島田荘司選 第18回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の受賞作は
作品名 「腐心 そうして人は腐っていく」
作者名 朝野 にわ
に決定しました!
第18回受賞作発表会見を選者 島田荘司先生、藤間副実行委員会委員長、受賞者 朝野にわさん、協力出版3社の出席のもとふくやま文学館にて行いました。
受賞作は今後、島田先生の指導を経て、光文社より2026年3月に出版される予定です。
◆作者プロフィール
神戸市在住。同志社大学文学部卒業。百貨店宣伝課コピーライターを経て、
現在、フリーランスのコピーライター。
◆受賞作概要
腐らない遺体が発端だった。
猛暑日が続く中、住宅街の空家で死後三日の高齢男性の遺体が発見された。熱中症による事故死と目されたが、刑事の竜胆は腐らない遺体に引っかかる。しかも空家は施錠され密室状態だった。
毛髪からヒ素が検出されたが致死量に及ばない。被害者の爪に残っていた「土」、前歯に挟まっていた「繊維片」。捜査を進めるにつれ、謎が増殖する。
同居する嫁の佳代子の愛車と同じナンバーの車、同じブラウスを着た女性が、現場の防犯カメラに。だが、佳代子には完璧なアリバイが。徘徊老人の熱中症による事故とみえた事件は、意外な方向へと飛び火し――
◆島田先生選評(抜粋)
威圧快感における正義感のすり替え、男の求めるエセ行儀心はちゃんと演技して、これには逆らわず、しかし金銭欲得は巧みに吸引していく受け身位置の女の計算、こうしたものが、作後半では腐食土壌に断崖を出現させ、ここに折り重なって累々と露出する醜悪の美、この小説はむしろこうした人の世の愚かさ、男性社会の腕力崇拝の幼さ、その罪、不手際、これは正義の具現者たる警察内部をも含むのだが、これを見下し、活用して生き抜く、ある生物の持つ一種の醜悪美を描かんとした小説であると理解した。
◆受賞者 朝野にわさん受賞コメント
初めて書いたミステリー、初めての長編公募への挑戦での受賞に、望外の喜びに震えています。最終選考に残れば、島田荘司先生から選評をいただける。それを励みにチャレンジしました。
めざしたのは、「ふつう」を描くことです。
どこの署にもいる「ふつう」の刑事。事故と紙一重の事件。犯人も「ふつう」の市民。ありふれた「ふつう」を描くことで社会のひずみや問題、知らず知らずのうちに「心を腐らせる」ものをあぶり出そうと企図しました。
これからも精進を続け、賞の名に恥じぬ作品を世に問い続けたいと思います。
最終選考に残った4作の島田先生による選評と第1次選考通過作品(第2次選考通過作品を除く)の担当編集者による選評は、後日掲載します。
どうぞお楽しみにお待ちください。
また、現在第19回の募集をしております。
締め切りは2026年5月10日です。福ミスの受賞、そして出版を目指している皆様の御応募お待ちしております。
* 書き込まれた内容につきましては、掲載前にチェックを行います。
(すぐには掲載されませんので、ご了承ください。)
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