受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

平野俊彦(ひらのとしひこ)

1956年、栃木県足利市生まれ。八王子市在住。薬学部教授として教育研究に従事しながらミステリーを執筆。

第13回受賞作

報復の密室

2021年 講談社

多摩薬科大学大日方教授の娘千佳が、施錠された教室で首を吊った。警察は、自殺を装った殺人事件として捜査を始める。
千佳は生前、ミステリー賞に応募中の人物と付き合っていたという。大日方は、旧友の出版社長の協力を得て新ミステリー賞を立ち上げ、やがてその応募者の中に思わぬ人物を見出す。大日方が、学内の遺伝子組み換え実験室にその人物を呼び出そうとした時、完全な密室と化した実験室内で奇怪な第二の殺人が起こる。

著者よりひとこと

この度は、素晴らしい本格ミステリーの賞である本賞を受賞させて頂きましたこと、誠に身に余る光栄に存じます。島田先生を始め選考委員の皆様、福ミス関係者の方々、出版社の方々、そして福山市の皆様に、心よりお礼申し上げます。自分が著した本格ミステリー小説によって、多くの読者を驚かせることが私の夢でした。これから島田先生や出版社の方々のご指導を頂きながら、より良い作品を書き続けることに期待を膨らませています。(2021年3月)

近 況

 信州上田にて、年に長編一、二作のペースで執筆を続けています。今年は春に一作を出版する予定です。

 また昨年二月から、東京都薬剤師会が発行する「都薬雑誌」という月刊誌に、隔月で連載を開始しました。この連載企画は「薬学はミステリー」という主題で、自作イラスト入り短編ミステリー小説的な読み切りエッセイを掲載するコーナーです。毒物はミステリー小説に良く出てきますが、薬物を使ったトリックを登場させるミステリー小説は意外に少ないように思います。本企画では、薬物相互作用、薬物の禁忌症、オーバードースなどを背景とした、薬物がトリックの主役となるようなショートショートを書いています。ちなみに本年二月号には、その第8回目で医薬品のボツリヌストキシン(ボトックス)を扱った「群衆にまぎれて」が掲載されています。

 もう一つ私の好きな小説ジャンルが歴史ミステリーです。二〇二三年には、戦中の満州を舞台に三人のユダヤ人が連続密室殺人事件に巻き込まれる本格歴史ミステリー「ユダの密室」を出版しました。今年は、太平洋戦争末期の疎開村で起こった連続殺人事件を主題とする本格歴史ミステリー小説を出版する予定です。(2025年3月)

著作品一覧

報復の密室(2021年2月 講談社)
幸福の密室(2021年9月 講談社)
ユダの密室(2023年3月 日本橋出版)
冒瀆のキメラ(2023年3月 アメージング出版)
薬師寺ロミの推理処方せん(2024年1月 講談社)
奇計の村(2025年4月 日本橋出版)