受賞者・優秀作者の紹介

島田荘司選 ばらまち福山ミステリー文学新人賞では,受賞作品は協力出版社から即時出版されることになっています。
また、特別に設けられた優秀作も,随時,協力出版社から出版されています。
ここでは、今までの受賞者・優秀作者のその後の活動等を紹介します。

金澤マリコ(かなざわまりこ)

千葉県生まれ。静岡県在住。上智大学文学部史学科卒。

第7回優秀作

ベンヤミン院長の古文書

2015年11月 原書房

 古文書には暗号によってアレクサンドリア図書館の蔵書の隠し場所が記されているという。新教皇ソテル二世は暗号を解いて「人類の宝」を公にしようとする。しかし守旧派らによる様々な思惑から攻撃にさらされる。ロマン溢れる本格歴史ミステリー。

著者よりひとこと

 優秀作のお知らせをいただき、たいへん光栄に思っております。島田荘司先生、選考過程でこの作品を読んでくださったすべての方々、事務局の皆様に心より感謝申しあげます。「物語を書く人になりたい」という夢を持ったのは高校生の頃だったと記憶しますが、長いこと自分には無理と思いこんでいました。いまようやくその夢が形をとりはじめたようです。書いてみてよかった! これからも力の及ぶかぎり楽しく書いていきたいと思っています。(2015年5月)

近 況

 いわゆる「機能不全家族」で育った私にとって、読書は唯一の逃げ場だった。
 「本は優しい。攻撃してこないから」
 それが子供時代の私が自分に言い聞かせていた言葉で、それは今に至るまで基本的には変わらない。
 小中学生の頃に読んでいたのは世界の名作文学全集だった。この全集は、私がほとんど唯一、親に自分の希望を口に出して買ってもらったものだった。本屋のおじさんが毎月バイクで届けてくれる、箱入りの分厚い本を私は待っていた。
 大学生の頃、辻邦生の作品に出会いその哲学的で美しい文章に没入した。彼の世界を理解していたのかと言えばおそらくそうではなかったが、それは私にはたいした問題ではなかった。読んでいる時間そのものが至福で、残りの頁が少なくなるのが辛かった。
 先日、ある人と作品について話していたとき、長いこと忘れていたこの感覚を思い出し、本という存在が私を救ってきたのだと改めて気づいた。このことを大事に胸において全力を尽くしたいと思っている。(2024年3月)

著作品一覧

ベンヤミン院長の古文書(2015年11月 原書房)
薬草とウインク(2017年4月 原書房)
木乃伊の都(2021年6月 光文社)