ストーリーはよく練られて、きちっとまとめられているが、物語そのものにきわだった特長は感じられませんでした。ですが、フーダニットという意味で読者を翻弄させるにはうまく作用しているように思えました。仕掛けの部分はややまわりくどいとも感じますが、悪い印象は持たなかったので、次回に期待したいです。
コロナ禍の医療現場を描いた作品として、渦中の現場の混乱が細かに描かれており興味深く読ませていただきました。人間関係の描かれ方もリアルで面白かったです。ミステリー作品としてのしかけやトリックに物足りなさを感じてしまいました
雰囲気のある文章が魅力的で、作家を目指す主人公が訪れる神頸町、その町で出会い主人公に落ちる青年を描く描写がとても美しかったです。物語の中にたくさんの謎を隠してくださっているので、これらすべてをしっかりと描ききるには枚数が足りなかったかもしれません。
真相は驚くべきものでしたが、真相が明らかになったことで、読者の心が動くドラマが用意されていればさらによかったのです。警察が無能すぎること、「洗脳」についての説得力が足りないこと、ジェンダーに関する手つきが前時代的であること、カゲマルについての描写がフェアではないこと、などが減点要因でした。
やや短いかなと印象ですが、物語には骨があって面白く読めました。いわゆる本格ミステリのカテゴリには入らない作品ですが、知力の代わりに暴力で解決に導く、というのは、物語としてはありと思います。姉の死をめぐる主人公の動きと明らかになっていく非道がバランス良くマッチしていて、良質のハードボイルドにも似た感触を覚えました。
主人公たちの作中での年齢が、現実世界の年齢との乖離を感じました。現代小説を描くなかでは、読者が思うであろう年齢なりを意識された方が良いと思います。情報捜査などを探偵が担っていて、「捜査」の部分が描かれていないのも残念でした。
いじめ問題を発端にしたミステリーで、幾重にも物語の真相を織り込んで作り上げた作品は読み応えのあるものでした。ただ、いじめに関わる事件の構造を複雑化したことにより、物語の後半が会話による真相究明によってしまったことが残念でした。次作を楽しみにしております。
モディリアーニ夫妻の死の真相に迫るという展開に著者の気概を感じました。しかし史実に則る物語だからこそ、大きく飛躍した真相を期待してしまい、真相にはやや残念な印象を得ました。また、なぜ今20世紀初頭の芸術家たちを描くのか、その必然性についても読者に提示してほしいです。