第12回・第13回 表彰式は中止となりましたが,
選者の島田荘司先生から,第13回受賞者 平野俊彦さん・文縞絵斗さんへのコメントが届きました!
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平野さん、おめでとうございます。新世紀に足を踏み入れた本格ミステリーという文芸の、新たなキーワードとも言えそうなさまざまな知見に精通されている平野さんですから、当作のDNAの検出法ひとつをとってみても、大変勉強になるものでした。これから創作に挑戦しようとする人たちにとっても、間違いなくそうでしょう。
当作に関しても、ありあまる知識を持てあましてしまうような、実に豊かな内容に圧倒されました。この様子なら、今後も新作のテーマには困らないでしょうね。いずれ一頭地を築かれるのでは、と期待しています。
私の友人の建設会社のエンジニアが読んで、面白かった、堪能したと言ってくれたうえで、地下の実験室にいたる手段がエレヴェーターのみというのは、火災停電時を考え、建築基準法上許されないので、たまたま今階段がふさがっていた、などとする方がよいのでは、と言っていました。それから空調の吸排気は、ポンプではなく、ファンで行うと言っています。今後の作品研磨の参考にされてはと思います。
文縞さん、おめでとうございます。かつてホラーが好きで、読み書きしていたという前歴が示す通り、本格ミステリーとはまったく異質の空気が持ち込まれていて、新鮮でした。身辺を説明するなんでもない言い廻しにも、ぞくぞくする恐怖に向かって開かれた感性が、光背のようにピリピリと感じられます。これは本格の書き手にはないものです。
加えて、ロックのリズムに載せられているような特有のリズム感、推進感はずいぶん強力で、絶えず駈け足につき合わされているような読書はユニークでした。
みながなかなか持ち得ずにいる、あなたが到達した独自的な境地、表現の資質に感心し、感性の共振を意識しました。
ミステリー文芸は、社会派、新本格、ホラー、ライトノベルとさまざまに変化し、トレンドを作りながら続いていますが、今後手を抜かず、しばらく全力で疾走を続けるなら、あなたは新しいトレンドを生むこともできるかもしれません。是非挑戦してみてください。期待しています。
島田荘司
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