島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。
第12回受賞作
2020年3月 原書房
昨年は腰を痛めて通院したり、急激に視力が衰えたり、思考力が鈍ったり、気力が尽きて塞ぎこんだりと、色々と年齢的な老いを実感させられた一年でした。
もう若い頃のような無理はできないな、とは感じつつも、創作に関してはまだ意欲が衰え切っておらず、それなりに色々な挑戦をして、成長も実感できたので、決して悪いだけの年ではなかったのかなと思います。
そんな感じで、今年も引き続き自分なりに納得できるよう、なんとか頑張っていけたらいいなと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。(2023年3月28日)
約束の小説(2020年3月 原書房)
第10回受賞作
2018年5月 講談社
2023年卯年です。もうずい分、福山を訪れていません。行動制限のなくなった今年こそはと思っていますので、良い季節にぜひ伺いたいと思います。
さて、わたしの2022年ですが、一番のイベントはやはり、自宅リフォームでしょうか。二か月に渡る耐震補強を含めた工事で、仮住まいとして引っ越しを行いました。そうして気づいたことは、とんでもなくものがあるということと、その大半が使っていないもの、つまりなくても困らないものだったということでした。こうして人生において最初で最後と思われる断捨離を敢行しました。結論をいえばとても良かったです。すっきりしました。そして、物欲というものがなくなった気がします。その分、食欲に上乗せされた感はありますが。
創作活動については、昨年は大変ありがたいことにいくつか作品を刊行していただけました。2023年も集中して励み、警察小説を上梓したいと思っております。気力体力の続く限り、加えてリフォームしたせいで老後の資金がない!という切羽詰まった状況を書く上での大きな推進力として頑張ります。
一人でも多くの方に読んでいただけることを心より願っております。(2023年3月28日)
第1回受賞作
2009年3月 講談社
アメリカ・マサチューセッツ州の小都市。そこにはかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。だが、少年は交通事故にあって以来、人の顔を認識できないという「相貌失認」の症状を抱えていた。視覚自体に問題はなく対象の顔かたちが見えてはいるものの、その識別ができないのだ。犯人は誰なのか?州警察から依頼を受けた日本人留学生・若き心理学者トーマは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁…。
本作は、少しでも新しいミステリーをという模索から生まれたものです。力が及ばなかった部分が多々あることは自覚しておりますが、栄えある福山ミステリー文学新人賞を受賞できたのも、そうした様々な模索の痕跡を評価していただいたからかもしれません。
今後とも、ミステリーのさらなる未来へ向けての挑戦心を忘れずに、執筆に励みたいと思います。(2011年6月)
玻璃の家(2009年3月 講談社)
クトゥルフ・ワールドツアー クトゥルフ・ホラーショウ(2011年2月 アークライト:共著)
ミステリ・オールスターズ収録「最後の夏」(アンソロジー 2010年9月 角川書店/2012年9月 角川文庫)
妖精の墓標(2013年3月 講談社)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ(2013年3月 エンターブレイン:共著)
北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅(2014年5月 寿郎社:共著)
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2015(2015年9月 エンターブレイン:共著)
クトゥルフ神話TRPG モジュラークトゥルフ(2016年11月 エンターブレイン:共著)
第8回優秀作
2016年5月 光文社
神部市旧居留地にある古ぼけたビルの一室。そこは仮想空間『ジウロパ世界』と現実が並存する特殊な場所であった。高校生の日向アキラは、自分のアバターを操作し、遠く離れた家からそのビルの一室に遠隔アクセスした。そこで待っていたのは、セルパンという名のアバターだった。短いやりとりののち、ふたりは口論となり、ついにはアキラの操るアバターがセルパンの喉もとを刀で掻っ切ってしまう。翌日、そのビルの部屋で若い男の遺体が発見された。男は何者かに喉もとを切られ、無惨にも殺されていた。しかもその男は、昨夜セルパンを操作していたプレイヤーであるらしかった。アキラは自問する。「あれはぼくがやったのか?」。果たして男を殺害したのは、本当にアキラなのか。その答えを探るべく、アキラは行動を開始した。
もう十年近く前になりますが、島田荘司先生のサイン会にて先生からかけていただいた温かい言葉は、執筆を続ける上でいつも大きな励みとなりました。また、そのサイン会直後に立ち上がった“福ミス”は、ずっと進むべき道しるべでした。このたび「優秀作」という身に余る評価を賜り、言葉にできないほどの喜びを感じております。再び背中を押してくださった島田荘司先生と“福ミス”関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。(2016年5月)
僕のアバターが斬殺ったのか (2016年5月 光文社)
幻想リアルな少女が舞う(2018年1月 光文社)