受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

松嶋智左(まつしまちさ)

1961年大阪府枚方市在住。2005年「北日本文学賞」,2006年「織田作之助賞」受賞。

第10回受賞作

虚の聖域 梓凪子の調査報告書

2018年5月 講談社

元警察官にして探偵・梓凪子に舞い込んだ依頼は最悪のものだった。
理由はふたつ。
ひとつは、捜査先が探偵の天敵とも言える学校であること。
もうひとつは、依頼人が、犬猿の仲である姉の未央子であること。
大喧嘩の末、凪子は未央子の息子・輝也の死を捜査することになる。
警察は自殺と判断したにもかかわらず、凶器をもった男たちに襲撃された凪子は、事件に裏があることを確信するが――。
責任を認めない教師、なにかを隠している姉、不可解な行動を繰り返す輝也の同級生――。
すべての鍵は、人々がひた隠しに守っている心のなかの“聖域”だった。

著者よりひとこと

 ミステリー小説が好きで、ずっと書き続けてきましたが、結果が出ないことに疲れ、ミステリーを書くのをやめようかと思い始めていました。今回の作品は、そんな思いと共に仕上げたものです。それが今回、このような賞をいただけたということは、私にとっては正に奇跡を見るような驚きであり、望外の喜びです。
 わたしの途絶えかけた気持ちを太い糸で繋ぎ留めてくださった、島田荘司先生や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。このタイミングで授かったチャンスを大切にして、気持ちを新たに、更なる飛躍を目指して書き続けていこうと思います。

近 況

 2024年、辰年です。今年は久しぶりに福ミスの表彰式が行われるということでとても楽しみにしています。
 2023年は、わたしにとって、忘れられない記念の年となりました。本を出していただけたこと、更には黒川博行氏にお話しを伺う機会を得たことです。偉大なミステリー作家を前に緊張しましたが、大変有意義な時間を過ごさせていただきました(拙著『流警』所載)。それに加えて昨年は、推し活として貴重なイベントに参加できたことがあります。長年、ファンとして応援し続けておりました方と、バスツアーで仙台を巡りました。対局のときのお姿とは違って、リラックスされて気さくにお話しくださったことは、わたしの一生の宝物です。そして、そのツアーのなかで震災遺構である荒浜小学校を訪れたことが、心に残りました。当時の被災の状況などを教えていただき、自然災害の凄まじさやその後の復興のご苦労などを直に伺うことができたこと、小学校の窓から見た景色が胸に刻まれ、生涯忘れることのないものとなりました。
 さまざまな経験をした兎年でしたが、今年もいっそう励み、楽しい時間を過ごしていただけるような作品を作りたいと思います。
 今のわたしにできることをとにかく頑張ろうと思えた一年でした。(2024年3月)

著作品一覧

虚の聖域 梓凪子の調査報告書(2018年5月 講談社)
貌のない貌 梓凪子の捜査報告書(2019年3月 講談社)
女副署長(2020年5月 新潮文庫)
匣の人(2021年4月 光文社)
女副署長 緊急配備(2021年6月 新潮文庫)
開署準備室 巡査長・野路明良(2021年9月 祥伝社文庫)
三星京香、警察辞めました(2022年6月 ハルキ文庫)
黒バイ操作隊 巡査部長・野路明良(2022年度9月 祥伝社文庫)
女副署長 祭礼(2022年10月 新潮文庫)
バタフライ・エフェクト・T県警警務部事件課(2022年11月 小学館)
流警 傘見警部交番事件ファイル(2023年7月 集英社文庫)
三星京香の殺人捜査(2023年8月 ハルキ文庫)
出署拒否 巡査部長・野路明良(2023年9月 祥伝社文庫)