第10回 選考過程・選評応募総数118

第1次選考通過作品

追憶に縛られて朝霧麗

選評担当編集者

ダラダラと長く書かれがちな応募作品が多い中、無駄な描写を省き、適正な枚数に収めた点には好感を持ちました。文章も読みやすいのですが、「藤巻がニセ一級建築士である」という根拠がゼロのまま話を進める点や、12年前の事故にこだわる理由が不明な点など、全体的に説明不足と感じます。またラストの入れ替わりは、さすがに無理があるのではないでしょうか。

第1次選考通過作品

ラグランジュがいるから紫月悠詩

選評担当編集者

いい意味で軽いキャラクターも良く、試みも非常に刺激的でした。ただ、これだけの登場人物の多さ・手順の煩雑さはどうしても厳しく見られてしまいます。きっちりと手順を踏むことと同時に、読者を引っ張り続ける工夫と配慮を意識してください。演出次第で化ける作品だと感じました。次作に期待しています。

第1次選考通過作品

こんせきの足跡雪村夏生

選評担当編集者

これは「逆ミッシング・リンク」といえそうですが、ならば余計に複雑になる人間関係を読者に正確に理解してもらう必要があります。ところが文章からは逆に隠そう隠そうという意図が強く感じられ、物語全体を壊してしまっているように思えました。視点のブレも気になり、やや読み通すのに苦労しました。ただ、仕掛けは悪くありません。文章に凝りすぎるよりも、物語の背骨を読者にいかに理解してもらうかという点に力をそそいでもらいたいです。

第1次選考通過作品

悪魔の宿る箱越尾圭

選評担当編集者

登場人物のキャラクターがうまく描きわけられており、とくに小悪党でハードボイルド風の風間のキャラは魅力的でした。畳み掛けるようなどんでん返しも、ラストシーンを盛り上げてくれました。ただ、物語の構成や手かがりの出し方は、もっと工夫できたのではないでしょうか。そうすれば、風間が刀根であったことは、本来、もっと大きな驚きとカタルシスを得られたでしょう。また、出会った人々が、特に理由なくペラペラと喋るので、主人公が「推理している」という感覚が乏しかったです。

第1次選考通過作品

コツタとランマ矢栗龍

選評担当編集者

杉田浩太(コッタ)が遭遇した謎を海藤蘭馬(ランマ)が解き明かす、軽快なサラリーマン・ミステリの連作(全八話)で、非常に読みやすく面白かったです。会話のテンポが良いので、2人のキャラに親近感を持ちました。事件のバリエーションも豊富で、工夫があります。ただミステリーとしての出来映えは話ごとに凸凹があり、全体的にもう一段、ブラッシュアップが必要だと思います。次回作に期待しています。

第1次選考通過作品

一滴の酒におぼれて桐嶋裕

選評担当編集者

主人公の正体に関するラストのどんでん返しに無理があり、納得できませんでした。この逆転劇を成功させるためには、小説全体の描写にもっと注意を払い、伏線の効果が出るようにするべきです。構成もいたずらに複雑で、物語の流れを把握しにくく、読んでいて悪酔いしそうになります。もっとすっきりした面白さを目指してください。

第1次選考通過作品

決着新井達夫

選評担当編集者

教授と呼ばれる人たちのグループが5人でどのような革命をおこなったのかが分かりにくいです。また物語の時制では、主人公たちがすべて高齢になりますが、女性などあまり年齢も関係ないかのように読めます。文章も開業をせず枚数を調整しているかのように読めました。

第1次選考通過作品

ショウダウン上田みらい

選評担当編集者

文章、キャラクター、事件の有り様、うまくいっている作品でした。主人公の成り立ちから日本が関連してきますが、次作を応募されるときは主舞台を日本で描いてほしいと思います。とても楽しみにしております。