とは尺度の異なる不思議な〝鳥時間〟があるのだろう。人生だけでなく自然界はミステリーに満ちている。(2018年3月31日)

著作品一覧

アムステルダムの詭計(2016年4月 原書房)