リーダビリティが高く、大きな破綻もなく物語を進め、ラストまで書ききった手腕は評価に値します。しかし、最大の謎である殺人動機にカタルシスがなく、マジックマッシュルームなどによる幻覚作用はいささか飛び道具的で、アンフェアな印象を受けます。さらに、「現在」が1993年というのは、さすがに古すぎる設定です。また、プロファイルリングというモチーフもあまり上手く活かされず、正義と父親の確執も、物語に効果的にリンクしていないように感じました。せっかくの軽井沢という魅力的な土地の描写がほとんどなかったのも残念です。