受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

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金澤マリコ(かなざわまりこ)

1958年千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

ベンヤミン院長の古文書(帯なし)

2015年11月 原書房

著者よりひとこと

優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

2015年11月、第7回福ミス優秀作をいただいた作品を、『ベンヤミン院長の古文書』として原書房より刊行いたしました。
その後、地元新聞社に“教師と作家の二足のわらじ”として取りあげてもらったことをきっかけにラジオに出演。記事をポップにして売り込んでくださった書店長さんと出会い、勤務先の学校で生徒にサインを頼まれる……と、ささやかな私の人生にとっての「初めてづくし」で2015年が暮れました。
3月になった現在、次の作品の資料集めがひと段落しストーリーもほぼ固まり、あとはひたすら書くだけ――とは簡単にいきませんが、中世のパリを舞台にしたミステリをお届けできますよう、孤独なそしてワクワクする作業に集中したいと思っています。
さいごに、最近いちばんおいしかったもの。あこがれの某ホテルの優雅なアフタヌーンティー。絶品のスコーンとクロテッドクリーム!イギリスの食事はいまいちなどといわれますが、少なくともティータイムはそんなことないですね。(2016年3月31日)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)

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叶紙器(かのうしき)

1965年、大阪府生まれ。大阪府在住。会社員。

第2回受賞作

伽羅の橋

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2010年3月 光文社

介護老人保健施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。昭和二十年八月十四日、大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという―穏やかそうなマサヲが何故そんなことをしたのか?典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をする。死んだはずの夫からの大量の手紙、犯行時刻に別の場所でマサヲを目撃したという証言、大阪大空襲を描いた一編の不思議な詩…様々な事実を積み重ね、典座にある推理が浮かんだそのとき、大阪の町を未曾有の災害・阪神大震災が襲う―!!時を経た大戦下の悲劇を、胸がすくようなダイナミックな展開で解き明かしてゆく、人間味溢れる本格ミステリー。

著者よりひとこと

この『伽羅の橋』は、いちど下書きをしているのですが、その間も不安で不安でしかたがありませんでした。
こんなことを書いていいのだろうか、実直に足で稼ぐ調査が本格を名乗るにふさわしいだろうか、後半で話の性格が変わってしまうけどいいのだろうか。
そんな内容もさることながら、その分量と構成に、自分自身がひるんでしまったのです。なんといっても、下書きの段階で、三百枚ありましたから。
特に、活劇シーンで終わるという締め括りは、前半と全く違う話の展開にもなるため、長編二本を同時に書くようなものでした。無難に済ます方法もあるだろうから、分不相応なことはやめて推理ものの本分を尽くそう。そうも思いました。
ではなぜ書いたのか。
これは、なぜ福ミスに応募したのか、ということに密接に関係しています。それは実に単純なことで、私にとって最も選考基準の分かりやすい賞だったからです。
島田荘司を驚かせること。
それだけを目指せば、応募資格を得られるのです。他に何も考える必要はありません。ただ、そこにあるハードルは、高いのだろうとは分かっても、どれだけの高さをクリアしなければならないか、は見当も付きません。
乾坤一擲を持っていこう。
それしかないと思いました。できる全てを込めよう、そう決心しました。だからこそ、活劇シーンは採用されたのです。
どれだけの高みにのぼれたか、書いたあともなお不安です。
次のハードルを越えれば、少しは分かるのでしょうか。(2011年6月)

近 況

私は老健施設で働いているため、カルテを目にする機会が多いのですが、大概は読み難いです。特に、古参の医師は独語で書いたりしますから、こうなるともうお手上げです。
昨年十一月、系列の病院で非常勤の女性医師を雇い入れました。仮にAさん、いやBさん……、いやいやABさんと呼びましょうか。
この先生、下の名前が風変わりなんです。宮沢賢治作品からの引用らしく、名付けた父上と似て奔放な方だと事務局長の話もあり、そのうち会えるものと楽しみにしていました。
ところが年明けすぐ、残念ながらABさんは、呆気なく退職してしまいました。
風と共にやってきて、そして去っていった又三郎のよう? いえ、止まることなく流れる、砂の女のようではありませんか。
さて皆さん、ABさんの正体が分かりますか。(2016年3月31日)

著作品一覧

伽羅の橋(2010年3月 光文社/2013年2月 光文社)
回廊の鬼(2014年4月 光文社)

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神谷一心(かみやいっしん)

1980年生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。2004年,行政書士試験合格。2009年,第16回電撃小説大賞にて「精恋三国志Ⅰ」で電撃文庫MAGAZINE賞を受賞。

第7回受賞作

たとえ、世界に背いても

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2015年5月 講談社

著者よりひとこと

この度は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という素晴らしい賞を頂き、光栄に思っています。島田先生、事務局の皆様、一次及び二次選考に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。今から二十年前、まだ中学生だった頃から、いつかミステリー小説を書きたいと思っていました。そのチャンスを与えて下さった皆様の期待に応えられるようにこれからも努力していきたいと思います。(2015年5月)

近 況

昨年の五月、講談社より「たとえ、世界に背いても」が刊行されました。これもひとえに皆さまのおかげです。島田先生並びに関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
「たとえ、世界に背いても」を刊行して後、新作の発表に向けて色々と打ち合わせをしております。ただ、無名の新人作家が書いた六百枚を超える長編はなかなか企画が通らないようで、やや苦戦しているところです。
私には受賞以前に書きあげてあったミステリーの原稿が3000枚ほどあります。幸いなことに、そのうちの一つ、純愛ミステリーを担当編集者が気に入って下さったので、現在はその作品を改稿している最中です。刊行は未定ですが、少しでも早くお披露目できるよう頑張ります。
近況ですが、昨年はプロットがなかなか通らなかったので、そこまでたくさん執筆はしておりません。これではいけないと思い、腕が落ちないように500枚近い長編ミステリーをひとつ、個人的に執筆していました。
幸運なことに当初、予想していたよりもその作品はかなりいい出来に仕上がりました。まだ具体的に働きかけはしていませんが、もしかしたら将来、刊行できるかもしれません。
現時点で十代の少年少女が出てくる学園ミステリーや宗教がからむ金融ミステリー、ハイジャックにからんだ航空ミステリー、プロスポーツに関するミステリーなどを個人的に執筆しています。他にもアイデアはたくさんあって、どこか出版させてくれる版元がないか探しているところです。
まだ出版業界に入って一年も経っておらず、色々と初めての経験に戸惑うばかりです。少しでも早く新作の長編ミステリーを発表できるよう頑張ります。(2016年3月31日)

著作品一覧

たとえ、世界に背いても(2015年5月 講談社)

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川辺純可(かわべすみか)

広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部卒。京都府在住。

第6回優秀作

焼け跡のユディトへ

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2014年11月 原書房

戦後間もない瀬戸内のとある軍港都市を舞台に起こる連続婦女殺人事件。 被害者には能面が被せられていたという。 やがて被害者にある共通点があることが分かり、それによって「次の被害者」が絞れていくのだが……。

著者よりひとこと

新刊が出た日は鬼のごとく野暮用を片づけ、リアルタイムで味わう幸運を噛みしめつつ、一路、島田ワールドへ! 本が厚ければ厚いほど福福。思えばずっと心躍る旅人でした。 まさにその島田先生から「優秀作」という栄誉を頂くなんて夢のようです。 いつか私も私独自の世界を創造すべく、福ミスの名に恥じぬよう日々精進を重ねてまいりたいと存じます。このたびは本当にありがとうございました。(2014年11月)

近 況

毎朝、ラジオ体操をします。パソコン、スマホに向かう時間が長き時代こそ、見直されるべき日本文化。改めて、無駄のない動きと構成に感じいる昨今です。
頭の体操は読書。時間が許す限り、じっくり「別人生」を堪能しております。この一年は特に「読書家(?)」として、多くの本を読み、至高の時間を賜った気がいたします。
自身の創作は第二作。「焼け跡のユディトへ」よりも、また少し本格寄りです。私の原点に戻った物語。ミステリ好きの本領発揮、といったところでしょうか。
そして――。希望としてはやはり女子に捧げる「ロマンティックミステリ」。そしてさらに勉励し「古い時代を舞台にした歴史ミステリ」。
ご縁がありましたら、こちらもどうぞよしなに、お願い申し上げます。

良くも悪しくも日常。
つかの間、手に取る方が「倦怠」を手ばなすよすがになれば、と、念じつつ。(2016年3月31日)

著作品一覧

焼け跡のユディトへ(2014年11月 原書房)
時限人形(2016年9月 原書房)