作品に描き出されたアメリカのショウビズの世界はとても新鮮でした。ただ、ギャグ自体はすこし昭和的な感じがあり、もう少し違う味付けのギャグがあればより楽しめる作品でした。日本を逃れた人間が、日本にも紹介される可能性が高い、大メジャーのドラマに出演するという設定に難を感じました。姿の消し方ももう少しと違う消し方があったのではないかと思います。
変人型女子高生探偵が、友人が過去に関わった殺人事件と、それに付随して発生した現在の事件を解決するというもので、飾りの多い文体を取り外してみると、物語の筋は複数のツイストを除けばさほど新味を感じませんでした。やはり物語の設定に最大限注力する方向で作り上げた方が、受け容れられるのではと思います。
密室と化した嵐の船上で殺人が起き、容疑者は主人公の塔子しかいないという冒頭のサスペンスフルな謎は強烈で、一気に引き込まれました。孤島ミステリーのパターンに大学内の勢力争いがからんでくる展開も面白く読めました。トリックと真犯人はやや強引な印象もしましたが、意外性を重視したその意気や良しです。ですが「古代人類の化石」と「放射性廃棄物の最終処理場」のネタのかみ合わせが悪く、人魚の正体については差別的と取られても仕方がない真相でした。面白いミステリーを書こうとする意欲と力量は十分感じたので、次作に期待します。
阪神・淡路大震災後に被災者用の仮設アパートに住む人々の丹念な描写がよかったです。細かい伏線を丁寧に張ってあるのですが、その分、平板な展開ともいえ、途中から退屈してしまいました。事件の真相はなかなか工夫されているのにもったいないです。文章のテンポを変化させ、繰り返しに近い場面は思い切って省略するなど、緩急をつけた物語を書くよう心がけてください。
動機や犯行時の気象条件など、丁寧に書き込まれている部分と、被害者をどう誘い込んだかなど、さらりと流されている部分の落差が目立ちます。被害者があまりに犯人の都合よく動かされていることに少し違和感を覚えました。
文章のセンスがあり、人物の描きわけも達者です。複雑な人間関係をじわじわと浮き上がらせていく手腕は見事だと感じましたが、その分、後半からの失速が目立ちます。特にエンディングは想定内に小さくまとまってしまい、また、氷のトリックはあまりにも古典的で残念です。
読み心地が良く、キャラクターも魅力的に描けているのですが、すべての推理の根拠が弱く、ミステリーとしては評価が低くなります。特に、凶器が発見されていない等、花京院を被疑者とする理由があまりに乏しいと感じました。ラストの自死に説得力がなく、唐突に感じます。
凸凹コンビの配置や無能な警察という設定はとてもよくある定型のものです。これに思わぬ一撃をかませれば強みにもなりますが、新鮮味は感じませんでした。また視点があちこち動いては、物語の定点もぶれますし、読みづらくなることが多いです。