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第14回 選考過程・選評
応募総数
76
第1次選考通過作品
断頭台のマリーへ
野島夕照
選評
担当編集者
首無しの女子大生の遺体が屋上プールで発見されます。事件解明と主人公の出自がマリーアントワネットの生涯と重ねて描かれます。この歴史的事件を解説しながら犯人探しをするという立て付けがあまり効果的になっていないように感じました。
第1次選考通過作品
桎梏の舟
口木正次
選評
担当編集者
冒頭の不定形生物の描写や会話はとても面白かったです。しかしその後は単調で強引な人間ドラマが延々と続き、宇宙艇内や地球社会の様子もまったく分からず、壮大な舞台設定を投げっぱなしにした印象でした。「動機は何か」という謎の明確な答えもなく、ミステリーとして成立していないのではないでしょうか。
第1次選考通過作品
拒絶の行方
高清水涼
選評
担当編集者
昭和の世界観の昭和の刑事もの。書き口はこなれている感じを受けましたが、視点人物があっちこっちに飛び回って読むほうは落ち着きません。古い器に古い物語を落とし込んだ、ある種の典型を感じました。仕掛けにも目新しさはなく、また、容疑者に恋する刑事というのも、物語にどのような意味があったのかわかりませんでした。
第1次選考通過作品
風の花
都幾川遼
選評
担当編集者
自動運転のメカニズムやスロバキアの風土など、専門的なテーマと臨場感のある文体が光っていました。しかし、著者が調べたことや得意なことだけを書いている印象がつきまといます。スロバキアの描写もここまで書くと、旅行記のようです。論理で真相にたどり着ける物語になっていない点も残念でした。
第1次選考通過作品
マリン・テックの隠秘
遠野有人
選評
担当編集者
冒頭から2050年の東京が舞台とあって、期待を持って読み進めたのですが、まず世界観に未来らしさはあまりなく、ときおり想定の範囲の「未来の道具」が出てくるだけで、時系列の設定に疑問が残りました(もちろん事実ベースの仕掛けからの逆算であることは理解できますが)。また、肝心の事件が過去のもので、これが物語のサスペンスを奪っています。物語の構造にもっと気を配って欲しかったです。
第1次選考通過作品
うたかたの夢蟲
雨地草太郎
選評
担当編集者
物語の運びはうまいと思いました。架空の設定をうまく使っていて不自然さもさほど感じず、全体のリズムも悪くないです。「解決編」もひっくり返し方もそつなくこなしている印象でした。が、物語自体が地味すぎて面白みに欠けていたのが、とにかくもったいない。メリハリや伏線をもっとシャープに入れ込めればもっと良くなると思います。
第1次選考通過作品
レクイエムは届かない
野島夕照
選評
担当編集者
シンプルな文体とポップな登場人物たちは魅力ですが、物語全体を通してやや幼い印象を受けました。30年前の遺体を最近の遺体と間違えたり、DNA鑑定をしないまま捜査を進め、誤った結論を導くなど、警察が機能していません。最後に結婚に至るふたりの気持ちもまったく理解できず、無理にハッピーエンドを作ったように読めました。
© FUKUYAMA MUSEUM OF LITERATURE