コウモリ通信

第9回受賞作発表!!

 

◆第9回受賞作 「殺人者は手に弓を持っている」

◆作者
須田 狗一 (すだくいち)

 

◆作者プロフィール
1953年大阪市生まれ。IT会社に三十年勤務後、退職。趣味で海外の推理小説を翻訳する傍ら、推理小説を執筆。

 

◆受賞作概要
一九四二年、ナチスの国家保安本部長官ハイドリヒがプラハで暗殺される。それから七十二年後、犬山市の山中で、心臓をえぐられ左腕を切り落とされた老人の死体が発見される。老人はポーランド語で「手回しオルガンが死んだ」と書いた手帳を残していた。その頃、私、翻訳家の吉村学はたまたま出会ったポーランドの女子留学生アンカの面倒を見ていたのだが、そのアンカがある日突然、ワルシャワに帰国してしまう。不思議に思った私は、ワルシャワ行きを決意するが・・

 

 

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(左から、島田荘司先生、須田狗一さん、枝広直幹実行委員会委員長)

 

島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞 第9回受賞作の発表記者会見を,10月31日,枝広直幹実行委員会委員長,島田荘司先生,受賞者の須田狗一さん,協力出版社3社の出席のもと,ふくやま文学館で行いました。

 

◆島田荘司先生選評(抜粋)
「ミステリー・スクールの行儀縛りを意識しない文体が感じられて、一般小説的な空気を感じた。しかし物語は、不可解な外観の殺人事件の謎解明を目指して開始される。すなわち、ミステリーの定型構造に文芸の手法を採り入れるのではなく、文芸の書き手が、自身のストーリー構築の内部に、ミステリー小説における読者吸引の方法、すなわちそれは前方の伏線と、印象の新しい謎の提示ということになるであろうが、こうしたミステリー・スキルの咀嚼、吸収を上手に行って、よく牽引される知的な物語が提出されたという印象になる」

 

◆須田狗一さんコメント
「ずっと理系畑を歩んで来て、小説を書いても読者のいない私は、ただただ島田荘司先生のミステリー愛に満ちた講評をいただきたいがために『福山ミステリー文学新人賞』に応募いたしました。その作品が皆様の目に留まり、賞をいただきましたことは、本当に身に余る光栄です。島田先生、事務局の方々には感謝の言葉もありません。いただいた貴重な機会を生かすべく、今後も創作に励みたいと思います」

 

◆受賞作の出版は2017年春予定
受賞作品は,今後,島田先生の指導のもとに推敲され,2017年春に光文社から出版される予定です。

 

◆表彰式は2017年5月(予定)
第9回表彰式を,来年5月に開催する予定です。(詳細は未定)

 

また,このたび,次の作品を優秀作,準優秀作として顕彰することを決定いたしました。

 

第9回優秀作 「さようなら, お母さん」

●作者
石井 真由子 (いしい まゆこ)

 

●作者プロフィール
1977年生まれ。千葉県出身。大学院で生物学を修めた後、現在胚培養士として病院に勤務。家庭では三人の子供を持つ母親。

 

●優秀作概要
ある嵐の夜、手足が異常に腫れ上がる奇病を患った男が病院の窓から身を投げた。自殺を図った男の妹、玲央は兄を襲った病に納得出来ずにいた。異常な痛みにのたうち回った兄の症状を告げると、幼馴染の生物学者、利根川由紀は意外な言葉を口にする。病では無く「毒」が原因ではないか。その言葉を裏付けるように、兄の周辺を調べていくにつれ、兄嫁真奈美の奇妙な行動が見えて来る。類まれな美貌と献身的な看病で、病院中の職員から称賛を得ていた真奈美。だが一方で、真奈美の言動に恐怖を感じる人間も少数存在していた。あの美しい悪魔が兄を地獄に落としたのだ。そう確信する玲央だったが、由紀は真奈美の生まれ故郷である神津島に向かうと告げた。島で唯一の病院を営む真奈美の実家は島民の信頼を集め、真奈美もまた慕われている。そんな中、幼少期の真奈美の異常な行動を耳にする。「あの子は石で自分の足を潰していた」薄幸の未亡人、真奈美は本物の悪魔なのか。生物学者利根川由紀がその謎に挑む。

 

●島田荘司先生選評(抜粋)
「この作、殺人事件と、その犯人を疑わせる怪しい人物の発見という前段、後段で推理によるこの証明、同時に別の犯人の出現というどんでん返し、そういう本格ものの型を持ってはいる。しかしこうした骨組みの存在を忘れさせるほどに、骨にからんだ魚肉のしたたかな毒味は、当作をなかなか経験のできない強烈な読み物にしたと思う」

 

●石井真由子さんコメント
「この度は、ばらのまち福山ミステリー新人賞において、優秀作に選出して頂き心から嬉しく思います。第一子出産後から小説を書き始め6年が経ち、赤ん坊だった長女も今や持ち上げられないほどです。そして第三子が生まれた2016年、人生最高の瞬間が訪れました。このような機会を与えて下さった島田荘司先生や、選考委員の方々の期待を裏切らぬよう、『福ミス』の名に恥じぬよう、精一杯努力していきたいと思います」

 

第9回準優秀作 「合邦の密室」

●作者
稲羽 白菟 (いなば はくと)

 

●作者プロフィール
1975年6月20日、大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。現在は呉服関連企業のバイヤー=マーチャンダイザー職。2015年『北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞』受賞。www.inabahakuto.jp

 

●準優秀作概要

大阪文楽劇場、顔が崩れる毒を母に飲まされる俊徳丸の物語『摂州合邦辻』の上演中、人形の左遣いが持ち場を棄てて姿を消した。跡を追った三味線方・冨澤絃二郎は黒頭巾の下、まるで俊徳丸の様に崩れた人形遣いの顔を目撃する。

同じ頃、淡路の離島の古い芝居小屋を調査する一団、絃二郎知己の文楽劇場職員は「密室」状態の舞台裏から姿を消し、離れた岩場で転落死体となって発見される。

「すごい人形を発見した」――死んだ職員は最後の電話で言い遺した。

職員の死に疑問を抱きつつ、消えた人形遣いの行方を探す絃二郎は一冊のノートを発見する。

『私は母に毒を飲まされた。私の顔を崩した母を、私は決して許さない』――そのノートには、袖頭巾を被った喪服姿の母と父の生首にまつわる不気味な話が綴られていた。

 

若手文楽三味線弾方・冨澤絃二郎。

その友人、古典芸能評論家・海神惣右介(わだつみそうすけ)。

離島、葦船島の船宿の青年・入江一平。

 

現在の事件の真相を追う三人は、過去に封印された不可解な事件の謎へと導かれ……。

 

●島田荘司先生選評(抜粋)
「非常に丁寧に描かれ、完成された、文楽への愛情を込めた『本格』挑戦、という理解になるであろう。この文芸への真摯な勉強と、本格ミステリーへの真剣な愛情が感じられて、好感を持って読んだ」

 

●稲羽白菟さんコメント
「四年前、私はミステリーの処女作を島田先生にご審査頂く幸運に与りました。

入選は叶いませんでしたが、先生は温かなアドバイスを下さいました。

その時、私は夢を諦めない事を心に誓いました。

 

今回、規格外の形で手を差し伸べて下さった島田先生。

懐深く新参者を迎え入れてくれた福ミス。福山市。

……皆様に、心から感謝いたします。

 

今まで私自身がミステリー文学から得てきた喜びや感動を、一日も早く読者の方々に提供出来る様に精進する事を、私はここに誓います。」

 

 

 

優秀作者の石井さん,準優秀作者の稲羽さんは,来年5月の表彰式にお招きする予定です。

最終選考に残った4作の島田先生の選評と第1次選考通過作品(最終選考作品を除く)の担当編集者による選評は,近日中に掲載します。
掲載しましたら,こうもり通信でもお知らせしますので,どうぞお楽しみに。
今後とも,福ミスをどうぞよろしくお願いいたします。

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