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第8回 選考過程・選評
応募総数
96
第1次選考通過作品
菅野尚樹の秘密
1031
選評
担当編集者
読みやすさはあるのですが,作品のボリュームが内容に対して多く,単調になってしまっていました。削ってもよい部分がかなりあるように思います。生徒たちがクラスの支配者に握られている秘密が,クラス全員が言いなりになる秘密としては弱く切迫感が足りないように思いました。
第1次選考通過作品
流氷の川
川瀬涼
選評
担当編集者
その土地の魅力やそこに内包される問題を丁寧に書き込んだ良作でした。現代風俗なども持ち込んであり,意欲がかわれる作品。ただ,作品の時代が微妙な過去作品になっており,性病などリアイティも含めできれば現時世での小説として書いてほしかったです。また主人公が襲われるところも,犯罪者が払う対価としてふさわしいかどうか,考えてみて下さい。
第1次選考通過作品
祇園・NY・シンモンゼン 洛中洛外屏風の謎
森田公之
選評
担当編集者
京都の古美術店を舞台に,美男美女が華やかに活躍する軽快なスリラーで,かつての胡桃沢耕史の作風を思わせる,弾けた楽しさがあります。悪役を含め,キャラクターがみな類型的で,話の展開も都合が良すぎるところが気になりますが,それなりに面白く,最後まで飽きずにスイスイ読めました。ですが,全体の四分の三を過ぎたところから,あるサブキャラクターの長い回想(恋愛話)が主となり,ミステリーの趣が薄くなるのは難点です。
第1次選考通過作品
南の島の鎮魂歌
愛奈穂香
選評
担当編集者
軽快な会話が続き,テンポよく読み進めることができました。
舞台の歴史的背景や登場人物たちの関係性など,細かに書き込まれていて,興味を引かれるポイントが随所にありましたが,ミステリーとしての仕掛けが最も弱いものに感じられました。
第1次選考通過作品
シーソー
澤柳司
選評
担当編集者
医療ミステリー。冒頭は非常に興味深い謎を提示してくれそうで,大いに期待を持ちました。しかし,文章が分かりにくく,医療用の言葉の説明もないまま多用されており,配慮が欲しい所です。またこちらも多用される比喩表現が,読み手の興味を削いでしまい逆効果になっていました。
第1次選考通過作品
奇蹟は声を鳴らせ
威武アシマ
選評
担当編集者
冒頭の極端にコミカルなエピソードで主人公を印象づけるのは妙手ですが,肝心の物語の本題に入るまでが長いのはマイナス。また少年の特殊能力の凄さが今ひとつ伝わってこないまま,話のスケールだけがどんどん大きくなるので,作者の意図ほど盛り上がりません。またピンチがあまりにも多すぎるので,かえって読者が飽きてしまいます。軽妙な会話としっかりした文章を書けるのは長所ですが,詰め込みすぎは避けましょう。
© FUKUYAMA MUSEUM OF LITERATURE