第17回 選考過程・選評応募総数68

第1次選考通過作品

シックス・ナイン館の殺人冬海 凜

選評担当編集者

会話文が状況やキャラクターを説明するために書かれており、描写がやや古く感じました。自分が作り出した世界を、どうすれば読者に楽しんでもらえるのか、という視点でもう一度文章・構成を見直していただけたら、と思いました。登場人物が高揚していても、読者が高揚するとは限りません。また謎が小さく、事件が起こるまでが遅く、真犯人の動機にも現実味が不足しているように感じました。

第1次選考通過作品

7to7 志摩スペイン村殺人事件高沢 渉

選評担当編集者

志摩スペイン村の描写については楽しめました。文章については、句読点の位置は潔いのですが、擬態語、擬音語が多用されており古く感じます。会話文も20年前のそれのように思えます。真相については、意外な犯人、というだけでなく、その犯人が判明することで読者の感情が動くようにしなければなりませんが、未達成に終わっていると思いました。

第1次選考通過作品

飛ぶな、ルーシー成田 京一

選評担当編集者

一人称の地の文ですべてを説明してしまっているように思いました。冒頭の内面描写とラストの内面描写、どちらもプロットに基づいて心情を吐露しており、こちらの胸を打つようになっていませんでした。文章も同じことを繰り返し書かれており、推敲が足りていないと感じます。The Beatles を題材にした小説は多くありますが、その点でも他の作品に比べて理解が深いとは思えませんでした。

第1次選考通過作品

鶴翼館の殺人犬上 義彦

選評担当編集者

物語の展開が遅く、読者を引っ張る力が弱いように感じました。ストーリーにどう関係してくるのかがわからないエピソードが多く、展開があってからも、殺人が犯人の思う通りにうまくいきすぎているように感じます。プロット通りに動かない人物を、もう少し追いかけてみてはいかがでしょうか。

第1次選考通過作品

ウミコさんの覚めない夢黒澤 主計

選評担当編集者

表現力のある文章で、オカルトミステリーの雰囲気をうまく演出できていると思います。しかし、さまざまな謎が続々と出現し、何がメインの謎なのか、物語の縦軸がわかりにくく感じました。被害者の妄想を持った人たちが集まって暮らしていること、さらにその人たちの証言を元に推理するという設定が荒唐無稽すぎると感じます。ウミコの正体や刺殺の真相は驚きがあったので、現在進行形の連続殺人事件として書いたほうが面白くなったと思います。不必要な設定を足し過ぎて読みにくくなっているので、要素をそぎ落とすことをおすすめします。

第1次選考通過作品

メシアの十三階段相沢 くろす

選評担当編集者

登場人物が生き生きと魅力的に描かれており、軽やかな筆致と小気味良い会話で、リーダビリティの高い作品です。しかし舞台設定やキャラクター造形が古く、ミステリとしての謎も弱いと感じました。メインの叙述トリックや性転換等に既視感があり、きれいにまとまってはいるのですが、新しさを感じられない点が残念でした。また、ポップで爽やかなストーリーに対して、タイトルが暗すぎる印象です。

第1次選考通過作品

佐倉美琴の仮説と検証安芸 那須

選評担当編集者

テンポが良く読みやすい文章に好感を持ちました。しかし仮説の手がかりが弱く、推理の納得度が低いと感じます。また、後半の事件の謎が魅力的でないうえ、登場人物が順に喋っているだけで動きがなく、冗長で退屈に感じました。舞台設定や事件そのものは現実的なので、警察庁調査員制度というファンタジー設定が必要だったのかという点も疑問が残ります。

第1次選考通過作品

失意の星座大和川 義之

選評担当編集者

大阪という舞台をうまく使った作品で土地の魅力や台詞の味もありました。ただ、誤字や、段落のすべてが一文になっているところも多く、全体の推敲をもう少し丁寧にして、読者に読んでもらうという意識付けをしてください。