受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

松本寛大(まつもとかんだい)

1971年生まれ。北海道札幌市出身。札幌市在住。

第1回受賞作

玻璃の家

2009年3月 講談社

 アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。

著者よりひとこと

 本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
 今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)

近 況

 昨年は、私が所属する探偵小説研究会名義の本が2冊刊行されました。『妄想アンソロジー式ミステリガイド』(書肆侃侃房)と、『本格ミステリ・エターナル300』(行舟文化)です。前者はおのおのの執筆者が自由にテーマを定めたミステリガイド。後者は2011年から2021年までに刊行された国内の本格ミステリ300冊を取り上げて解説を加えたものです。よろしければ過去に刊行された『本格ミステリ・クロニクル300』『本格ミステリ・ディケイド300』(ともに原書房)とあわせてお読みください。近年の国内本格の歴史が概観できることと思います。ほか、「ジャーロ」の「日本ミステリー文学大賞の軌跡」と題した連載の、鮎川哲也先生の回を担当しました。わずかなりとその業績を伝えられればと思い、書いた次第です。

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 今年は年頭からたいへんなニュースが飛び込んで来て、胸を痛めております。能登半島地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。(2024年3月)

著作品一覧

玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)