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島田荘司からの
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第10回 選考過程・選評
応募総数
118
第1次選考通過作品
エイトレターズ・ミッシング
工藤転寝
選評
担当編集者
高校生とその実の父親(?)の謎解き冒険ものとして、気軽に読める読み物としては評価できます。ただし小説としての厚みやミステリーとしての魅力には欠けており、下敷きになっている四柱推命の意味合いも、家族の秘密も意外性がなく、とってつけたような印象になってしまっています。
第1次選考通過作品
フラクタル 名探偵姉川拓海の挨拶
姉川桜子
選評
担当編集者
変わり者の探偵、カードの見立て、プロファイリングなど、キャッチーなアイテムをたくさん盛り込んでいますが、そのどれもが新鮮味に欠け、全体的に既視感の募る作品でした。日本とドイツの2箇所を舞台にした必然性もなかったように感じますし、時系列順に書かれたほうがよかったと思います。また犯人が、ここまで複雑な事件を起こす必然性が希薄で、「支配される実行犯」のふりをする理由もよく分かりませんでした。キャラクターの描き分けなどはお上手で、リーダビリティの高い文章を書ける方だとは思います。
第1次選考通過作品
死者が犯した殺人
瞬那浩人
選評
担当編集者
多視点で小説を書く場合は、繊細な注意が必要です。とくに犯罪者の視点を入れる場合は、フェア・アンフェアがぎりぎりになりますから、犯人の視点は、倒叙などではない場合、 極力入れない方がよいかと思います。
第1次選考通過作品
緑色の涙
野乃はるか
選評
担当編集者
「あれとこれをくっつけたら読者が驚くのではないか」という著者の意図が透けて見えそうな作品。フィクションとはいえ「現実」を舞台にした物語なので、そのぶんのリアリティは必要です。さらに、関係者が多すぎるにもかかわらず、あまり書き分けられていないために、物語全体が貧弱に見えてしまいます。プロローグにエジプトの話を持ってきたうえで事件を描くなら、それに相応しいスケールを用意して示せないと、読者は落胆してしまいます。
第1次選考通過作品
黒いマリア
南野海
選評
担当編集者
文章は粗いものの、要所要所の描写に不思議なリアルさと切迫感があり、大仕掛けの試みが成功していれば、傑作になる可能性を感じました。ただ、洗脳のあまりの万能さや時系列に怪しい箇所が多いなど、もっと真剣に考えてほしい箇所も散見されます。さらに、ミステリでネタの解説を作品外の注釈で行うのは、禁じ手です。作品内の一文一文で読者を説得するつもりで、もう一度文章を精査してみてください。
© FUKUYAMA MUSEUM OF LITERATURE