受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

酒本歩(さかもとあゆむ)

1961年、長野県生まれ。東京都在住。早稲田大学政経学部卒。
2016年、かつしか文学賞優秀賞受賞。

第11回受賞作

さよならをもう一度

2019年3月 光文社

 ドッグシッターの風太に一通の喪中はがきが届く。以前交際していた美咲の訃報だった。まだ32歳なのにと驚く。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも思い出し連絡を取ろうとするが、消息がつかめない。
 別れたとは言え、三人は風太にとって大切な女性だった。彼女たちに何が起きているのか。いてもたってもいられない風太は三人のことを調べ始める。彼女たちの友人、住んでいた家、通っていた学校。しかし、彼女たちはまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた。
 あり得ないことに激しく動揺し、混乱する風太。消耗しつつも、彼女たちの生きた証を捜し続けるが・・・・・・。

著者よりひとこと

冒頭で主人公が出くわした謎は、作者の私も答えを見つけるまでに、書き始めてから数ヶ月かかりました。
『あり得ない謎をロジカルに解決する』。私が今作で挑戦し たことが、島田先生が唱える「本格ミステリ」の定義に通ずることに気づき、応募した次第です。
読んでくださる方が、主人公、私と同じように「あり得ない」と戸惑 い、そして解答にたどり着いたとき、「まさか」という興奮を味わっていただけたら望外の喜びです。

近 況

○令和四年は、三作目『ロスト・ドッグ』を光文社さんから出版しました。もう二年ほど犬と暮らしています。自分の経験したことに引きつけて、前作までとはタイプの異なるミステリを書けたと思っています。
○デビューしてから三年が経つわけですが、小説と自分の関わりについて、どこかに書いておきたくなり、noteにまとめました。
 小説家になるまでの試行錯誤、そして自分なりの執筆ノウハウについて約60本の記事にしました。良い振り返りが出来ました。ご興味がありましたら【酒本歩 note】で検索ください。
○現在は新作に向けて日々、構想を練っています。3作書いてみて、小説は難しい、とあらためて感じています。読者として読む方がどれだけ簡単で楽しいだろうと思うこともしばしば。
 それでも「これは」と思うテーマを見つけて、没頭してキーボードに向かうあの時間。夢幻の世を彷徨う境地は他では味わうことはできません。
 この一年も、ゆめまぼろしの世界を歩くことになりそうです。(2023年3月28日)

著作品一覧

幻の彼女(2019年3月 光文社)
幻のオリンピアン(2020年3月 光文社)
ロスト・ドッグ (2022年8月 光文社)