受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

須田狗一(すだくいち)

1953年大阪市生まれ。IT会社に30年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら推理小説を執筆。

第9回受賞作

神の手廻しオルガン

 1942年、ナチスの国家保安部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから72年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。
 その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子中学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが……

著者よりひとこと

 ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために「福山ミステリー文学新人賞」に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います。

近 況

 とうとう私も七十歳を迎え、三人の子供たちが妻と私の古希を祝ってくれました。この歳になると、これからの先の人生がはっきりと見えてしまいます。家族に囲まれて幸せではあるのですが、曖昧さのない人生。先の人生の曖昧さが実は「希望」と呼ぶものではなかったのかなあ、などと考えてしまいます。かつては一時間でできたことが二時間かかり、二、三日でできたことが二週間かかったりします。出版される予定はなくとも書き溜めているミステリーも以前は一年に三篇は書けたものが、今は一年で一篇をものにするのが精いっぱいです。
 今やミステリーは私にとって日記のようなものかもしれません。ロシアのウクライナ侵攻や地球の温暖化など、人間の愚かさを痛感する日々。その日々を原稿に書き連ねています。
 今年も胸がザワザワする日々を過ごしそうです。(2023年3月31日)

著作品一覧

神の手廻しオルガン(2017年5月 光文社)
徳川慶喜公への斬奸状(2018年8月 光文社)