第13回 選考過程・選評応募総数70

第1次選考通過作品

トロント殺人事件吉田右京

選評担当編集者

文章はやさしくわかりやすいのですが、ややご都合主義的な運びが気になりました。また、海外の紀行文のような街の紹介は、あまりやり過ぎると物語への関心が薄れてしまいます。めずらしい毒殺のトリックはさすが専門家と感心しました。できれば設定を変えて(舞台を国内にするなど)、この仕掛けを読んでみたいと思いました。

第1次選考通過作品

透明な凶器西正人

選評担当編集者

脅迫状で始まる冒頭が専門知識に支えられており、引き込まれました。ただ、登場人物が連続して、上野、井上、井下、と似た名前が出てきてしまっています。読者が物語に集中するために登場人物名は必要最低限にして、誤読のないようにした方がよいでしょう。事件は起きているのに興味が削がれてしまう部分があるのでキャラクターを強化するとよいと思います。また関係者が殺されたかもしれないのに調べている刑事たちの反応が薄すぎる点ももったいなく思いました。ミステリーにとって容疑者の選定はとても大切ですが、そこが作者の都合に感じられてしまい、思い込みで解決したように感じられたのは残念でした。

第1次選考通過作品

モナ・リザの嘲笑荒尾和彦

選評担当編集者

美術作品に関してはよく調べて書けていると思います。作品の来歴を追う過程はおもしろく、名作に潜む歴史を超えた謎を明かしていくのかと期待しましたが、最終的にコンゲームにすり替わったのはもったいなく思いました。そのため、本格ミステリと呼べるトリックがなかったのも残念です。

第1次選考通過作品

瞳の中の写楽荒尾和彦

選評担当編集者

美術、歴史の造形が深く楽しませていただきました。会話のテンポもよく、ストレスなく読むことができます。ですが、「写楽は何者か」という今作にとって一番大事なアイディアの部分で島田荘司先生をはじめ先行作品を超える意外性がなく、「今読まれるべきもの」として最後までは推すことができませんでした。

第1次選考通過作品

巨星たちの墓標平野俊彦

選評担当編集者

館内図を見た瞬間にトリックがほぼ分かってしまうのが残念でした。一人二役も古すぎます。謎の人物からの招待で知識人が7人も集まったり、次々と起こる殺人事件に誰も慌てなかったりと、人物の思考や感情を描けていない点も気になりました。

第1次選考通過作品

螺旋のもつれ葉月駿

選評担当編集者

社会派の物語にBL要素を加えるというアイディアは新鮮で面白く読ませていただきました。ただしそれが作品として練られ、昇華されるまでには達していないように思います。ミステリに限らず物語を構成するには人物や事件などの横軸だけでなく、「謎」を追いかけるという縦軸が必要不可欠で今作にはそれが欠けていたように思います。地方都市の地縁や世代を超える因縁など、「人間の息遣い」を上手に描ける方だと思うので、ぜひ縦軸を意識し、なるべく短い枚数で書き上げるよう次回作以降がんばってください。

第1次選考通過作品

グレイシャルミステリー水野える

選評担当編集者

文章のセンスがあり、キャラクターも魅力的です。しかし、冒険ファンタジーの趣が強く、ミステリのとして評価は難しいと感じました。古代パートが長く退屈で、未知の言葉がたくさん出てくるのも読者のストレスを高めます。現代パートも進行形の事件がおこらず緊迫感に欠けます。楽しんで書いていることは伝わりますが、今後は「読者を楽しませる」ことを意識して書くことをお薦めします。

第1次選考通過作品

選ばれた子供桐島裕

選評担当編集者

衝撃的なシーンからはじめ、読者を逃さないという試みはうまくいったと思うのですが、その後の展開が遅いため読むスピードにブレーキがかかってしまったように思います。事件の謎とその背景については読ませる分量に対して説得力を持たせることが厳しかったのではないでしょうか。せっかくの力作なのでラスト10ページを読めば中身がわかるといった作りにならないよう心がけて次回作につなげてください。