コウモリ通信

『玻璃の家』書評

北海道新聞(2009年5月17日付け)「ほん」欄に、作者の松本さんと同じ北海道出身のミステリー評論家、千街晶之さんの書評が掲載されましたので、ご紹介します。

大変力強い評に、福ミス担当も喜んでいます。

(福ミス係)

玻璃の家
松本寛大著  講談社 一七八五円)
<略歴> まつもと・かんだい 1971年、札幌生まれ。会社員。本書は2008年の第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。札幌在住。
序章から巧妙な仕掛け

広島県福山市が、芸術文化の活性化を図って創設したのが「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」である。同市出身のミステリー作家、島田荘司を選考委員に迎えただけあって、同種の自治体主催の文学賞としては、宣伝や準備などにも力が入った部類だろう。

その第一回受賞作となった「玻璃(はり)の家」は、アメリカはマサチューセッツ州の小都市を舞台にした本格ミステリーである。かつてガラス製造業で財を成したリリブリッジ一族が住んでいた邸宅は、最後の当主の怪死やヒッピーの死亡事故などの変事が起きており、今や完全な廃屋と化していたが、そこで殺人事件が発生した。

犯行の一部始終を目撃していた少年には、あいにくなことに自分の顔も含め人間の顔を識別できない「相貌(そうぼう)失認」という症状があった。心理学を学ぶ日本人留学生トーマがこの難事件に挑む。

本作のミステリーとしての読みどころは大きく分けて二つある。一つは、脳科学や精神医学などの知見を作中に取り入れている点だが、過剰に専門的になることはなく、ラストの劇的な演出のために不可欠な要素となっている(もっとも、視覚的な効果を文章でなんとか表現しようとしているため、隔靴掻痒(かっかそうよう)の印象を受けたのも否めないけれど)。もう一つは犯人を特定するための論理だが、双子トリックが本格ミステリーのネタとしてはありふれていることを承知の上で敢(あ)えて取り上げ、怒濤(どとう)の連続どんでん返しで読者を翻弄(ほんろう)してみせるあたりはまさに圧巻。考え抜かれたミスリードの技巧が、プロローグの時点から巧妙に仕掛けられている。

筆致は淡々としており、島田作品のような有無を言わさず読者を引き込むダイナミックさには欠けるが、著者の生真面目(きまじめ)な姿勢は伝わってくる。有力な新人作家の誕生と言えるだろう。

評・千街晶之(ミステリー評論家)

img_footlogo  Copyright(c) The Hokkaido Shimbun Press.

第3回の作品募集を開始します。

第2回の募集締め切りを受けて,引き続き第3回の作品募集を開始いたします。

応募要項は以下のとおりです。

[応募要項]

 

応募作品

 

自作未発表の日本語で書かれた長編ミステリー作品。400字詰原稿用紙350枚以上800枚程度。ワープロ原稿の場合はA4横に縦書き40字×40行とします。1枚目にタイトル,名前,400字詰原稿用紙換算枚数を記してください。

 

応募方法

 

1.原稿(ワープロ原稿の場合は印字したもの)。通しノンブルを入れ,右肩を綴じてください。

 

2.作品の電子データ(フロッピー,CD-R等)

 

3.作者プロフィール等  ※個人情報は守秘します。

 

 A.名前・ふりがな(ペンネームの場合は本名も明記),タイトル,400字詰原稿用紙換算枚数,住所,生年月日,職業,電話番号,メールアドレス

 

 B.プロフィール(来歴や文学歴など)を自由な形式で記してください(400字以内)

 

4.作品あらすじ(2,000字以内)

 

34はまとめて右肩を綴じてください。14を同時に応募先にご郵送ください(ファックス,メール等での応募は受付けません)。提出物は返却しません。二重投稿は受け付けません。

 

応募・問い合わせ先

 

ふくやま文学館「福ミス」係

 

720-0061 広島県福山市丸之内一丁目99

 

Tel084932-7010 Fax084932-7020

 

URLhttp://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/bungakukan/fukumys/

 

応募資格

 

住所,年齢を問いません。受賞作以降も書き続ける意志のある方が望ましい。なお,受賞決定の後,2010(平成22)12月末日まで,選者の指導のもと,作品を推敲することがあります。

 

締め切り

 

2010年(平成22年)510日(月)消印有効

 

発 表

 

2010年(平成22年)10月(予定) 入賞者に通知ほか

 


 

正賞 トロフィー

 

副賞 受賞作品は協力出版社によって即時出版されるものとし,その印税全額

 

   福山特産品

 

表彰式

 

2011年(平成23年)3月下旬(予定)

 

選 者

 

島田荘司

 

主 催

 

福山市,島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞実行委員会

 

協 力

 

原書房第三編集部,講談社文芸図書第三出版部,光文社図書編集部

 

事務局

 

福山市教育委員会社会教育部文化課

 

諸権利

 

出版権は,該当出版社に帰属します。

 

参 考

 

本賞は,引続き,毎年,同規格で募集します。

 

第2回応募作品数発表!!

 福ミスの第2回作品募集を締め切りました。応募作品数は58作です!

今回は締切日(510日)の消印有効ということで,結果発表を待っておりましたが,海外からの作品も届き,合計で58作となりました。北は北海道から南は沖縄,海外はアメリカ,タイ,オーストラリアからの応募がありました。応募作品数は前回に比べて減りましたが,より広い地域から応募があったことは,福ミスの知名度が向上している表れではないかと考えております。この中のどの作品が第2回受賞作となるのか,今から楽しみです。

 

第1次選考委員の皆様、応募結果がなかなか出ないとやきもきされていたのではないかと思います。現在,第1次選考に向けて発送等の準備をしているところです。なんとか20日中には発送をしたいと考えておりますので,作品の到着を楽しみに待っていてください。

福ミス係(T.T)

福ミス第2回応募締め切りました。

福ミス第2回応募は5月10日(当日消印有効)をもって締め切りました。

ご応募いただいた皆さまありがとうございました。

応募状況の結果については、現在集計中ですので今しばらくおまちください。

第3回応募要項は、5月下旬頃お知らせする予定です。

今後も福ミスをどうぞよろしくお願いします。

(福ミス係)

島田先生ご一行、鞆の浦を散策

3月29日に島田荘司先生・綾辻行人先生・柄刀一先生・部谷京子さん・石塚桜子さんたちを、鞆の浦にご案内いたしました。ガイドは「えっと福山」にも紹介されている宮本さんお願いしました。

風はやや冷たかったですが、天気も良く、散策には絶好の日和でした。沼名前神社・医王寺・太田家住宅・対潮楼・鞆の浦歴史民俗資料館などを一日かけてゆっくり見学され、福山駅への帰途には国宝の明王院にも立ち寄られました。

桜がまだ満開になっていなかったのが残念ですが、皆さん鞆の浦を満喫されたようです。

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(医王寺にて撮影)

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